ネタバレ
(※下記にはこの物語の重大なネタバレが含まれます。そういうのやだよ〜。って方はご注意を)
では。
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県市立高等学校、二年B組。
生徒名簿より。
【潮の場合】
都の騒乱に巻き込まれて重傷を負う。その後、××によって殺害される。
一部、記録が途切れている。
【証の場合】
執筆済み。
【縁の場合】
クインハルト家の王女、レイによって刺殺される。
【都の場合】
執筆済み。
【巌の場合】
長九郎によって斬殺される。
【錦の場合】
灯の血脈、その棟梁との果し合いにて討ち死に。
【旭の場合】
風骸に罹患。自我を失う前に拳銃で自害。
【万の場合】
執筆済み。
【岬の場合】
風骸に罹患。自我を喪失後、××によって殺害される。
一部、記録が途切れている。
【操の場合】
ゴディア家の飛空艇に同乗し、落下。爆発炎上。
【薺の場合】
蠱毒の樹海にて遺体を発見。
失血死の模様。
【雫の場合】
魔女の館にて、人狼に頭蓋骨を砕かれ死亡。
【誠の場合】
同上。
【篝の場合】
ポートビス海峡にて溺死。
【鼎の場合】
同上。
【霙の場合】
いや、そもそもこいつはガタコーの生徒ではない。
【刃の場合】
記録が暗く塗り潰されている。
おい。
誰だよ!!
落書きしたのっ。
【帝の場合】
司を庇って、無事死亡。
【司と雀の場合】
生き残り、なんやかんやでハッピーエンド。
うん。
主人公と、メインヒロインだからね?
当然ね。
(※ネタバレ終了)
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「ってな具合なんだけど、どう思う」
ユッサンの馬車に揺られながら、帝は糞しょうもないモョエモンの問いかけにげんなりした。
「なんの話だよ」
「いやさ〜。みんなさ、すぐにネタバレとか知りたすぎじゃない!?浪漫もへったくれもないよね。エンタメには、エンタメを受け取る側の技量も必要だってのに。空気が読めねえ滓は死んだらいいのにね。そんなことより、これでオッケー?文句ない?司を庇って死亡、だって。いいねえ、おいしいねえ。正直、観客からの共感は一番、買えると思うよ。泣けるシーン間違いなし!」
「ふざけてる……」
「うんうん、ふざけてるね〜」
「最初から、助ける気なんてないんだろ」
この世界にきて、もうそこそこ経った。
「さあ?助ける気、っていうか君たちの、助かる気、の方が大事なんだけどな〜」
「殺すならさっさと殺せ」
「いやいやいや!話、聞いてた?君は司を庇って死ぬんだよ。この脚本通りならね。いや〜、どう?丹精に脳内で組み上げたプロットを、物語の序盤でネタバレしちゃう!なかなかにテクいよね〜。面白くない?ねえねえ、面白くない?ねえ」
「面白い訳ないだろ」
「なんで!?結構、体を張ったギャグだよ?笑ってよ〜」
「ふざけやがって……」
「なに。帝キュンって反抗期なの?」
毎度お馴染み泉の聖女、クレアの淹れた紅茶だけがほのぼのとした雰囲気を醸し出している。
馬車の中。
「死刑宣告を、罪もないのにされているようなものなんですよ?」
モョエモンでは心を開けそうにないので、代わりにクレアが帝に問いかける。
「全部、あんたらの掌の上なんだろ」
「うーむ。仮にそうだとして、君は大人しく掌で踊ってくれる傀儡なのかな?」
「殺すならさっさと殺せ」
「またそれ!?殺されたいの?稀有だな〜。レアな人間がかっこいいと思っちゃってる感じ?」
「モョエモンさん、この年頃の男の子に煽りスタイルは逆効果かと」
「そっか……。もー!しゃあない。僕より君と気が合いそうな友人を呼ぶね」
友人?
ふざけたマスコットはなにやらタブレット的なもので通話を始めた。
おい。
は?
なんだ?
声が聞こえる。
「あ。悪魔ちゃんはこう、概念的なあれだから直接、話しかけてくるからね〜。脳内、っていうか心に」
「は……」
おい小僧。
おいおい小僧。
なんですか……。
お前、死にたいのか?
いや……。
なんなんだよ。
あんたも。
このふざけた世界も。
知らん。
お前、死にたいのか?
質問に答えろ。
死に……。
たくはない。
だろうな。
真っ当な、人間の反応だ。
素晴らしい。
素晴らしき凡人だ。
はあ……。
ところで。
今後、お前が知った未来以上のことは起きんぞ?
お前のクラスメイトとやらも、全員死ぬ。
なにやらごちゃごちゃとしたこの世界のいざこざに巻き込まれるらしいが、まあ、お前には関係のないことだ。
死ぬことが、確定してるのか。
ああ。
抗う……。
抗うことは。
できる。
どうすればいい。
知らん。
は?
