【】し ゃ っ ば し ゃ ば な す ー ぷ か れ ー【】
『数年前 横濱』
「成体まで成長したおしりかじり虫の全長は7mにも達し、臀部のみならず獲物の全身を喰い散らかす」
「飢餓状態のクッキーモンスター。それから、無限増殖するミニオンズ」
「阿笠博士が所有する太平洋上の無人島。それを改造したビオトープで、コナン君のお姉さんは鍛えられたそうです……」
「徒手空拳で空を裂き」
「異形の怪物たちにも一歩も退かなかった」
「単純な肉弾戦で、毛利蘭の右に出る者は現れないでしょうね」
「おん?」
「そうか」
「で、用事ってなんだよ」
「元太君……」
「君の異能は、あらゆる異能を無効化する異能だ」
「加えて、元来の肉体の頑強さ……。僕たち少年探偵団には、なくてはならない人材になるでしょう」
「おおん?」
「理解していませんね……。己の存在の重要さを」
「いいですか?」
「元太君」
「僕たち少年探偵団の理念は、法で裁けない悪を裁くこと」
「法律でさえも、利権に塗れた汚い大人たちが作っています……」
「日本国が法治国家だからと胡座をかいていては、いずれ僕たちや、その家族や友人たちまで惨劇に巻き込まれますよ」
「僕たちが、そんな腐った社会の構図を正すんです」
「この世に、必要悪など存在しませんっ」
「そうか」
「俺あ、遠慮させて貰うわ」
「元太君!?」
「つまんねえ尺度に囚われてんなよ、光彦」
「え……」
「確かに、許せねえ悪党ってのは存在するかも知れねえ……」
「けどよお、いつまでもそいつらに構ってたら、俺たちの人生まで棒に振ることになっちまうぜ?」
「たった一度の人生だろ」
「で、でも」
「事が起こってからでは遅いんですよ!!」
「政治家や法律家が腰を上げるのは、いつだって人命が失われるような重大な事案が発生してからです……」
「たとえ独善的だと揶揄されようと、僕たちが摘まなければならない悪の芽はあるっ」
「それを理解っていながら、保身の為に目を瞑ることは僕にはできない……」
「たった一つの命を護る為には、綺麗事ばかり言ってられないんですよ」
「けどよお」
「それじゃ、お前の命が危うくなるだろ」
「光彦」
「そ、それは……」
「……」
「だったら、同時だな」
「え?」
「俺とお前が背中を預け合えばいいんだよ」
「お前の信念と」
「俺の生き様」
「同時に遂行すれば、それが一番ってことだろ?」
「なっ……」
「それができれば、理想的でしょうけど」
「決まりだな」
「ちょ」
「元太君ッ!?」
「お前らのボス、江戸川コナンっつーんだろ?」
「話、つけてくる」
「だからって、僕を抱えて行くことないじゃないですかっ」
「降ろして……」
「げ、元太くーーーーーん!!」
「……。こくんっ」
「光彦君ッ!!」
「はっ!?」
「灰原さん……?僕は、気を失っていたのか」
「どういう状況です」
「これから、食戟の次鋒戦が行われるところよ」
「けど……」
「突如として現れた忍者らしき少年に、毒霧を撒かれてしまった」
「毒霧!?」
「それを吸って、僕は意識を失っていたんですね」
「恐らく、彼は忍たまの乱太郎」
「あ」
「そういえば、気絶する寸前にコナン君の声を聞いたような」
「聞いて。光彦君」
「髭爺を始めとする上層部は、既にドアラたちの派遣を決定した……」
「本拠地が近い球団から、続々と駆けつけてくる筈よ」
「ば、馬鹿なっ」
「招集する気ですか!?」
「十二球団マスコットを……!!」
「以前、本土決戦を想定したマニュアルを作っていたわよね」
「光彦君」
「え、ええ……」
「列島の各主要都市を守護する十二球団のマスコットたちが集結すれば、ファン同士の激突は避けられない」
「最低でも、数十万人規模の死者が出る予想です」
「ここが水際よ……。光彦君」
「上層部への直談判。下手を打てば、ここにいないきり丸やしんべヱが待ち伏せしているかも」
「それでも」
「最悪の事態を防ぐ為には、日和ってなどいられませんよ」
「勝算はあるのね?」
「はい」
「僕の背中は、不死身の男が護っていますから」