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【】ま り とっ つぉ【】

『帝京平成大学 学生食堂』


「貴方ですか……。俺氏と因縁のある寿司屋の坊主というのは」


「と」


「虎畑ロペス……!?」


「おっと。私はあくまで大空警察に捕まっている身なので、このことは内密に」


「それにしても、寿司というものはいいですね。ぺこらんど共和国が誇る偉大な文化だ」


「そ、そうですね」


「私たちはその歴史的な価値を鑑み、日本食という枠組みを保持したまま、ぺこらんど共和国の名産としたいのです」


「はあ」


「島国という特性や、海産物が豊富という特徴は日本に限った話ではありません」


「では何故、寿司という文化がこの国特有のものになったのか……」


「考えたことがありますか?」


「いえ……。恥ずかしながら」


「それは、日本人のDNAには定期的に寿司を食わなければ死ぬという呪いが刻まれているからです」


「なんだって!?」


「多くの日本人はこの事実に気づかないまま生涯を閉じます……」


「なんだかんだ、意識しなくても寿司、あるいは寿司っぽいものを定期的に食べているからです」


「し、しかし」


「体質的に海産物全般が駄目な人もいるでしょ……。そういう場合は」


「回転寿司」


「当然、その存在は知っていますね?」


「そりゃあ、まあ」


「俺と俺氏の因縁が生まれた場所も、内原イオン一階の既に潰れた寿司屋でしたから……」


「あれは丁度、ヒロアカのアニメ第一話が本放送された日でしたね」


「して、回転寿司」


「その普及によって、フライドポテトやラーメン、パフェや唐揚げといったメニューも寿司としてカウントされるようになりました」


「待ってください!!」


「いくらなんでも、それは暴論だ……」


「それらは寿司屋でも出てくるメニューというだけで、寿司というカテゴライズではない筈っ」


「まあ、そう興奮なさらず」


「寿司という文化には歴史の重みがある……。故に、軽率な寿司への解釈は冒涜に当たるかも知れない」


「そう考えているのでしょう?」


「う……」


「ですが、寿司という文化でさえ存在しなかった時代はあります」


「伝統とは、先人たちの遺した神髄を継承しつつ、常に新しい気風を取り入れていくことで初めて成立するもの」


「私は、貴方という寿司職人に無限の可能性を感じている」


「俺みたいな、寿司の注文を無視するような若造に……?」


「過ちを過ちと認める度量がある限り、それは過ちとは呼びませんよ」


「私はですね、限りなく灰色へ近いグレーな世界を創りたい」


「黒か白か……。クソサドか、クソマゾか」


「いずれか一方しか認めない勢力が幅を利かせる限り、この世から戦争がなくなることはありません」


「ロペスさん……」


「きのこたけのこ戦争」


「国内の政治的イデオロギーを真っ二つに対立させ、泥沼化した冷戦は解決の糸口が見出せません」


「明治ですよ……。彼らが利益を得続ける以上、きのこたけのこ戦争が終息することはない」


「どっちが選ばれたとしても、明治には売上として計上されますもんね……」


「どっちか一方を選ばせることで、どっちも選ばないという選択肢を潰す」


「そして、どっちが選ばれても得をするのは、いつだって中立な立場の人間だ」


「まさか」


「切り抜き師協会……。中立を自称する彼らが、この戦いを助長している側面はあるでしょう」


「くそっ」


「きのこたけのこ、どっちも旨いでいいじゃないか」


「その裏で、無用な血が流されていたなんて……」


「そこで、私は貴方に白羽の矢を立てた」


「え……?」


「保守と革新……。野兎同盟はいずれの政治的思想にも属さず、かといって中立でもない」


「きのこたけのこのどちらにも属さない第三勢力を擁立し、この戦争の論点をズラすのです」


「その為に、どうして俺が」


「決まっているでしょう」


「寿司が、旨過ぎるからですよ」


「日々の平穏な生活の中で……。ふと、誰しもが心に抱く疑問」


「我々の平和な日常は、どこかで誰かが血を流した結果として成り立っているのではないか……?」


「そ、そんなのって」


「救いがない。考えたところで、因果関係が見出せるワケでもない」


「だがしかし、そうした心の矛盾はどこまでも付き纏い、完全に払拭することは難しい」


「そうした漠然とした大衆心理が極限まで具現化した存在……。それが黒上フブキです」


「黒歴史、そのものの擬人化……」


「戦争と平和は、コインの両面」


「この世界には愛がないと悲観し、全てを擲って絶望に打ち拉がれるには、あまりにも寿司は旨過ぎる」


「寿司屋の坊主さん」


「貴方に、世界の命運までを握らせるつもりはありません」


「貴方が握るべきは、貴方にとって大切な人を喜ばせる為の寿司……」


「まだ、受け取った注文に応えていないようですよ」


「なっ」


「よ。元気してたか?」


「俺氏……!?」


「はは……。あれから色々あってな、俺氏も坊主になっちまった」


「でも、深い絶望に諦めかけた俺氏を奮い立たせてくれたのは、あんたへの哀しき復讐心だったよ」


「寿司、握ってくれるよな?」


「はっ」


「その為に、わざわざ学食までやって来たのかよ」


「では、あとは若い方々で」


「ロペスさんっ」


「どうして……。俺にこんな機会を」


「言ったでしょう?」


「私は、黒でも白でもない、混沌とした灰色の世界を創りたい」


「野兎同盟はグロいのNG……。平和が一番ってわーけ」


「ふぁーっ!!ふぁっ!!ふぁっ!!ふぁっ!!」


「はあ……」


「さて」


「手荒な真似はそちらにお任せしますよ、もんざえもんさん」






















































































































『偵察に向かわせた三機のステルス機が消息不明……。ちょんまげ頭の侍が、高度10kmで確認されていますッ!!』

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