【】ぷるだっ くぽっ くん みょん【】
『カタール YAGOOクソコラ選手権本選会場』
「霊長類最低な男に贈られる称号……。マゾ男帝」
「まったく」
「HENTAIの国から遥々やってきた日本代表二人が、その体たらくとはね」
【なんだこいつ】
「イギリス代表……。一回戦目の相手だよ」
『YAGOOクソコラ選手権イギリス代表 アーロン』
【あの膝小僧】
「ああ。ショタと青年の境界線くらいの膝小僧をしてる」
「ってことは、つまり……」
【白銀聖騎士団か】
「その通り」
「このバッジに見覚えがあるだろう?創世神の系譜である王族、その守護を任された誇り高き聖騎士団の証さ」
「王室の御前で催される叙勲式で、僕は正式に白銀聖騎士団団員と認められたのさ」
【うち(にじさんじ)にも質の高い膝小僧が何人かいるが、それにも劣らないレベルだな……】
「知ってるか?」
「団長は膝小僧の発育具合を見るだけで、そのショタの生年月日を正確に言い当てられるらしいぜ」
「僕の話を聞いているのか、君たち」
「まあいい」
「大きさこそパワー。それが、僕たち聖騎士団のモットー」
「持つ者と持たざる者……」
「その圧倒的なまでの戦力差を、思い知らせてあげますよ」
【巨乳至上主義……。過激派だな】
【俺氏】
「わーってるって」
「俺氏は別に、巨乳が嫌いなワケじゃあないが……」
「貧乳派代表として、ちょいと指導が必要みたいだな」
「ゲートオープン」
「解放!!」
『ずにゅううううううううううううううううううん!!(時空が歪む音)』
「何故、人が大きいおっぱいに魅力を感じるか理解りますか?」
「それは太ももやお尻と同様、豊満なボディは健康体の象徴でもあるからです」
「共に種を遺すパートナーとして、より頑強な肉体を求めるのは生物として当然のこと……」
「性的魅力という言葉では繕い切れない、生物としての力量差」
「少数派を気取って気持ち良くなるのもいいですが……。本能の導きには敵いませんよ」
【なるほどね】
【貧乳派の言い分はどうだ?俺氏】
「感情的な物言いは無闇に心証を悪くする……」
「いくら巨乳好きとはいえ、貧乳を見下すような言い方はやめた方がいいよ、アーロン君」
「なんだと?」
「ディベートの基本はあくまで、双方の視点をすり合わせて単一の事象を多角的に討論すること」
「一方的に相手をやり込めようとするのは討論ではなく、ただの口喧嘩さ」
「そして、争いは同じレベル同士でしか発生しない……」
「ふん」
「それは、巨乳が貧乳よりも上位の存在であると認めたということか?」
「コインの両面だよ」
「大きい小さいという概念もまた、互いが互いを定義し合う関係にあってね」
「貧乳が存在しなければ対比としての巨乳も存在せず、中立の立場である普通乳も存在しない」
「はあ……?」
【始まったな……】
「直感的にはピンと来ないよね……。大丈夫。俺氏も最初はそうだったから」
「希望と絶望、光と闇、生と死、正解と不正解、正義と悪、平和と戦争、好きと嫌い、愛と憎しみ」
「巨乳と、貧乳……」
「どちらか一方だけを選べるとして、それは傲慢なことだと思わないか?」
「水掛け論に終始することで、論点をズラそうとしているのか?」
「星街のえっちなファンアートがあったとする」
「そこで俺たちに与えられる選択肢は二つ。そのままおシコり申し上げるか、おシコり申し上げずに退席するか」
「それは、僕が白銀聖騎士団だと知っての愚問かい?」
「まあ、最後まで聞けって」
「なんつーか……。江戸時代には、星街のえっちなファンアートは一枚も存在していなかったんだよね」
「だけど、時は令和。突如としてこの世界に星街のえっちなファンアートという概念が爆誕した」
「その瞬間、星街のえっちファンアートが存在しない世界線から、星街のえっちなファンアートが存在する世界線に不可逆的なパラダイムシフトが発生したんだよ」
「どちらも選ばないという選択肢はない……。おシコり申し上げるか、申し上げないか」
「二択の選択を迫られている時点で、俺たちは既に星街の術中なんだ」
【始まった頃には終わっていた……。ってやつだ】
「要領を得ないな」
「それは本当に、貧乳派としての意見なのか……?」
「人の脳は選択肢を与えられた時、自分は自由なのだと錯覚するようにできている」
「巨乳と、貧乳」
「団長と、星街」
「ごまんとおシコり申し上げる対象が存在する筈の世界で、何故かその二人だけの選択肢を迫られている」
「どちらか一方を選ばせることで、どちらも選ばないという選択肢を潰す」
「巨乳か貧乳かという二元論に拘泥し、そもそもの構造的な不具合を看破することができない」
「お前は本当に、お前の意思で巨乳を選んでいるのか……?」
【本当はただ、選ばされているだけなのかも知れない……】
「や、やめろっ」
「僕たちの団長への忠誠は、そんなことで揺らいだりしない!!」
「お前はこう思っているな?」
「団長推しの自分なら、星街の小さなおっぱいに性的魅力を感じることはないだろう、と」
「だがな……」
「男と女」
「俺氏たちは男に産まれちまった時点で……。女のおっぱいにはどうしたって勝てないという呪いを受けちまってる」
「ば、馬鹿な」
【俺氏、制限時間が近い】
「そうだな……。アーロン君」
「団長を一途に想い続ける君の矜持は受け取ったよ」
「同時に、俺氏たちはどちらも敗北者だ」
「ぼ、僕はまだ……」
「時に、騎士と武士が並び称されることも多いよね」
「HENTAIの国に産まれた敗北者として、俺氏は君に知って貰いたい……」
「散り際の美学。据え膳食わぬは、武士の恥」
「ダイナマイト……!?」
【爆発オチなんて、サイテー!!】
『ズガドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!』
『同刻 スコットランドヤード』
「市内で発生した、連続腐女子同担拒否事件」
「意にそぐわないカップリングを見せられた腐女子たちが、次々とその場で傷害沙汰に及んでいます……」
「薔薇の間に挟まる女絶対殺すウーマンも、一定数存在するからな」
「恐らくメイビー……。集団ヒステリーの一種だろう」
「そうですね。現場は、女学生が集まる場所が多かった」
「ジェイコブさん?」
「ああ……。いや」
「大空警察にちょっとした知り合いがいてね。似たような事件に協力して取り組んだことがあった」
「ふと、彼のことを思い出していたよ」
「そうなんですか」
「虎畑ロペスの逮捕。日本は空前の大混乱に陥っている」
「無事でいてくれよ……。警部」