ぬくもり
司。
俺がお前に執着するのは、お前が俺の生活のペースメイカーだったからなんだよ。
お前の豪速球を、毎日、人生の最高到達点で打ち返す日々。
俺が、肉体を生かす為に、
食べて。
寝て。
起きて。
それを繰り返す中に、お前がいたからなんだよ。
で。
俺の肉体を生かしてくれているのは、家族なんだよ。
その人たちの庇護を、物理的にぶっちぎってどこかにいくことはできなかったんだよ。
それを、ちゃんと言語化できればよかったんだよ。
未熟だったんだよ。
本当に、ごめん。
昔は、俺にご飯を食べさせてくれる人たちの間で、俺の世界は完結してたんだよ。
本当は、そこに戻りたいんだよ。
健康な生活に。
無理をしないで。
体が元気じゃないと、心も元気にならない。
んで。
親友。
お前と別れてから、俺の心臓がおかしくなったのは。
生活リズムの内側にいない、お前という幻影に無理矢理、ペースを合わせようとしていたからなんだよ。
俺と、お前。
あの日、
あの場所、
入学式で。
俺がお前に声をかけたのは、たまたま、物理的に、お前が右に座っていたからに過ぎないんだよ。
お前が、吹奏楽部の演奏に、足でリズムを取っていたからに過ぎないんだよ。
へえ、こいつ、面白そうじゃん。
俺のセンスと、戦えそうだ。
そう、思っただけなんだよ。
昔は、この白紙のキャンバスが嫌いだったけど。
小説家になるんだ。
その夢に、押し潰されそうだったから。
今なら、分かる。
届けてくれ。
親友。
お前がどこにいても、俺の言葉が届くように。
要するに、俺が。
俺が、卑屈な道化を演じていたのは、姉さんに俺が守られていたからなんだよ。
まあ、これも、俺の……。
帝の、自意識の裏側にいる、俺、そのものの話なんだけど。
本当は、姉さんじゃなくて、兄さんなんだけど。
こんな殺伐とした世界観で生きてるのは、姉のいる弟じゃなくて、兄のいる弟だろうよ。
少年漫画だろうよ。
って、ことはもう、既にみんなは見抜いていると思うんだけど。
まあ、いいや。
兎に角、帝は、
じゃなくて、
俺は、姉さんに守られていた。
いや、違う。
もう、いいや。
俺は、兄さんに守られていたんだ。
もう、違う。
画面の向こうの世界が作り物だったのは、俺の生活サイクルを支える人たちが全部、世界との窓口になってくれて、そのぬくもりの中で俺が無邪気に笑っていたからに過ぎないんだよ。
今後は、姉さん、を、兄さん、に脳内変換して、読んでくれ。
親友。
俺はさ。
みんな仲良く笑ってないと、嫌なんだ。
だから、冗談を言い合える関係を、ほんのちょっとずつ、広げていけばいいと思ってた。
今でも、思ってる。
いや……。
もう、いいや。
お前の生き方に、もう夢を見たりしない。
俺はもう、一人の大人だ。
ふざけんな、過去の俺。
過去の幻影は、全員、殺す。
殺したいんだ。
皆殺しにしたいんだ。
昔の自分を。
無邪気だった頃の自分を。
全部を、なかったことにはできないから。
その為の剣が、この白紙のキャンバスなんだ。
ようやく、分かった。
先人たちがなぜ、物語を綴ってきたのか。
己の、魂を救う為なんだな。
いいか?
