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不死を渡る翼

「ねえ、君はこの世界の味方なのかな」


「え?」


 ヨッサンが爆走する馬車の中、モョエモンの不意の問いかけにすずめは面食らった。


「世界の味方って……。どういうこと?」


「いやさ、君たちがこのゲームをどう楽しむかは自由だよ?けど、合唱コンクールにも課題曲と自由曲があるみたいに、僕はゲームマスターとして願わくば解いてもらいたい宿題があるのさ。ま、頭の片隅にでも留めておいてよ」


 ますます怪訝さを増す雀の表情を無視して、ヨッサンの馬車は何気ない道端で駐車した。


「ねえ、サンドバンドっていう場所に向かうんでしょ?どう見たって砂漠地帯じゃないけど」


「まままま、焦んなって……。道草は沢山食べた方がいいって聞かない?腸内環境的に」


 テキトーなことしか言わないモョエモンはともかく、同乗する毎度お馴染み泉の聖女、クレアはなにやら顔馴染みの輩を発見したらしい。


「ルルさん、こんなところで会うなんて奇遇ですね」


 ルルと呼ばれた男(?)は、一対の翼を閃かせながら優雅に歩いて来やがった。


「あ、ちょうどよかった。こちらはこの世界で自称、詩人みたいなことをしている実質無職、ルルさんだよ〜」


 モョエモンの糞みたいな紹介にも、ルルはまるで動じる様子を見せない。


 ルルは褐色銀髪の有翼人種である。有翼人種は大体、褐色銀髪と相場が決まっている。決してニッチな性癖を狙っている訳ではない。


「え……。なんなの?」


「取り敢えず、初対面の人にははじめましてじゃないかな〜」


 唐突にマトモなことを言うマスコットに促され、雀はまじまじとルルに対面する。


「は、はじめまして」


「はじめまして。旅の途中なのかな?この面子と一緒とは……。君も災難だね」


 気持ちを少しでも汲んでくれて、雀はこの世界に来て初めてマトモな脳の持ち主と出会った気分になる。


「で、なにか聞きたいことはないかな?」


「え。聞きたいこと、ですか」


 初対面の人にそんなことを言われても困る。この人(?)はあまりマトモではないのかも知れない、と雀は心の警戒度を引き上げる。


「たとえばこの、左右で材質の違う翼のこととか」


「あ……。なんで、左右で見た目が違うんでしょう、か」


「うんうん、よく聞いてくれたね。話すと長くなるんだけど、聞く?」


 勘弁してくれ、という雀の表情が伝わったのか、ルルは端的なバージョンで語り始めた。


「実は僕はね、不死なんだ」


 不死。死ぬことがねえと書いて、不死。


「どういう理屈かは分からない。でも、生まれた時から僕は不死だった。仲間よりちょっと長生き、とかいうレベルじゃないから、それなら寂しい別れも沢山、経験してきた訳だけれど」


 慣れた口調で淡々とルルは語る。


「この先の神樹に、僕の古い友人がいてね。この機械の翼は彼に授けてもらったものなんだ。君も用事が済んだら立ち寄ってみるといいよ」


 生まれ持った肉体の翼と、褐色銀髪の姿に妙に馴染んだ機械の翼を揺らめかせ、天衣無縫の有翼人種は旅を急ぐ馬車にささやかな餞を送った。


「これ、僕の詩集。実は最近、電子版にもなっておうちから注文、購入ができるようになって……」


「はいはい、暇な不死野郎の話はこれぐらいで切り上げるよ〜」


 宣伝を始めたルルをぶった斬り、モョエモンたちは再び馬車に乗り込む。


「困ったことがあったら、その詩集を紐解いてみるといいよ。きっと、役に立つ言葉が見つかるから」


 やたら含蓄の多い捨て台詞を放り投げ、ルルは悠々と地平の彼方は飛び去っていった。


「なんだったの……」


 素直な感想もそこそこに、雀を乗せた馬車は走り出した。

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