鷃
「え」
椚は、気づいたら真っ白い謎の空間に立っていた。
そこに現れる、毎度お馴染み泉の聖女、クレア。
「おめでとうございます」
「誰!?」
アダマンタイト製の斧を教鞭スタイルでぱしぱししながら、クレアは少年に柔和な表情で語りかけた。
「貴方は、この世界を構築する、永久機関の一部になることができました」
「はあ」
「まず、私たちの世界には心の法律があります。【最初の心臓】を知り、それから【運命の心臓】の存在に気づき、それから、【卒業】までの戦いに身を投じていくのです」
「は、はあ」
「理解っていますか?この瞬間、瞬間に動いている全ての心臓を繋ぐ、【文学的同素体】。そして、悠久なる銀河に揺蕩い、普遍的価値の体現者である、【虚言輪廻】。その横軸と縦軸の交差点……。それこそが、人類の歴史を紡ぐ為の絶対的な特異点、【青春物語】です」
「【青春物語】……」
「実はですね、【文学的同素体】と【虚言輪廻】の他に、もう一つ、特異点を立体的に貫く永久機関があるんです」
それは、未来永劫、美しい物語を紡いでいく為の装置。
これから産まれる人類が、世界に絶望しない為の、
法律。
「それが、【原稿添削】」
クレアの表情は動かない。ゆえに、椚は固有名詞の濫発にも身動き一つ、取れないでいる。
「説明、必要ですか?」
「いや……」
「では、いきますね」
「あ」
「なんですか?」
「あいつが、悪いんだよ」
「へえ」
「あいつが、俺のこと馬鹿にしてくるから」
「説明、必要ですね?」
「聞いてくれ!!」
「いいですか。【原稿添削】の役目、それは……」
クレアの表情が心做しか、晴れやかになっていく。
「他人を殺した人間を、未来永劫、人類の歴史からなかったことにすることです」
それから、
クレアは椚に背を向け、颯爽と歩き去ってしまう。
なにもせずに。
「待ってっ」
真っ白い空間に、椚はただ、ただ一人。
【ロードしますか?】
【はい】
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