秋葉原
曇天、雨模様。
傘を差しながら、俺たちは電気街を並んで歩く。
「やっぱ東京。人、多いわ〜。何人いんの?」
「知らんわ」
今日は、ガタコーで高校生向けの就職説明会があったらしい。
つまんなそうだから、サボって俺と帝は遊びにきた。
一度しかない青春だもの。
こういうのが後々、泣ける思い出に変わってくんのよ……。
「司。お前、進学すんのか?」
「んー、分かんねえ。そんなに頭よくないし」
「その回答が既に馬鹿だな」
「帝は?」
「当然、進学。お前と違って頭がいいからな」
あ〜。
働きたくねえ〜。
まだ、大人になりたくない。
でも、早く大人になりたいな。
早く、夢を叶えに行きたいな。
ここじゃないどこかへ……。
「ここのア○メイト、なんでこんなに縦に狭いんだよっ。巨漢デブオタクが進撃してきたら終わるぞ」
「アニメ○トなんだから仕方ないだろ……」
漫画の新刊を手に取る。
「やっぱこれよ、『南南東に俺と往け』。これがおもろいんよ」
「なんだそれ。やけに指示が具体的だな……」
「これ知らないとか、センスねえ〜」
「俺をセンス側の人間と一緒にするな。真っ当に努力して生きてんだよ、俺は」
「帝はなに買うの?」
「そりゃ当然、『じゃじゃうま海鮮』の八巻目だろ。昨日発売したばかり」
「なにそれ。女児向けアニメのテーマ曲?」
「いや、これ知らないってマジか!?次の覇権は間違いないっつー王道バトル漫画だぞっ」
「はいはい。オタク特有の早口、乙」
俺たちは、オタクに呪われている。
なんか、そんなタイトルの歌があったな?
あったっけ……。
なかったかも知らん。
「次、脱法プロジェクトのコーナー行こうぜ」
「いいね」
言わずと知れた同人界隈の雄、脱法プロジェクト。
「違法って言うとなんか駄目な感じするけど、脱法だとなんかお洒落だよな〜」
「いや……。どっちも駄目だからな?完全にアウトだからな?」
「帝って誰推しだっけ」
「言わずと知れた、香苗さんだろ」
「そっか。巨乳だもんな」
「それだけじゃねえよ……。精神性が好きなんだよ、精神性が」
「常識に囚われてはいけないという常識に囚われている」
「言うな」
「つーかやっぱ、推すなら夢々子様だろ。俺も死を操りてえ〜」
「やっぱ巨乳じゃねえか」
「巨乳の年季が違えわ」
同人CDをいくつか買って。
それから俺たちは、
R18コーナーへ。
「あのな……。お前な」
「大丈夫大丈夫。堂々としてんのが大事なんだって」
「すごいっ。すごい、肌色。あっ、肌色って表現はポリコレ的にあれなんだっけ」
「なにそれ。つーかやっぱ、褐色よ。それかロシアン系美人」
「とことん国内向けの人間じゃねえな、お前」
「ほら、帝が好きなロリもの」
「好きじゃねえわ別に。それなりに年が近くて……。ある程度に絵が上手くて、純愛ものならなんでもいい」
「素直になれよ〜。汗かき太っちょババアのパンツに転生しようぜ」
「俺はノーマルな性癖なんだよ!!」
それから、適当な映画をTATSUYAで何本か借りた。
「とりま、モョンゲリヲンの守、破、離。見ようぜ〜」
「みんな平気で見てるけどさ……。冷静に考えて、結構グロくね?」
「使徒の名前、全部覚えてきた?」
「抜き打ちテストやめてくれ」
それから、二本目。
「デッドナイトプール観ようぜ」
「年齢確認」
「店長の人、長谷川さんだったな」
「それがどうしたってんだよ……」
うはあ。
いいね。
これでお前も、大人の仲間入り♡
「なんか……。SAN値、削られたわ」
「大丈夫?太っちょババア本で一発抜いてこいよ」
「あとお前、場所を選ばずにエロ絵師の投稿にいいねしまくるのやめろ。電車の中で堂々とやるな」
「いいじゃん。いいなと思った心は止めらんねえだろ……」
「TPOって知ってる?」
ああ、
いいな。
楽しいな。
俺が笑ってる。
帝が、笑ってる。
みんなが笑ってる。
る〜る、るる〜、る〜。
今日も、いいペンキ。




