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俺の言葉を連れていけ

 あずまちまたはほくほくしていた。


 巷が意気揚々と、


「いや〜。ガタノゾーアのライバー計画、軌道に乗ってよかったでござるな〜」


「まあな。つーか俺たち、この界隈じゃトップクラスっしょ。知名度、実力ともに」


「よっ、同人の雄!」


「絶妙にダサいなそれ……。褒め言葉か?」


 あーあ。


 楽しいな。


 るんるん気分だぜ。


「ところで……」


 巷は、唐突にトーンを落とす。


 ていうか巷ちゃん、ちょっと痩せた。


「大丈夫、病的なあれではござらんよ」


 ていうか巷ちゃん、


 なんか、清潔感あるよ?


「どしたん。イメチェン?」


「拙者……。いや、俺、今回の即売会で引退するよ」


 は?


 え?


「なんで……」


「東ちゃん。正直に語り合う時がきたでござる。いや、きたんだよ、東ちゃん」


「ちょ、ま、待てって」


「就活するわ。スーツも仕立てたし」


 そ、

 

 そりゃ、


 偉いなお前……,


「でも、仕事しながらだってっ」

 

「いや、俺はもう続かないよ」


「なんでだよ!ようやく、軌道に乗ったって……」


「東ちゃん」


「なんだよ」


「俺、知ってるよ。東ちゃんがもう既に、プロに匹敵する実力を持ってるってことをさ」


「……」


 溜息を一つ、巷。


 なにやら、かすかに、ミント系な爽やかな香りが。


 ち、


 ち、


 巷ちゃん!


「そんなの、巷ちゃんじゃないよ!」


「俺、彼女ができたんだ」


「えええええええええええええええええええええ!?」


 うそやん。


 時代の常識、変化しすぎだって。


 乗り遅れてるの、俺だけ?


 はにゃ〜?


「でも……。でもっ」


「東ちゃん。俺といたら、東ちゃんは飛び立てない」


「そんな、でもっ」


 これまでの日々を、捨てていけってのかよ。


 俺より、彼女かよ。


 いや、そりゃそうか……。


「でも、一つだけ我儘を言うとすれば……。忘れないでいて欲しいでござる」


 あ、

 

 語尾が戻った。


「巷ちゃん……」


「出会う前に戻ることは、絶対にないでござる」


 そうか。


 それは、そうだ。


 それはそれで、しんどいけど。


 しんどいことほど、幸せが付き纏っているものだから始末に負えない。


「死ぬなよ」


 巷ちゃんはそれだけ言い残して、夜の港街に吸い込まれていった。


 死ぬなよ?


 死なねえよ……。


 俺の心を、ぶっちぎって行きやがって。


 はあーあ。


 俺は、こういう活動をしているから、自分に向いている心の数が大体、分かる。


 そして、俺から向いているベクトルの数も。


 はあーあ。


 しんど。


 お前らに貸した心、そろそろ返してくんね?


 そればっかりは借りパク、できなくね?


 そんで、


 お前らから借りた心、ここで返していくからさ。


 重すぎ。


 しんど。


 俺は陽キャだ。


 モテ街道、突き進んできちゃったから。


 誰かにぶん投げたベクトルを、全部全部、回収して回らないとな。


 はあーあ。


 しんど。


 みんな、見ってるう〜?


 まあ、


 平たく言えば、


 悪意を束ねて金に替えるのが、エンタメだ。


 善意を束ねて金に替えるのが、アートだ。


 働きたくない屑どもは、どっちか好きな方を選べよ。


 でも、


 舐めた真似してっと、警察に通報するからね〜。


 マジ卍。


 マジ卍ブラザーズ。


 はあ……。


 見てろよ、巷ちゃん。


 俺は、魑魅魍魎の世界で生き残ってやる。


 東は、ただひたすらに気持ちいい風が吹き抜ける海に、叫んだ。


「老害は全員、ぶっ殺しまーす!!」

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