霙の場合
みんなは嘘だと言うけれど、私には動物たちの声が聞こえる。
平仮名とか、片仮名とか、漢字とか。人間が使う言葉にも色々あるような、動物たちの鳴き声にも色々あるのだ。
私にはそれが分かる。
嘘じゃないもん。
「あんまりさ、社会に出てからそういうこと言うもんじゃないよ」
私の親友ちゃんは頬杖をつきながらぶつくさ。その姿勢は背骨に良くないよ、薺ちゃん。
「じゃあ、まだだいぶ猶予があるね」
「私としては、一刻も早く是正してもらいたいところだけどね。友達として」
薺ちゃんはいつもつまらなそうな顔をしている。いつもつまらなそうな顔をしているということは、別につまらなそうな顔をしているからといってつまらない思いをしている訳ではないのだろう。
ふふふ。
友達、だって。
こうやって森の木漏れ日に当たっていると、大昔の記憶が自然と蘇ってくる。
いや、大昔って、私いくつだよ。
薺ちゃん。
やっぱり薺ちゃんがいないと、ツッコミ不足だよ。
偉い人が言うには、みんなが鍵を手に入れるのを手助けして欲しいんだって。
みんなって誰?
鍵ってなに?
ここは誰?
私はどこ?
ふふふ。
「また会いたいなあ」
きっと、薺ちゃんは新しいクラスでも人気者になっていることだろう。
きっと、寂しくないよね。
私がいなくても。
魔女の森攻略班は一番、人が多い。
薺、操、雫、誠の四人。
「吸血鬼の力を手に入れる?」
正気なのかと問いかけんばかりに操が目を剥く。
「人狼を殺すにはそうするしかない」
薺が淡々と答える。
既に、森の館ではゴディア家の面々が何人も惨殺されている。
「このままじゃ埒が明かないでしょ。どの道、鍵を手に入れるには」
「それはそう、だけど」
操も雫も誠、当然だが死にたくはない。
行動を起こせば、危険も伴う。
だが、館にやってきてから数日が経った。頭蓋骨を砕かれた惨たらしい遺体も目にしている。
「分かった……。力の探索は僕たちでやる。最終的に狼を殺すのは、君に任せた」
雫も誠も、操の提案には暗に応じる。
帝が到着する、少しだけ前の一部始終。
王の初陣は近い。




