【】し ょ し か ん て つ し た か っ た し【】
「時空の断層が発生する頻度と位置、これを寸分違わず精確に把握して実戦レベルに応用することを慣例的に時空を歪ませていると呼称しているに過ぎません。作中には多数の時空が歪む描写が登場しますが、それらは特定の人物が0から100まで時空をコントロールして歪ませているのではなく、既にそこに在る時空の断層に意図的な刺激を与えることで過活性化状態になるのを促しそれを戦闘に流用しているのです。とはいえ、このレベルで時空の断層を知覚して自らの肉体に悪影響を及ぼすことなく瞬間移動や武具の格納、攻撃を断層に吸い込ませることでの防御などに運用できるのは相当な強者であり上級者です。では、どうすれば時空の断層を操るエキスパートになれるのか?日常的にその超常的な神業を習得できる(かも知れない)修行法を伝授しましょう。しかし、俺氏は基本的に脳ではなく脊髄でしか物を考えない人間なので理解し易く言語化できているかはさておいてください」
「まず我々は過去現在未来のように一方的な時の流れに囚われていますがこの概念を棄ててください。千年前の過去から見た現在は未来であり千年後の未来から見た現在は過去であります。そしてその派生で自分自身の肉体が地球上(宇宙空間にいる読者諸君もいるかも知れないが)の一点に留まっているという感覚。これも要らないので棄ててください。列の最前列か最後尾か、どちらに立っているかは見る方向によってのみ定義されますよね?自分より右にいる人からすれば自分は左にいる人だし、自分より左にいる人からすれば自分は右にいる人です。左にいる人であると同時に右にいる人でもある。直感的に矛盾しているようですがこれが客観的な事実です。なんとなくで済ませていた自分自身とそれ以外を明確に分ける世界の外郭を具体的にイメージすることが時空の断層を捉え運用する為のファーストステップとなります」
「みなさんが知覚している俺氏自身はあらゆる形而上・形而下を含めてどこにも存在しません。どこにも存在しない、ということはどこにでも存在するということでもあります。人間の肉体も所詮は色んな成分(タンパク質とか?)の塊に過ぎず、原子だか元素だかの配列パターンに過ぎなくて〜……。みたいな話もありますが、そういう化学的というか物理的な話も俺氏がしたい時空を歪ませるという次元からすると非常〜に凡庸なレベルを漂っているので参考にはなりません。脳や精神、自我や哲学という観点から人間を捉えようとする試みは古よりありますがもし時空の断層を見てみたいと欲するならばそのような人類的なレベルで足踏みをしていてはいけない。知覚した頃にはより高い次元へ、13次元を意図的に観察できるのは少なくとも14次元以降の上位存在のみであるという原則を理解してください。ついてこれてますね?次に行きましょう」
「想定されるのは時空の断層を完璧に把握できている者同士の戦闘です。玄人ともなれば所謂パラレルワールドに存在する自分自身の感覚すらも時空の断層、歪みを通して知覚しある程度の段階まで制御することが可能。即ちα世界線の自分とβ世界線の自分の座標軸のズレを用いて対象を斬る(kill)、切り刻むということはできますが物理的な面で断層を運用するとなると自分の四肢胴体まで裁断される危険性が孕むので気をつけましょう。突如として虚空から人間の臓物が降ってくる怪奇現象が各地で目撃されていますがその影響です。俺氏が作品を通して時空の歪め方、というかそれを応用した戦闘方法を疑似的にレクチャーしてしまったせいか、不用意に時空の断層に触れて命を落とす愚か者が後を絶たないようですね」
「別に同情もしないし申し訳ないとも思いませんが才能ある読者諸君の中にはいずれ俺氏レベルに時空の断層を使いこなせる原石が眠っているかも知れないので、もしその方が俺氏の講義とあとはまあ現場での知識・経験の蓄積によって俺氏に並ぶことがあればいつか時空の歪みの最奥、時空大神殿で手合わせしてみたいところではあります。しかし時空大神殿は28不可思議通りのα世界線を管轄する仁天生不我璽坊菩薩(日本エリアに顕現する際の仮名)によって修繕作業の途中だったかな?神代漣子と冷堂さち江が岩研島の決戦にて時空の断層を濫用して散々暴れ回った挙句に壮絶な相討ちを遂げてから人間時間で1000年以上は経つのに大神殿の修復は終わってないからなあ……。口煩い奴だけどその点に関しては菩薩にも同情するよ」
「ともあれ初歩的なレベルの時空の歪ませ方はみなさんもイメージし易いような瞬間移動や武具の格納です。近接した世界線の断層にアクセスすることで一旦α→β、β→αを経由することで相手の背後を取ったり予めβ世界線に潜ませていた虎の子の武具一式で戦闘能力の強化を図ったり。注意点としてはどれだけ物質の構成要件、形而下に内包されるあらゆる化学的・物理的な要素が同質であっても別の世界線に由来する存在を長時間に渡り携行するのは非常に危険ということ。大規模な世界の辻褄合わせが発生する可能性がある。そうなると自己のみならずそれに起因する親類縁者や近しい人々、自らが漠然とイメージする森羅万象や未来の全てに悪影響が出ることがあるので気をつけましょう。要は、借りたものは用が済んだら元に戻しましょうということ。実はこの連載も俺氏の肉体を制限付きの並行世界線同時多重顕現によってあらゆる世界線に降臨(受肉?)させることで成り立っているので、菩薩との連携が切れるとイマイチ電波が繋がりにくくて……。あ……。まだ書きたいことがあるのに……。やb」
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