一人から二人へ
この世界にきて、どれくらいが経った?
訳が分からない。
そんなゲームに巻き込まれて。
ゲームマスター?
わけ、わかめ。
帝は……。
あいつは、どこだろう。
どこにいる?
そもそも。
ここはどこだ。
「神樹、だって」
「え?」
雀だ。
そういえば、鍵の捜索は?
「もう、しなくていいんだって」
「なんで」
「ゲームマスター、の、更にその上。エグゼクティブゲームマスターの意向だって」
「なんだそれ……」
「私たちは、主人公でメインヒロインなんだって。だから、くっつく未来は決まってるから、もう出番はないんだって」
「はあ……」
「偉い人が言ってた。この世界には、残酷なメカニズムがあるって」
「たとえば、どんな」
「人は、必ず死んじゃうこと」
「ああ……。そうだな」
「どんな物語の果ても、結末は一緒」
「ああ」
「そして、物語の始まりも、全部一緒なんだって」
「それって、どんな」
「愛、から始まるんだって」
「愛」
「あいうえお、みたいだよね」
「天才か」
「そういうことに一つ一つ、感動していたよね」
「うん」
「また、あの頃に戻りたいね」
「でも、もうあの頃に戻れないよ」
「じゃあ、先に進んでみる?」
「先って、どっちへ」
「未来」
「未来」
「同じ、あの頃を知ってる私たちなら」
「同じ痛みを知ってる、俺たちなら」
「もっと」
「もっと」
「優しい世界が、作れそうじゃない?」
「優しい世界……」
「うん」
「間に合うかな」
「うん」
「あいつを……。帝を俺は、傷つけたよ」
「うん」
「俺は、人に優しくなれないよ」
「偉い人が言ってた」
「なんて」
「諦めたら、そこで試合終了だって」
「はあ……」
「命を、最後まで使い果たすことができたらさ」
「命を」
「それって、すごい幸せなことだと思うんだ」
「死んじゃうのに?」
「うん」
「それまで、長いな」
「うん」
「本当に、戻らなくていいのか?帝たちは……」
「その帝が、言ってるんだ」
「帝が?」
「やりたいことがある。雑魚どもは目障りだから消えてくれ。勝手に乳、こねくりあってろ。だって」
「お、おう」
「この物語のネタバレ、知ってる?」
「なにそれ」
「みんなみんな、最後には死んじゃうんだよね」
「さっき、聞いた」
「じゃあ、私たちが生きていることになんの意味もないのかな?」
「いやあ……。そんなことも、ないでしょうよ」
「なんで?」
「だって、もしそうなら」
「私たちの祖先は」
「俺たちまでバトンを繋がなかった」
「天才」
「ずっと、あいつとじゃれあっていたかったよ」
「そうだね。でも無理だよ。だって、それぞれの女神が別人なんだから」
「女神?」
「そ。女神」
「俺と帝ってさ。ぶっちゃけ……。めちゃめちゃモテる」
「知ってる」
「多分、全人類女子、どっちかは好きになる」
「壮大だね」
「男は、つらいよ」
「へえ」
「もし、私たちが二人になれたらさ」
「ん?」
「いつか、二人がみんなに変わるかも知れないね」
「ああ……」
「知ってる?」
「なにが」
「人っていつか、死んじゃうんだよ」
「めちゃ聞いた」
「司」
「なに」
「なんで、泣いてるの?」
「……」
「涙、拭けよ」
「俺には、無理だよ」
「なんで」
「人に、優しくできないんだ」
「うん」
「だから」
「待って」
「え?」
「人って、誰」
「人って……」
「具体的に、誰」
「それは」
「それは?」
「誰、だろう」
「私、人だよ」
「確かに、人だ」
「私で、試してみてよ」
「なにを」
「優しくできるかどうか」
「いや……」
「嫌なの?」
「俺は、人を」
「人を?」
「傷つける」
「その時は、治るのを待てばいいよ」
「無理だ」
「なにが?」
「もう、背負いきれない」
「じゃあ、荷物が減るのを待てばいいよ」
「待つ……」
「でも、ただ待ってるだけじゃ嫌だから」
「そう、なのか」
「離れ離れでいるのは、嫌だから」
「……」
「ねえ、知ってる?」
「なにが」
「人って、どうせ死んじゃうんだよ」
「知ってた」
「だからさ」
「だから?」
「それまでは、一緒にいようよ」




