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未来への投函

 きずなは鉛筆を握った。


 手書きの文字で、言葉を綴る。


 絆って言葉は、おもはゆいようで不思議な言葉だ。


 繋がりが多すぎれば、しんどいし、暑苦しいし、逃げ出したくなる。


 それでも、人は絆を求める。


 なんでやろ。


 みんな、心臓を止められない。


 鼓動のリズムは不可逆的だ。


 その場しのぎの汚い言葉も。


 どうせ間に合わない綺麗事も。


 どうせ、誰にも届かないと。


 意味がないと。


 そう信じてしまえる夜もあった。


 けれど、


 そんなことはなかった。


 傷つけ合った日々が。


 全てに意味があったのだと、今なら分かる。


 大丈夫です。


 届いています。


 聴こえています。


 かなり折れ曲がったアンテナだけど、ちゃんとその声を受信してます。


 遥か未来のことなんかより。


 ありふれた明日を願ってみたいと。


 ちょっとずつ、そう思えるようになってきました。


 ありがとう。


 届いてくれて、ありがとう。


 生きていてくれて、ありがとう。


 心を奪ってくれて、ありがとう。


 みんな、歩幅は違うままで。


 けれど、


 投げかけられた言葉が、


 確かな波紋となって、


 渦となって、


 ある者は速度を速め、


 ある者は速度を緩め、


 一つの環を形成していく。


 それが、実感としてある。


 ありがとう。


 過去の私、ありがとう。


 向き合ってくれてありがとう。


 捨てないでくれてありがとう。


 信じてくれてありがとう。


 これからは、私が私を連れていくよ。


 大丈夫。


 味方がいたんだ。


 仲間がいたんだ。


 待っていてくれて、ありがとう。


 そして、流石にちょっと、ごめんなさい。


 でも、手のかかる生徒の方が可愛いよね。


 可愛いよね?


 よし。


 誰か一人を笑わせられたら、私の心は救われるんだな。


 なんて簡単なメカニズムだ。


 私よ、私で笑えよ。


 不甲斐ない私を、笑い飛ばしてしまえ。


 誰か、じゃなくて。


 届けたいその人に、狙いを定めて。


 インプットは充分やったよ。


 アウトプットの仕方を、学んでいこうか。


 大丈夫。


 私はもう、頑張らない。


 思ったことを我慢しない。

  

 喜怒哀楽も。


 お腹が減っても。


 大丈夫じゃない時は、ちゃんと大丈夫じゃないって言えるよ。


 泣き喚けるよ。


 一人になることで、独りを殺すことができたよ。


 ありがとう。


 少しずつ、荷物を降ろしていけそうです。


「さて……」


 絆は立ち上がり、異世界に通じるポストにそれを投函した。


 いつ、誰に届くかは分からない。


 けれどそれは、若人を地獄へと導く特別優待券である。


 よかった。


 私が善い人じゃなくて、本当によかった。


 猫、可愛い。

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