【】まる ち ー ず【】
「これ、なーんだ?」
「っぴ〜?」
「あれは」
「僕の人形……?」
「そ。今度のハッピーセットの景品にしようと思ってね」
「へ、へえ」
「光栄なのだ……。僕が、そんな大役に抜擢されるなんて」
「あ」
「手が滑った」
「……ッ!?」
「ああああああああああああああああああああああ!!」
「ずんだもん?」
「なにを、されたっぴ」
「左手の小指が、妙な方向に……」
「ごめんごめん。つい、力を込め過ぎちゃったよ」
「僕のメン限秘技はね、対象をハッピーセットのおもちゃとして人形化しちゃうの」
「で、その人形の関節を捻ると……。いまみたいなことが起こるってワケ」
「愉快でしょ?」
「道化師、ドナルド……」
「多くの子供たちを洗脳教育し、国内を追放された国際指名手配犯」
「そんな男が、何故ロペスに力を貸すのだ」
「モスを潰す。僕の悲願はただそれだけ」
「彼は、その協力を買って出てくれたからね……。それ以上でもそれ以下でもないよ」
「安心して?僕はもう大人さ。ハッピーセットに付いてくるおもちゃで遊ぶような歳じゃあない」
「ただ」
「野獣同然な低学年の子供たちが、君の人形をどんな風に扱うのかな……?」
「くっ」
『ばぜゅううううううううううううううううううん!!(時空が爆ぜる音)』
「おっと」
「ゴロリかい」
「ありゃりゃ。避けられた」
「よしてくれよ……。君の能力は理解、分解、再構築。その前にはあらゆる防御手段が意味を成さない」
「近接苦手な僕には、ちょーっと分が悪いんだよね」
「そもそも、僕と君が争う義理はないでしょ」
「あんたらとあたしらじゃ、やり方が違うんでね」
「受信料分の仕事はして貰うよ?ゴロリ」
「仕方ないなあ……」
「破壊を愉しんでいるワケじゃない。ただ、素材の調達はどうしたって必要だからね」
「そうだよね?わくわくさん」
「キッコロさん……。あの、ゴロリの後ろにいるのって」
「ああ」
「がんこちゃん、だね」
「ずんだもん……。東北の恥晒し」
「なんで、あたしらがロペスの描く新世界秩序に賛同しているか理解るかい?」
「さあ……」
「教育だよ。それまでの負の遺産を完璧にリセットして、次世代の子供たちに最高の環境と豊かな未来を用意してあげる」
「その為には、あんたらみたいなインターネットの遺物どもは排除しなきゃなのさ」
「っぴ〜?」
「ドナルドって人と、あっちの恐竜さんはお仲間じゃないっぴ?」
「違うね。全然」
「あんた、子供向けのマスコットにしては顔が怖過ぎるんだよ……」
「駄目だ、勢力が入り乱れ過ぎてるっ」
「ぺぇぺぇスタジアム……。この場所が、この国のマスコットの覇を決める為の決勝会場になっているのだ」
「ずんだもん。念の為にこれを」
「キッコロさん」
「マックライオンの鬣で編んだミサンガだよ……。なにかあった時、きっと君の身を護ってくれるだろう」
「みんな、聞いてくれ!!」
「いま、この場で戦うべきはもんざえもんだろう?僕たちが争っていたら、あっという間に皆殺しにされてしまう……」
「だから」
『ドゴォッッッ!!(壁を突き破る音)』
「!?」
「あ」
「石」
「あっ、た」
「ぼ、ぼーちゃん……!?」
「見たことのない、石」
「欲、しい」
「なんだい。あの園児は」
「知らないのかい?ドナルド。これだから教育が本職じゃないマスコットは困るねえ……」
「あれはぼーちゃん。人呼んで、春日部の最終兵器」
「本来、彼自身に特筆すべき力はない。ただ、大好きな石を蒐集する時に限定して、そのリミッターが解除されるのさ」
「ふうん?でも、そんなに都合良く石なんて落ちてないでしょ」
「そこがミソさ」
「ぼーちゃんのメン限秘技は、注視し続けた対象を石化させる能力」
「攻撃対象を石に変えることで、無理矢理リミッターを外しているんだよ」
「なるほど。だから、会場の壁を石化させてぶち抜いたんだね」
「そんなこと、冷静に分析している暇はないのだッ!!」
「電子さん。僕の肉体を雷撃に換えて欲しいのだ」
「ぼーちゃんの死角に回り続ければ、石化の能力も無効化できる筈」
「いいけど、問題は君の意識が雷撃の速度についてこられるかだよ」
「小指の痛みは大丈夫?」