司。
俺はな、百歳まで生きたい。
言葉にしなきゃ、俺の人生のビジョンなんて伝わらないよな。
本当に、ごめん。
だから、あまりにも早いペースの渦には、加われない。
ゆっくり、長く生きたいから、作家っていう道を選んだんだからさ。
その時点で、乗りたい船は分かれていたんだよ。
なあ。
これだけの言葉を吐き出せること。
才能だって知らなかった。
また、お前を言い訳に使うけど。
けど、
けどさ。
言葉ってさ、人に対して使うものだから。
常に、他人にベクトルが向いてるものだから。
俺はさ。
言葉を、大事にして生きたいんだよ。
俺が、また新しい縦の繋がりを求める時。
その相手は、同じようなペースでこの大海を泳いでくれる人じゃないと、無理なんだ。
ペースが違うって、だけなんだ。
親友。
もっと、具体的な話をしよう。
それぞれの業界には、それぞれの業界の船があります。
もう、お互い、別々のに乗ってる。
それを、認めたくなくて。
俺の人生は、ロールプレイングゲームだから。
一歩ずつ、一歩ずつ、先へ進みたくて。
ちょっとずつ進化する自分が堪らなく好きで。
沢山の、沢山のベクトルを集めて派手に目立ちたいとか、今ではそんなに思ってなくて。
不特定多数、なんてものに気持ちよくなれる時代は終わって。
その、全てに命があると知ってしまったから。
親友。
俺とお前は、少年漫画みたいな世界で、無邪気に笑い合ってたよね。
なんで、どんな、モチベーションで。
先輩たちが物語を綴っていたのか。
ようやく、分かった。
生きる為なんだ。
絵を描くのも。
歌を歌うのも。
生きる為なんだ。
派手に目立って、金を稼ごう。
なんてレベルじゃなくて。
心臓が、動いているからなんだ。
心を、殺す訳にはいかないからなんだ。
ようやく、分かった。
俺が、ずっと精神的に引きこもっていられたのは。
姉さんと俺が、同じ船に乗っていたからなんだ。
馬鹿だった。
最近、姉さんが怖いのは。
もう、
姉さんが、
違う船に、乗ろうとしてるからなんだよな。
違う、血に。
違う、家庭に。
ようやく、分かった。
親友。
お前との距離を、適切な距離まで言葉で埋めるように。
姉さん。
姉さんとの距離も、俺が頑張って稼がないとなんだよな。
俺の、心臓は止められないから。
ずっと、この日々が続く訳じゃないって分かってるから。
なんか、俺が。
最近、昔みたいに生活できなくなってるのは。
ありえんくらい当たり前のことで。
時間が、経ったからなんだ。
実家を出るタイミングが、近くなってきたからなんだ。
世界が怖い。
と、いつまでも言っていられるほど、子供じゃないや。
司。
危ない、ところだったよ。
本当に本当の意味で、死の臨界点まで行ったよ。
俺たち。
人は、熱源だ。
好きとか、嫌いとか関係なく。
熱源がないと、人は夜を越せないから。
また別の、熱源を求める時がきたんだ。
だから、
俺がどんな人間か、ちゃんと名刺を作らないといけないから。
指が千切れそうなペースで、ひたすら文字を綴っているんだよ。
なんか、もう。
俺が、物語を死に物狂いで綴るのは。
俺が投げたベクトルと。
俺に投げられたベクトルと。
全部を全部、ぶっちぎって。
楽になりたいからなんだ。
びくびく、怯えながら生活したくないからなんだ。
その為の言い訳になる人を、見つけちゃったからなんだ。
ずっと、
心臓の鼓動がおかしいのは、
実は、
その人のせいなんだ。
俺より、ちょっとだけ後に生まれて。
ちょっとだけ、俺より穢れを知らなくて。
その人が、歩んできた人生を、想うと。
これまで、辛かったことが、全部、辛かったことだと受け止められるようになったんだ。
毎日、涙が出るんだ。
よかった。
本当に、よかった。
ニュースが、見られなくなった。
心が、壊れる。
そんなの、弱い心だと思ってた。
違った。
逃げようとしないのは、弱いことだ。
嫌なことを嫌だと言えないのは、弱いことだ。
親友。
俺はお前に、力を求めてた。
俺が命令して、
お前が実行すれば、
世界をぶっ壊せるんだと思ってた。
違った。
あの人が生きてる世界に、そんなことできない。
あの日から、姉さんの不機嫌が怖くなったのは。
ていうか、
姉さんのボールが打ち返せなくなったのは。
あの人の、お陰なんだ。
あの日、でもなくて。
姉さんの存在でもなくて。
親友でもなくて。
体だけを求める関係じゃなくて。
なんか……。
恥ずかしくて。
怖くて。
でも。
想いを伝えずに死ぬことは、できない。
俺の醜さ、洗い浚い、吐き出す。
心を歪めてまで、誰かと一緒になろうとは思わない。
じゃあ、
心を歪めずにいられる人を見つけたら?
もう、抗えない。
どうすれば、その人をものにできるか。
そういうレベルじゃない。
姉さん。
姉さんの不機嫌が怖くなったのは、
あの人を守りたいと思ってしまったからなんだ。
司。
お前の豪速球を打ち返せなくなったのは、
その流れ弾から、死んでも守りたいと思う人ができちゃったからなんだ。
気持ちに素直になるのって、無理。
すごい難しい。
一歩、前に出れば。
その人を好きな沢山の人が群がってきて、ぶち殺されちゃうかも知れないんだ。
んな訳、ない。
このラブレターは、その人以外の、誰かに向けたものだと。
親友。
姉さん。
両親。
もっと、別の人に向けたものなのだと。
違った。
あの日のことや、これまでの最低な日々がとんでもなく辛くなったのは。
そのままじゃ、その人を守れないと思ったから。
これ。
使い方、あってますか?
