○ーリーファンタジー(幻聴)
放課後。
ゲームセンター。
メダルゲーム。
帝と俺は、寿司が流れていく前にどっかりと腰をおろした。
「しゃー、今回は儲けるぜ」
「俺たち、いい年こいていつまでこんなことやってんだ」
「いいじゃんいいじゃん。いつまでも子供の心を忘れない大人になろうぜ」
帝はいつも、ちまちまとコインを賭ける。
「なんだよー、もっと欲張ろうぜ」
「いや、こういうのはリスクヘッジと分散投資が大事なんだよ……。知らんのか?」
「浪漫ねえなあ」
よし。
ネタを選ぼう。
『マグロ!』
『マグロ!』
『マグロ!』
『玉子!』
『玉子!』
「おい、安いネタばっか選ぶなって」
「馬鹿か?ありふれたネタがちゃんとしてこそ、実力なんだよ」
へえ。
まあ、確かにそうだな。
帝は頭がいい。
俺が知らないことを沢山、知っている。
『大トロ!』
『大トロ!』
『大トロ!』
『大トロ!』
『大トロ!』
「おい、高いネタばっか頼むなよ……」
「いいじゃん。だって人生、一度きりだぜ?全部、賭けないともったいないって」
「話が壮大すぎる」
「だって、明日死んじゃうかも知んないじゃ〜ん」
そうだ。
人は、いつ死ぬか分からない。
だから、この瞬間を楽しんだもの勝ちなんだ。
結局、俺も帝も当たらなかった。
次!
「お、落ちてるコイン発見。ちょっと増やしてくる」
「ギャンブルに断定系の言葉を持ち込む奴、ロクデナシだぞ」
「ギャンブラーの鉄則、知らん!?死ぬまで賭けるのに日和らないこと」
「俺はそもそも賭け事をしたくない」
浪漫、ねえ〜。
そんな帝も、俺が誘えば必ず乗ってきてくれる。
素直になっちゃえばいいのによお〜。
『ウェルカムトゥ、ドウザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!』
「なんで、ゲーセンってこんなうるせえんだろうな。煙草臭えし」
「そりゃ、ゲーセンだからだべ」
とりま、この一枚から一攫千金。
狙うよ〜。
『ジャックポット、チャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンス!!』
『確率、二分の一』
「おいおいおいおい、マジかよ」
「な、言ったろ?賭けてみるもんなんだって、なんでも」
餓鬼どもと、暇すぎて集まった爺婆どもが俄に注目するのが分かる。
ふっふっふ……。
いいぞ。
やっぱり、
やっぱり俺は、持ってるな。
「たった一枚のコインから、流れが変わることだってある。それが人生」
「いや、人生規模の出来事ではないがな、これ」
「それでも、帝と過ごした今日という一日はかけがいのない宝物さ……」
「気持ち悪いからやめてくれ」
その日は、めっちゃ稼いだ。
めっちゃ稼ぐと、めっちゃ楽しい。
ぶらぶらと駅に向かうまで。
夕焼け空が綺麗だ。
「なあ帝。ウユニ塩湖って知ってる?」
「聞いたことはある」
「俺、行ってみたいんだよな〜」
「なにしに」
「いや、楽しむ為だが」
「観光客の増加による治安、景観の悪化……」
「帝も、一緒にこいよ」
「嫌だよ」
「なんで!?」
「遠いし」
「つっても、同じ地球だぜ?」
「お前の世界観、どうなってんだよ……」
いつか、広い世界を見に行きたい。
父さんがそうだったように。
旅の果てで、母さんと出会ったように。
そんな物語。
そんな、夢。
「ま、勝手にいってきてくれ。俺はお土産を期待してる」
「なんでだよ。一緒にこいよ〜」
「俺、旅行とかあんま好きじゃねえんだよ。楽しいより、疲れるが勝つんだよ」
「難儀だな〜」
でも、俺がいれば楽しそうじゃねえ?
俺だって、お前がいればもっと楽しい。
世界は広い。
どこまでだって行ける。
俺はちょいと馬鹿だから、とりま、色んな人に助けてもらって。
人は一人では生きていけないって、母さんも言ってた。
そんで、
帝。
お前がいれば、俺はどこだって楽しめる自信がある。
お前が、俺の知らない世界を教えてくれるから。
俺は、まだ知らない場所を見つけることができるんだ。
助かる〜。
世界は、どこまでだって広がっている。
「あ。そういやこの前、バリ島に行った時のお土産、まだ渡してなかったわ」
「いつの間に!?」
ふっふっふ。
俺の行動力を舐めてもらっちゃ困るぜ。
「はい。ちんこのお土産」
「うわ……。ちんこのお土産だ」
面白えよな。
世界には、知らないものが沢山ある。
もっと、色んな場所に行ってみたい。
知らないことを知ってみたい。
やりたいことを、やってみたい。
だって……。
人生は、一度きりなんだから。
「じゃ、いつ行く?ウユニ塩湖」
「行かねえよ」
「なんでだよ〜」
こいよ。
絶対、楽しいって。
この世界がどんなに広くても、辿り着けない場所なんかないんだ。
俺たち二人なら。




