犯行声明
【八月三十一日、県市に血の雨を】
県警察署の刑事、轍はそんな犯行声明を厨に見せた。ここは彼女の経営する喫茶店兼バーである。昼間なので喫茶店。
「あのさ……。こういうのって部外者に見せていいものなの?」
「俺は組織の規律には染まらない」
「警官として最もあるまじき発言なんだけど」
厨、轍の他に、調、佃といったいつもの面々も集まってきた。清潔な太っちょ、佃は電器店に勤める傍ら轍に協力している。四人の中で唯一後輩の調は地方新聞の記者であり、立場的に轍と情報交換するのはグレー寄りのグレーでもある。
「厨さん、いつもの」
「そういうのは常連になってから言ってくれない?」
「私がいつものと言ったらフレンチトーストですよ!!」
「はいはい、ハッカ飴でいいわね?」
「ええ……」
騒ぐ調は無視して、佃は自前のノートパソコンを開いてなにやらやり手の雰囲気。雰囲気だけはやり手だとも言える。
「悪戯だろうけどなあ……。でもこの日付が気になるところだよね」
「そうだ。なぜ八月三十一日を指定しているのか……。ただの偶然なのか、それとも」
轍の途切れた言葉の先を、三人は暗黙のうちに承知にして黙った。
あらゆる事象は偶然で成り立っている。
だが、全ては因果によって結びついてもいる。
ある夏の蝉時雨が現実の時間軸と重なり、不穏な共鳴を響かせた。