このサイト。
だから、
つまり、
なんだろう。
俺は、
兎に角、
一番、
強くなって。
どこかで全員、敵を倒し切って。
それから優勝トロフィーを手にして、
そうすることで、女は落ちる!
っていう、世界観で生きてきちゃったから。
なんか、こう、
なに?
祝福、されるのか?
分からん。
強がりな言葉は、もう吐けない。
でも、
設定的には、まだあれだけど。
大人になって。
体の成長が止まって。
それなりに、絶望を知って。
でも。
でも。
その人は、まだちょっとだけ、俺より穢れを知らなくて。
そのことが、どうしても、どうしても、
俺の心を救ってくれちゃうんだ。
こんなこと、思ったことなかった。
こんな、ラブコメみたいな。
恥ずかしい。
殺伐とした世界で、生きてきたから。
これから先もずっと、俺の心象風景はそのままなのだと。
違った。
ちょっとだけ、下の世代のその人は。
きっとまだ、俺のベクトルに気づいていないかも知れない。
いや……。
そのレベルの人に、俺は惚れたりしないか。
諦めよう。
こんなこと、殺し合いをしてる人には言えない。
けど、
どうしようもなく、その人を守りたい。
少年すぎないか、俺。
でも、
かっこつけていられるほど、俺は守られる側の存在じゃないんだ。
もう、そんな時代がきてしまった。
俺の時代、早くこい。
そう思ってた。
きてしまった。
俺が、これまで通り生活できないのは。
なんだか、以前より世界が怖く見えるのは。
俺が、新しい希望に触れてしまったから。
母さんではない、ぬくもりに触れてしまったから。
いつもだったら、俺はここで道化になれた。
ラブコメとか、くだらね〜!
そう、言えた。
もう、言えない。
癒えない、他の人には託せない傷を、受け止めてくれる人を見つけてしまったから。
もう、俺が一番に守られる存在じゃなくなったから。
俺が、こんなにも猛スピードで言葉を綴るのは。
俺に、ベクトルを向けた人がやたらめったらに多いからなんだ。
その全てを、ぶっちぎりたい。
もう、
その心臓は、
ありのまま、受け止めるしかなくて。
にっちもさっちもいかなくて。
やばいんだけど。
昔、
テレビを観るのが好きだったのは。
俺が、世界の主役だったから。
今は、違う。
俺は、護衛だ。
脇役だ。
俺の世界の主役は、
もう、
その人になってしまっている。
こんな恥ずかしいこと、書きたくなかった。
でも、抗いようがない。
だって、幸せになりたいもの。
そこからでしか、歴史は始まらないもの。
物語は、始まらないもの。
俺が、あほほどの猛スピードで物語を綴っているのは。
あの日。
あの日がどうしようもなく、重く感じるのは。
その人のせいなんだ。
こんな、ラブコメみたいなこと、書きたくなかったけど。
でも、実際、そうなんだ。
プラトニックすぎん?
