二人からみんなへ
司は、【虚言輪廻】として、
そして、【虚言師】として、
【虚言街】を発った。
「ねえ、一人でどこ行くの?」
「え」
あてもなく、彷徨い歩く司に追いついたのは、
雀。
「なんだ、お前かよ」
「失礼だなあ。私だよ」
「これから、【虚言師】として役目を果たしにいくんだよ。ついてくんな」
「たまたま、進む方向が一緒なだけなんだけど」
「あ、そう」
「私たち【虚言師】には、【孤言】っていう秘められた能力がある」
「先輩たちから聞いたよ。俺、こう見えて物分かりはいいから」
「ちょっと前まで帝のことばっかりだったのに、調子に乗るな」
「はい」
「で。私たち【虚言師】は、互いの【孤言】をぶつけ合って、【救人】を倒し、いつか……。【孤言寵児】を生み出すまでは、【職人組合】として、【戯言師】としての土俵に立てないんだ」
「その境地に辿り着かないと、帝たちとは再開できない」
「そういうこと」
当然、司にも、【異世界夭逝】への招待状は届いている。
「あの世界に散らばった、ガタコーの七十二人……。全員を現実世界に連れ戻すには、帝だけの力じゃ足りない。だから、俺は一刻も早く【戯言師】になって、【異世界夭逝】の世界に戻らなくちゃいけないんだ」
「そうだね。頑張らないとね」
「ああ。それが……。帝を傷つけた、俺が背負った罪なんだから」
「少しでも早く、【孤言寵児】を生み出さなくちゃ」
「その為には、他の【虚言師】を探すしかない」
「立ち返って、私たちは互いに、【虚言師】」
「……」
「気づいた?」
「もしかして、天才?」
司の両親、庵と昴が遺した一軒家で、
二人は、静かな時間を共有する。
「一刻も早く、直ちに、明日にでも、速攻で、【孤言寵児】にバトンを繋いで、【戯言師】になって、帝たちに追いつきたいよね?」
「お、おう。そうだな」
「どうしたの?脂汗、出てるけど」
「そんなことないよ。そんなことない」
「これ。ネットで注文してさ、媚薬作用のある紅茶って話なんだけど……。絶対、嘘だよね」
「え」
雀は颯爽と立ち上がり、
寝室の扉の前で優雅に振り返って、
言い放つ。
「これから、私と子作りしない?」