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【】みちのく☆ぶいちゅっば【】

 岩手某所。


「あづ〜……。戌亥さあ、んなとこに呼び出してなんの用な訳?すいちゃん、もう水溶性すいちゃんなんだけど」(?)


「しゃあないやろ。星街家本家、大婆様のお達しなんやから。私かてこんな暑い日、一歩も外なんか歩きたかないわ」


「げ。大婆様かあ〜……。それは流石のすいちゃんもお手上げ。それで?こんな面子集めて、なにをおっ始めようってのさ」


「はあちゃま、っちゃま〜!!」


「ちゃまはんはなあ……。もう、馳河と同一人物ってバレてもうとるし、戌亥本家で匿うのも限界やねん」


「それで、いよいよ実戦投入と相成った訳ね」


「せや」


「ちゃま〜?」


「どうしよ……。役に立つ気がしないんだけど」


「いないよりはマシや。枯れ木も森のなんとやらってな」


「失礼ね!!賑やかし程度にはなるわよっ」


「だから、そう言うとんねん」


「マジであっつう……」


 赤井、星街、戌亥が目的地とした、寂れたお寺。


 鬱蒼とした木々に囲まれ、およそ誰も管理していないであろう伽藍堂は、まさしく伽藍として伽藍堂の体である。


 中を覗き込み、朽ちた木造の匂いに表情が曇る星街。


「絶対、肝試しスポットでしょここ」


「ええか?星街。音霊魂子から預かった使命は一つ。繰り返す夏休みを収束させることや」


「収束?なにを」


「せやから……。言葉の通りの意味と受け取って欲しいんやけど、私らは全員、二千二十一年の八月三十一日をループしとる」


「はあ!?なにそれ、意味わかんないっ」


「私が気づいたのも、八千五十二回目の世界線やねん。それから、あらゆる手を打ってな……。輪廻から解放させることができたんは、星街とちゃまはんだけやってん」


「えーっと、つまり……。ループ物の鉄則でいけば、私たち三人以外に、事態を観測できる人間はいない。ループ解除の手順を誤れば、また同じ一日の始まり……。ってこと?」


「ってこと。戌亥とこ」


「ははっ……。笑える。すいちゃんたち、いつの間に劇場版夏アニメの主人公になってたの?」


「音霊が言うにはな……。星街、それからちゃまはん。あんたらホロライブ零期生、それから一期生の存在が鍵になっとるらしいねん」


「すいちゃんと」


「はあちゃまが?」


 互いに指を差し合う赤井と星街。比較的涼しい木陰に退避しながら、戌亥は説明を続ける。


「私らVtuberをループに閉じ込めたんは、少なからずあんたらに恨みを持っとる連中やねん」


「すいちゃん、そんなに誰かから恨みを買うようなことしてないんだけど」


「はあちゃまは……。はあちゃまもないよ?」


「え?」


「ちゃま?」


「ほんで、考えてみて欲しいんやけど……。おかしいと思わへんか?どんな漫画も、一巻から始まっとる。零巻が出るんは例外中の例外や。ホロライブには、その例外が罷り通ってしもうてる」


「ちょ、ちょっと待ってよ。すいちゃんたち零期生が、この怪異の原因ってことお!?」


「ちょい待ち、慌て過ぎや。そうやない。そうやないんやけど……。本来、ホロライブは一期生から始まるつもりやった。せやけど、先行して活動を始めていた零期生、謂わばイレギュラーな存在によって、一期生は一番の先輩ではなくなってしもうた訳やな」


「まあ、そうなるよね」


「はあちゃまたち、別にそんなこと気にしてないよ?」


「気にする、気にせえへんの問題ちゃうねん。本来、最も先輩として誕生する筈やった一期生。しかし、零期生の存在によってその因果は崩れた。そこで、谷郷も予想だにしなかった事態が発生したんや」


「ちょっと……。もしかして怖い話?やめてよ……」


「ははははは、はあちゃまは全然平気だけど!?」


「星街、考えてみい。零は過去で、一は未来。ほんなら……。現在は?」


「……。どこにもない」


「せや。ほんで、ちゃまはん。理屈ではそう理解しとっても、この瞬間……。即ち、現在という時間軸がどこにも存在せえへんっちゅうんは、常人には理解し難い感覚やろ?」


「そ、そうねっ。私を除いたらそうなんじゃない!?」(gkbr)


「つまりなあ……。戌亥本家が隠し抜こうとした最大の禁忌。馳河=赤井説を超える最強のネットロア。それこそが……。ホロライブ、零點伍れいてんご期生の存在や」


 見捨てられた寺院に、夏風とは思えないほど冷涼な空気が押し寄せてくる。


 赤井と星街は、俄に両肩を震わせた。


「えっと……。なんかのドッキリ、とかじゃないんだよね?」


「それ、はあちゃまの専売特許なんですけど」


「一期生と、零期生。共にホロライブを象徴する二つの勢力に挟まれて、存在ごとなかったことにされた五人のアイドルがいる……。なんて噂があったら、あんたら信じるか?」


 途端、暗雲が立ち込み始め、勢い強まった雨風が三人を容赦なく襲う。


「た、建物の中に入らないとっ」


「ちゃま〜!!」


「ええんか?星街、この不気味なお寺のこと、えらい怖がってたやないか」


「いまはそんなこと、言ってる場合じゃなくない!?」


 星街は率先して、伽藍堂の中に足を踏み入れる。


「は?」


 瞬間、


 そこは、寂れたお寺ではなく、落ち着いた雰囲気の一軒家に変貌していた。


「え……。はあちゃまたち、確かにお寺にいたわよね!?」


「戌亥、さん……!?」


「岩手の山奥、迷い家伝説……。聞いたことくらいはあるやろ?柳田國男も、いよいよVtuberデビューってところやな」


 飄々とした足取りで、戌亥は迷い家の地下へと進んでいってしまう。


「ちょ、ちょっと、どこ行くのよっ!!」


「ああああああ、絶対なんか出てくるやつだ……。すいちゃん知ってるう!!↑↑」


「やかましなあ……。この先の座敷牢に、零點伍期生の五人が封印されとる。ええか?一秒たりとも油断したらあかんで」


 刹那、地下からは獣のような慟哭が轟き、三人の鼻腔を吐き気を催すような死臭が突き上げる。


「う……。酷い臭い」


「戌亥、あんた、なんでそんな冷静なの!?いくらループを解く為とはいえ……」


「せやから……。私はもう、何回も殺されとんねん。この先におる零點伍期生に」


「「え」」


 赤井と星街のリアクションがダブった瞬間、「それら」は力尽くで座敷牢の封印を剥がし、自ら三人の前に姿を現した。


「すぅぱあちゃっおぉ……。あああありがどうござああああ……」


「ひっ……!?」


「日和るな星街い!!マイクを握らんかいっ。ほんで、赤井はDMを送れ」


「どういうこと!?」


「零點伍期生の呪いを解く方法は一つ……。奴らより、私らが人気になることやあ!!」


 その日……。


 戌亥は、一万二千八十一回目の自刃を遂げることになる。

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