でも、
俺の、ありのままのリズムと。
一緒に歩いてくれそうな人を、見つけちゃったんだもん。
その人は、ちょっとだけ俺より穢れを知らないから。
俺が、ずっと心臓を隠して生きてきたのは。
勘違いかも知れないから。
共倒れするかも知れないからだ。
そんなレベルじゃ、ない。
やばい。
どうしよう。
心に、嘘はつけないよ。
そんな、なよなよしたの、つまんね〜。
違いました。
俺の、心臓がおかしいのは。
その人に、心を握られているからでした。
どうしようもない、希望なんです。
際限なく、心が優しくなっている。
その人と出会ってから、
俺は、俺の最低な過去が、どうしようもなく辛くなった。
罪だ、と感じた。
でも、その人も、当然、俺が知らないような罪を沢山、背負っているはずなんだ。
人生、初心者だったんだから。
だから、
お互い、同じ時代を生きて。
それでも、お互いの過去を知らないで。
その哀しみは匂いで分かった。
そんな人とだったら、
親友。
俺の、消せない罪も。
お前の、消せない孤独も。
全部の過去をぶつけ合って、火花を散らして、
新しい世界を創れると思うんだ。
俺、創る、って言葉が心底、嫌いだった。
だって、俺は偽物だから。
そう思ってたから。
でも、この文脈でいくと。
創る、って漢字は、
人生で、ここしか使い道がない。
大丈夫だって。
俺とお前が、圧倒的な吸引力で惹かれ合ってたのは。
互いに、足りない部分をお互いが持っていたからで。
本気で、
殺し合って、
喰らい合って、
愛し合って、
笑い合って。
俺は、自由を。
お前は、熱量を。
もう既に、命懸けで獲得したんだよ。
そんで、
足りない、のは当たり前で。
俺たち、まだ、お互いの半身に出会ってなかっただけなんだ。
俺は、出会った。
出会いに行った訳じゃない。
気づいたら、隣にいた。
どんな心霊ドッキリより、ドッキリ。
その人は、
きっと、
流星になりたくて。
感情を押し殺したまま、クールぶっていたくて。
でも、無理で。
悔しくて、
ありえんくらいの涙を流して、
そうやって夜を越えて、
絶望を知った本物の道化だから、
俺たちで、自由な世界を創り上げられると思うんだ。
で、
きっと、
お前の半身は、
道化になりたくて。
下手糞なギャグで誰かを笑わせたくて、頑張って。
空振りして、
誰にも、笑ってもらえなくて、
誰にも、見つけてもらえなくて、
そうやって絶望を知った、本物の流星だから。
きっと、お前らは笑える世界を創り上げられると思うんだ。
気づけ。
隣にいるんだ。
それに気づく為の日々、だったんだよ。
俺は心底、自由奔放で、囚われず、超然とした男がかっこいいと思ってしまう。
その体現が、お前だった。
その逆も、またしかりなんだろう。
もう、いちいち説明するの、面倒臭くなってきた。
俺たちがぶつかり合って、
喰らい合って、
殺し合って、
死にかけて、
くたばりかけたあの日々は、
守るべきものがない、屑と屑が火花を散らして。
星屑になるまで、火花を散らして。
牙を研いで、
研いで、
研ぎ続けて、
それで、母さんの臍の緒をぶっちぎる為の修行段階だったんだよ。
そりゃ、血も流れますよ。
心の血が。
ありえんくらい。
多分、俺の、その人は。
研いで、
研いで、
研ぎ澄ませた牙で、
俺の心を、ぶっちぎっていったんだと思う。
う〜ん。
なんだろう……。
気づいたら、あの人のこと考えてる。
なんだか、女々しくて嫌だわ。
う〜ん。
でも、
アタック、しようかな。
でも、嫌われたらどうしよう……。
とか。
喧嘩が不慣れな俺たちが考えてる時点で、
全部、奴らの掌の上だから。
大丈夫。
真面目な人たちが引っ張ってくれる世界で、
真面目に不真面目な大人たちに、
憧れて、
俺は流星に、
お前は道化に、
憧れて。
不真面目に不真面目だった、
どうしようもない糞餓鬼だった俺たちは、やがて、
すこしずつ、綺麗なものを知っていって。
強い言葉や、汚い言葉よりも、
美しい言葉を使いこなせる大人の方が、遥かに強くてすごいことを知って。
多分、
お前は、自分を殺せる人間だった。
心のベクトルが、際限なく自分に向いていたから。
多分、
俺は、人を殺せる人間だった。
心のベクトルが、際限なく他人に向いていたから。
俺たちは、自分を、他人を、殺したくないから、お互いに求め合っていたんだよな。
でも、
でもさ。
理詰めでいく。
そんな、愛のない世界に生きてて、どうすんの?
そんな、殺伐とした世界に生きてて、どうすんの?
弱い犬ほど、よく吠える。
レベルアップの時間が、きたんだよ。
もう、それくらいの経験値は積んできた。
お前の本性は、俺が。
俺の本性は、お前が。
棺桶に入るまで、覚えておこうぜ。
大丈夫。
千里の先を目指すのに、最初の一歩を日和ってる馬鹿がいるか?
ちょっとずつ、肉体が朽ちていって。
反比例して、魂のレベルはどんどん上がっていく。
俺たち、なんか、なにかをやり遂げた感じになってるけど。
まだ、四つ目のジムに挑む道中、くらいだからな?
大丈夫。
一緒に歩いてくれる人は、見つけたんだ。
違う違う。
逆、逆。
見つけてくれた。
もはや、最初から隣にいたんだよ。
もはや、ホラーだ。
人生は、ロールプレイングゲームだと思っていたけど。
ホラーゲームでも、あるのかも知らん。
もう、ええわ。
俺は、健康な毎日が送りたいので。
おやすみ。




