【】い せ か い や さ い せ い か つ【】
「い……」
「いやああああああああああああああ!!」
「どうされました?」
「わ、私のデッキに意味不明のクソカードたちが……」
「!!」
「先生、これって」
「ああ。間違いない」
「先日導入されたデッキの自動生成機能。それを利用した大規模なクラッキング、謂わばクソカードテロだ」
「所持している有用なSRURが全て無価値なクソカードに置き換えられ、それによって都内の交通システムはダウン、デッキ構築によって治療が支えられている患者は1200万人を超えるとされ、年末で大勢の人々が一斉に動く時期にクソカードテロリズムが横行した場合、最悪の想定では国内外で4000〜5000万人規模のマインドクラッシュが発生すると危惧されています」
「マスターデュエルは世界中に多くのユーザーを抱えている……。マズいですよ」
「うむ」
「公式に呼ばれた。行くぞ」
「え!?でも先生、新商品には徹底的にケチをつけるから公式からは干されてるんじゃ……」
「クソカード専門のプロファイリング。多くの決闘者たちは日々刷られる新カード、環境への適応を求められているから大量のクソカードをインプットしている余裕はない」
「そこで、俺氏たち窓際部署の暇人たちが火を噴くって寸法さ……。1万種を超えるとされるカードプールの中でクソカードと推定される数は8000〜9000枚程。現在時刻が午後7時12分、このまま地下鉄などのダイヤが乱れ続ければ翌日未明にかけて都市機能は崩壊を始め、この寒空の下に多くの決闘者たちが放り出されることになる」
「災害発生時のタイムリミットおよそ72時間。クソカードテロによってマザーコンピュータがクラックされた場合、復旧に要する時間は早くても7日、1週間だ。つまり、俺氏たちが生存する為の実質的な猶予は日付が切り替わる前後、せいぜいあと4〜5時間ということになるな」
「ことになるなって……。なに優雅にiwara見てるんですか!?ゆっくりしてる場合じゃないですよッ」
「落ち着け……。これから数時間、署内の人員で全てのクソカードを精査することは不可能だ。今回の犯行は大規模且つ繊細に計画が練られている。その点から、極めて有能な技術を有する存在が主犯にいると考えるのが妥当だ」
「既に黒幕の目星はついているんですか?」
「いいや……。どうかな」
「テロリズムの根幹は社会に恐怖という象徴を植え付けることだ。クソカードテロはおよそ価値のないクソカードたちが自らの存在意義を示す為に行われる。これから数時間、奴さんからも再度アクションがあるのが自然だろう」
「もし仮に犯人の本懐が都市部を狙ったテロ行為、それに伴う大量殺人なのであればここまで大掛かりな仕掛けを用意するとは考え難い。不特定多数のユーザーを巻き込む今回のような手口だと、こうして俺氏たちみたいな有象無象が犯行の阻止に動き出すからな」
「まさか、これは」
「クソカードたちを顧みることをしなかった決闘者たち。それに、クソカードたちが反旗を翻したということなのでしょうか?」
「挑戦状か……。俺たちクソカードとお前たち決闘者、本当に使い道のないゴミはどちらなのか……。本来は覆る筈のない使う、使われるという主従関係。それを引っ繰り返すことこそが真の目的なのかも知れないな」
「ホシは、特定のYPではなくクソカードそのものだとでも言うんですか?」
「……」
「怨念がシステムを乗っ取るなんて、いくらなんでもオカルトですよ」
「ハンドルを切れ!!」
「え!?」
『ずどーん(衝突音)』
「こ、このドライバー、明らかに意図して当たりに来てましたよ」
「そんなのは見りゃ理解る。援軍を呼んでくれ」
「運転手は軽い外傷、意識なし。呼気からは微量のクソカードを検知」
「微量のクソカード?」
「粉末状にしてキメてやがったんだ……。成る程、実戦で使えないなら物理的に砕いても問題はないと」
「クソカードには人間の中枢神経を麻痺させる効能があるとされている。そうでなければ、正常な脳の判断では決してクソカードはデッキに入れて貰えない。長い時間を経て、クソカードの側も進化しているんだよ」
「ん?なんだ、こんな時に身内から電話が……」
「!!」
「どうされたんですか、先生」
「馬鹿な」
「俺氏のベアルクティたちが誘拐された」
「あ、あり得ません」
「ベアルクティたちは四捨五入すればクソカードの部類です。彼らがクソカードテロの標的にされるのは矛盾が生じてしまう」
「まさか、な」
「さっきの悲鳴をあげていた女性……。すぐにその場を立ち去りましたね」
「……」
「ネオダイダロスか」
「半年前のあの事件……。俺氏はネオダイダロスを治療不可能として救済を断念した」
「すまない、これまでの仮説は全て忘れてくれ」
「これはクソカードたちによる無差別な反乱ではない」
「目標は俺氏本人。俺氏が切り捨ててきた数限りないクソカードたち」
「それを清算させようってのかよ……ッ!!」
『(冒頭ここまで)』
「」