伏線回収拒否
【戒めの里】の荒屋で、帝と鶫は作戦会議を行なっていた。
誰よりも強欲に、世界を不可解から救済する為の、
【原稿添削】。
「庵、昴、雅、鎧、間、轍、佃、厨、調、環、卍、輩、榊、絆、左、巷、東、麓、椚……。既にこの連載、【異世界夭逝】に登場し、現実世界の住人にも関わらず、非業の死が確定している奴らだ」
「え」
鶫は、まん丸い瞳をぱちくりさせる。
「決まってるんですか」
「ていうか……。俺とお前も含め、【異世界夭逝】の登場人物は全員、老衰以外で死ぬって決まってんだよ」
「そんな無茶なっ」
「だから、俺はその機密事項には従わない。全員を【倫理委員会】の一員して、【多次元移動教室】で回収して回るんだ」
「でも、機密事項によると、この人たち、中学生とか社会人も交ざってますよ?ガタコーの二年生、七十二人がこの世界に転移してるんですよね?」
「全員が、同じ機会でガタコーに在籍していたとは限らない」
「と、というと」
「現在、過去、未来……。人生の、いずれかの機会にガタコーの二年クラスに籍を置いていた人間が、この【異世界夭逝】の物語に巻き込まれてるんだよ」
パワー系ヒロインの鶫は、当然、頭を抱える。
「どういうことですか……」
「たとえば、椚なんかは同級生の中学生を刺し殺し、【原稿添削】の機能によって存在ごと抹消された」
「は、はあ」
「だが、俺は【原稿添削】をクレアさんから継承した段階で、少し仕様を変えさせてもらった。要するに、この連載に登場した現実世界の人間、全員、無理矢理にでもガタコーの生徒にして、生き延びさせようって魂胆なんだよ」
「遠大な野望ですね」
「ワンチャン、七十二人じゃ済まないかもな」
でも、それでいいんだ。
「人助けほど、脳汁が出る遊びはない」
味の抜けたチューイングガムと呼ばれようと、どれだけ種が枯渇しようと、
同業者をどれだけ、いじり倒そうと、
それで飽きられようと、
結婚もして、子供もできて、人生でできそうな楽しそうなこと、粗方、クリアしたとしても、
この連載が続く限り、もしかしたら、
未だに【異世界夭逝】を知らない誰かに、たまたまこの物語と言葉が届いて、
そして、それが希望になって、生きる理由を創造するかも知れないのだ。
そう考えたら、興奮するだろ?
「勃起してきたな……」
「え」
緻密なプロットにも、綺麗な伏線回収にも、
俺は興味がないんだ。
現実を、変えたい。
「気に喰わねえもんは、気に喰わねえ」
言葉より、拳で。
団長だろうが、黒幕だろうが、道化だろうが、流星だろうが、
もう、関係ねえ。
「俺たちは、【戯言師】だ」
清濁、全てを併せ呑んで、未来を切り拓く。
「帝さん」
「なんだ?」
「私たち、夫婦ですよね」
「お、おう。そうだょ」
「対等な関係ですよね」
「もちろん」
「【倫理委員会】の指導者は、私に任せてもらってもいいですか?」