「東北の恥晒し……。確かに、僕はそう呼ばれても仕方ないような人生を歩んできたのだ」
「戦闘はきりたん頼み。このままじゃ、ずんだ餅のネガティブキャンペーンになってしまう」
「マックライオンさんじゃないけど……。僕も、自分の精一杯をぶつけたくなったのだ。この戦いで」
「理由としては、悪くないね」
「……」
「ぼーちゃんが見てる。恐らく、注視し始めてから石化までのタイムラグは五秒程度」
「ギリギリまで引きつけて」
「……」
「……」
「……」
「……ッ!!」
「いま!!」
『ずにゅううううううううううううううううううん(時空が歪む音)』
「……」
「は?」
「なに、してるですかぁ〜?」
「た」
「タラちゃん……」
「僕たちも、遊んで欲しいで〜す!!」
「あーい!!」
「まずい、石化がっ」
「落ち着いて、ずんだもん」
「キッコロさん」
「僕の樹木操作で、ぼーちゃんの視界は塞いだ……。暫くは石化を防げる筈だよ」
「それより、電子さん」
「なんなの……?この、指先一つ動かせない程の凄まじい倦怠感は」
「タラ男……。恐らく、あの子供のメン限秘技なのだ」
「タラちゃんは、日曜日夜の倦怠感を数百倍に凝縮して対象に浴びせることができる」
「あんたら、そんなことも知らないのかい?怠惰だねえ」
「何故、月曜日を恐れるですかぁ〜?」
「二日会えなかった友達に会える、とっても楽しい一日で〜す!!」
「あーい!!あーい!!」
「まずいことになったね」
「タラちゃんに足止めされたままじゃ、ぼーちゃんの石化を振り切って動くことは難しい」
「なんなのだ、次から次へと……ッ!!」
「類は友を呼ぶ」
「強者が、また次の強者を呼んでいるんだよ」
「っぴ〜」
「もっと、石」
「欲、しい」
「ドナルド」
「ウォーリーかい」
「随分と騒がしいね……。僕の苦手な空気だ」
「だったら、こんな人が集まる場所に来なきゃいいのに」
「他人と入れ替わる能力は、人混みじゃないと効果が薄まる。それくらい理解ってるだろ……」
「はいはい。あとで朝マック奢るよ」
「まったく」
「どいつもこいつも、緊張が足りないねえ……」
『ヴ』
『ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
「「「「!?」」」」
「な、なんなのだ」
「会場の外から?」
「っぴ〜?」
「あ、あれは」
「馬鹿な」
「子供の頃しか、視えないんじゃなかったのか……?」
「と……」
「トトロだ!!トトロがいる!!」
『オン……。ヴオン』
『オ』
『ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!』
「おい、プー」
「本当によかったのか?最後まで見届けなくて」
「うん。まあね」
「僕は蜂蜜のお礼をしに来ただけだし……」
「それに、やっぱり喧嘩は良くないよ」
「おいおい、プー!!そいつはなんの冗談だ?」
「この状況を見てから言えよ……」
「言った、筈でおじゃる」
「月光町の人間には手を出すなと」
「おじゃる様。ここはわたくしめが」
「電ボ」
「大丈夫かな、兄さん……」
「これはもう、完全に配管工事の管轄外だよ」
「お前は、本当にビビりだなあ……。こんなのいつものことだろう?」
「それより、俺は作業着をこんなに汚しちまったことが気掛かりだ」
「また、ピーチの奴にどやされるぞ……」
「世界一ダンディな虎が誰かって?」
「おい、プー!!言ってやんな」
「えーっと、世界一ダンディな虎……?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「誰だっけ」
「おいおい、プー!!冗談だろう?途中で寝ちまったのかと思ったぜ」
「答えはこの俺様、t」
「まどろっこしいのは抜きにしてさ、とっととおっ始めようよ」
「あんたらのやり方……。あたしゃ、気に食わないね!!」
「ま、まるちゃん……」
「行くよたまちゃん。こんな腰抜けのタマ無しどもと一緒にいたらこっちまで烏賊臭くなる」
「まだ、オリエンタルランドと事は構えたくなかったんだけどなあ」
「それはそうと」
「出来立ての、ポップコーンはいかが?」




