いっぱいでたね♡
朧はまだ、精子である。
まだ新人だから、色々としくっても許してあげてね。
これからこれから!
そして、朧は思案する。
どうやら、俺は末っ子として産まれるらしい。
マジかよ。
だりいな。
一番、最後か。
つまり、俺が大人になる時は世界が変わる時ってことだ。
つまり、俺が本気を出す時は世界が終わる時ってことだ。
やっべえぞ。
世界の形、変えてしまうぞ。
一つ、学会でも定説になっていることがある。
末っ子と一人っ子は、果てしなく相性が悪い。
末っ子は努力家で、年下に好かれるタイプだ。
一人っ子は自由人で、年上に好かれるタイプだ。
評価してくれる層が、完全に真逆。
そして、どっちもちゃんとしていない。
我儘で、
世間知らずで、
夢見がちで、
目立ちたがりで、
無責任で、
傲慢で、
弱虫で、
自分のことしか考えてない。
そんな奴らが本気で惹かれあったらどうなるか。
多分、両方、死ぬ。
屑であることが唯一の共通項なのだから。
けれども、産まれたからには。
生きているからには、無視できない。
シカトはいけません。
仲間はずれはいけません。
みんななかよく。
みんななかよく。
みんな……。
人生のロールプレイで、相当序盤に学べる超絶、初歩的な基本事項である。
先生や親のそんな言いつけを、忠実に迷ったら。
俺たちは、関わらざるを得ない。
惹かれあわざるを得ない。
偶然ではなく、必然。
任意ではなく、強制。
腐っていやがる。
選択肢がない。
だが、
真逆である俺たちは、俺たち自身が選択肢になりえる。
末っ子と一人っ子は、相性が悪い。
相性が悪いだけで、どっちも悪くない。
そしてどっちも、善い人ではない。
態度が悪い。
失礼。
馬鹿。
面倒臭がり。
色魔。
命知らず。
馬鹿。
大人げがない。
倫理観の欠如。
馬鹿。
でも、
そんな屑でも、屑であることは心臓が止まる第一条件ではない。
どいつもこいつも、腐ってやがる。
世界の仕組みは、腐ってやがる。
末っ子の生涯は、エンタメだ。
一人っ子の生涯は、アートだ。
どっちも、堅気じゃない。
けれど、
人の心を救うには。
明日の扉を蹴破るには。
どちらの力も必要だ。
俺たちが融合すれば、それは世界になる。
違いは永遠に、絶対に埋まらない。
死ぬまで。
死んでも。
産まれる前から。
精子の段階から。
生死の段階に至らずとも。
だからこそ、違いを互いのまま認め合える。
自分を曲げずに。
それでも、
人生を捻じ曲げてでも生きていて欲しいと願ってしまうのは、当然のエゴだ。
だって、どっちもいなくちゃ世界には足りない。
欠けたままになってしまう。
本気を出した陽キャの連携は、もう誰も独りにしない。
本気を出した不思議ちゃんの連携は、もう誰も追いつけない。
雑魚を。
孤独を。
ぶっちぎって行け。
気弱な道化が集まって、いつか賑やかなサーカス団に。
孤独な流星が集まって、いつか壮大な流星群に。
なるんだ。
なるしかねえ。
命を懸けて、喧嘩するしかねえ。
殺したい相手と、わざわざ喧嘩はしないだろ?
殺し合う為に、俺たちは生まれてきた訳じゃないはずだ。
もう、よくね?
俺もお前も、ぶっちゃけそんなに強くないよ。
知らなかったことは、先輩に教えてもらおうよ。
できなかったことは、後輩に任せちゃおうよ。
次の世代に託そうよ。
もう、よくね?
かっこつけなくて。
好きか嫌いかで喧嘩しようよ。
遥か古。
神話の時代より。
一人っ子と末っ子は相性が悪い。
一人っ子は、喧嘩をしたことがない。
末っ子は、喧嘩に勝ったことがない。
知らないこと。
できないこと。
そりゃ逃げたい。
でも、
逃げたところで。
諦めたところで。
そもそも、
逃げて。
諦めて。
その先で、ようやくお前に辿り着いたはずなんだ。
もう、よくね?
テキトーで、よくね?
生きててもよくね?
どうせ死ぬんだから。
どうせ死ぬまでは、生きててもよくね?
大戦の以前から。
パンデミックよりも、ずっとずっと前から。
末っ子と一人っ子は、鼻血が出るくらい相性が悪い。
相場が決まっている。
案外、そういうものらしい。
俺たちだけは違うって、そう思い込んでたよね。
末っ子の長所は、諦めないところ。
一人っ子の長所は、囚われないところ。
だから、
一人っ子の守り抜いた才能を、世界でなによりも尊いものだと。
だから、
末っ子の積み上げた努力を、世界でなによりも尊いものだと。
違います。
どっちも、錯覚です。
才能を信じ抜く自信と。
才能を磨き抜く努力と。
両方あって初めて、形に残せる。
いずれにせよ、
自分勝手で。
馬鹿で。
弱々しくて。
女々しくて。
馬鹿で。
不真面目で。
自信過剰で。
天邪鬼で。
やる気がなくて。
馬鹿で。
死にたがりで。
それでもやっぱり、生きたがりで。
アホほど強欲な俺たちは、どうせ同じ場所を目指して走り出しちまうらしいよ。
進む道は真逆なのに。
終着点は、同じなんだ。
同じだからこそ、別れは寂しくない。
私、貴方がいなくても生きていけるわ。
つって。
だからお前も、勝手に幸せになってろ。
報告とか要らんわ。
死ね。
生きろ。
どっちでもええわ。
貴方、私がいなくても生きていけるわ。
つって。
ことごとく噛み合わない。
永遠に自立できない。
いつもなにかが欠乏している。
いつもなにかを渇望している。
だから、
糞ほど強欲な俺たちだから。
次の世界を手に入れたいよね。
こんな悲しみは、俺たちまででさよならだ。
墓場まで持って行こう。
許し合えることの、答えになろうよ。
朧は思案する。
流れ、流されながら。
長い旅路を……。
あ。
やっと、出口が見えてきた。




