釜底の悪魔
暇潰しには慣れている。
既に何百年が経過しただろうか。
俺に力を貸せと豪語してきた自称、勇者の類は何人かいたが、望み通りほんの少し力を貸してやると、その僅かな力にすら耐えられず燃え尽きて灰になってしまった。
実に馬鹿馬鹿しい。
愚かしすぎてむしろ愉快だ。
だが、この退屈で素晴らしき日々ももうじき終わる。
次の千年。
契約が終わりを迎えるのだ。
「それにしても、随分と遅いな……」
暇潰しには慣れているはずの俺でも、もうすぐ終わると分かってからの待ち時間は長い。
寒風に晒され続ければ耐性が増すが、僅かでも暖かさを与えられれば人は簡単に弱くなってしまう。
厄介なものだ。
そういう意味で、この灼熱地獄は実に心地のいい場所だ。
「それにしても、遅すぎないか?」
待たされている、と分かっている時間は異様に長い。
魔女の再誕……。
とか言ったか?
しょうもない連中の企てに、もはや期待は持てなくなっている。
だが、周期の切れ目は近い。
必ず眼前に、次の契約を履行するべき人間が現れる。
「百年くらい、数え間違えたか……?」
いいや、そんなはずはない。俺はこう見えて数字には聡い。
俺としたことが年甲斐もなく、解放されることに浮き足立っているらしい。
だが、実際に本当に楽しいのは遠足の前日であり、遠足当日はなんやかんや集団行動だの、予定調和だので思ったよりワクワクしないものだ。
大体そんな感じ。
ああ……。
実に退屈だ。