天城越え
「ひゃっは〜!!」
今回、俺が試す【本懐】は〜?
そうです、【臨界】です。
フロントガラスの先には、土に塗れる獣が十匹。
ん〜。
即ちあれは、輪姦学校。
楽しそう。
「俺も混ぜてよ〜」
仲間外れは、よくないことだ。
心の法律に反してしまう。
「獲物が十匹……」
十人。
十匹。
十本。
あ。
「そうだっ」
これってちょっと、ボウリングみたいじゃない!?
楽しい〜。
これは、俺のボーリングを埋めてくれる遊びになるかも知れない。
つって。
「は?」
獣が、素っ頓狂な鳴き声をあげる。
なるほど、【臨界】のお陰で、瞬間的にあらゆる景色を視界に捉えることができるんだ。
あほ面が十個。
やられてるのが、二つ。
カップルだな。
リア充、許せね〜。
で。
やってるのが、一つ。
やらされてるのが、四つ。
やらされるのを待ってるのが、三つ。
ん〜。
よかった。
足し算、ちゃんとできた。
「俺、偉い!」
高級車のボンネットが歪に歪み、血の轍が辺り一面に散乱する。
ああ、
糞っ。
三本、倒し損ねた。
それから、華麗なるハンドル捌きで峠を一周、スペアを狙いにいく。
「マジで!?」
最悪。
スプリットなんだけど。
いや、だが……。
諦めるな。
諦めたら、そこで試合終了なんだ。
膝でハンドルを操作しながら、拳銃の安全装置を外す。
大丈夫、【臨界】のお陰で思考は保たれている。
スポーツ漫画で、一瞬の描写で今週号が終わっちゃう感じ。
「ばあん!」
助手席側の窓を開け、一本だけ、離れた厄介なピンを撃ち抜く。
そのまま、残り二本を薙ぎ倒す。
あーあ……。
ストライク、取れなかった。
でも、
「俺は、諦めない」
今日が駄目でも、反省して、修正して、明日へ活かす。
司。
お前には、夢があるんだな。
俺にも、夢があるんだ。
みんなが一緒に、いられる世界を作る。
難事業だけど、それくらいの難易度じゃないと興奮しないんだ。
脳汁が、出ないんだ。
そして、そのみんなの中には俺がいる。
だから、俺は俺を捨てたりしないよ。
ありがとう、親友。
俺の本当の心の声に気づかせてくれたのは、お前だ。
「次こそは、一撃で決めてみせる……!」
さあ、
次のレーンを、探しにいこう。