勝手に考えろ。
そして勝手に生きろ。
いや……。
だから、どうすればその筋書きを回避できる。
別に、教えてやってもいいが。
その代償は払ってもらうぞ。
代償……。
次の千年。
次の千年を担ってもらう。
は?
どういうことだ。
知らん。
いや、流石に知ってるだろ……。
まあ、あれだ。
頑張れ。
待て。
頑張り方の、指針を示してくれ。
分かった。
どう頑張りたいかを言ってみろ。
どうって……。
俺が、死なない方法を教えてくれ。
死なない……。
いや、いずれにせよお前は死ぬが。
寿命って知ってる?
いや、そういうことじゃなくて……。
この世界を、生き延びて脱出する方法。
それを教えろ。
はあ……。
だから、その先でどうする。
どうって……。
生き延びて。
その先でどうする。
……。
死ぬまで、お前はどうする。
なにをして過ごす。
ただ息をし。
糞を垂れ。
野垂れ死ぬのを待つだけか?
死体処理も自動じゃないぞ……。
こんな、
こんな異常な状況下で、
そんなこと、考えられる訳ないだろっ。
ほーん?
だったら、
いつになったら考えられる。
その見通しを教えてくれ。
是非ともプリーズ。
お前……。
ふざけてるだろ。
ふざけてるが。
この世界はふざけている。
お前がよく知っているだろ?
従って、俺もふざけている。
道理は通ってる。
理屈で考えような?
俺は……。
なにをしたい。
別に……。
生きて、
生きていたい。
生きているだけで精一杯だ。
本当にそうか?
割と、余裕あるだろ。
お前になにが分かる。
知らん。
お前が教えてくれない限り、俺はお前を知らん。
ボケ。
暴言……。
仕方ねえな。
悪魔の俺が、お前が素直になれちゃうような魔法をかけちゃうぞ。
そおーれ。
お前……。
ふざけてるだろ。
だから……。
俺は……。
……。
……。
リーズブルの街で、沢山の悲鳴を聞いた。
どこかで、聞いたような悲鳴だった。
耳を劈いた。
心が強張った。
怖い。
嫌だ。
早くおうちに帰りたい。
でも、
ここはそうじゃない。
戦場だ。
嫌だ……。
暴力は嫌だ。
戦争も犯罪も、大嫌いだ。
人が傷つくのは見たくない。
俺に、どうしろってんだ。
俺は……。
俺は、人を殺したりしない。
人を殺すような奴は、尋常じゃないヒトデナシだ。
どうしてそんなことができる……。
許せない。
心が、じわじわと穢れていく。
嫌だ。
でも……。
俺に、どうしろってんだ。
戦争も犯罪も、大嫌いだ。
誰も、殺したくない。
殺さないまま、生きていきたい。
でも……。
人間の本性は、そうじゃない。
俺が本心で振る舞えば、
それだけで、人が死ぬかも知れない。
怖い。
ひたすらに怖い。
いつか、世界を救えるヒーローに憧れた。
誰かを。
誰かの世界を。
でも……。
無理だ。
俺は、他人じゃない。
俺の心は、俺にしか分からない。
俺の心は、他人には分からない。
見られたら困る。
俺の心は、きっと誰かを殺す。
死にたくない。
それ以上に、殺したくない。
穏やかに死にたい……。
年老いたい。
でも……。
毎日、毎日。
人が死ぬ。
理不尽な形で。
ガードレールを飛び越えて。
また、あの悲鳴が聞こえる。
聞こえる。
耳を塞いでも聞こえる。
俺は、加害者じゃない。
俺は、犯罪者じゃない。
間違っても、人を殺したりしない。
でも……。
それを、平気でできる人間はいる。
関わりたくない。
どうすれば、平和に寿命を迎えられる?
どうすれば……。
悪人を。
悪意を。
この世の悪を。
根絶やしにできる。
どうすれば、
俺の心を、
俺の命を、
俺を、
他でもない俺自身を、
傷つけようとする敵を……。
全員、殺して。
穏やかな世界を迎えられる?
ああ……。
嫌だ。
ひどい人間。
ひどいことをする人間。
そんな奴、人間じゃない。
嫌だ。
そんな世界は嫌だ。
戦争も犯罪も、大嫌いだ。
でも……。
目の前にある。
嫌だ。
心底、嫌だ。
死にたくない。
それ以上に、殺したくない。
悪い人が……。
悪い人を……。
悪い人……。
悪い……。
……。
……。
あ。
そっか。
「おい」
帝の返事に、モョエモンは紅茶を吹いた。
「え、なになに。あ、悪魔ちゃんとの会話は済んだ」
帝は、ゆっくりと瞼を閉じて、
それから、
開いた。
「力が欲しい……」
悪魔は、聞いている。
「俺は生きて」
「生き延びて」
「これから先」
「ずっと……」
「何度でも」
俺は……。
俺の望みは。
「悪いことをする大人を、全員ぶち殺したいです」




