【最終決戦】馳河vs○川【完全敗北】
ふ〜。
もう、もう結構、頑張ったよ俺。
ひとまず、青春時代の宿題は、期日をかなりオーバーしたけど、提出し終えることができた。
馳河家の遺伝子を遺せるか否かは、俺の聖剣に懸かってたからね。
もうだいぶ、心臓に負荷がかかってるから、そろそろ荷物を降ろさないとやばいよ……。
あとは、誰かがどうにかしてください。
今年中には、結婚したい。
そうじゃないと、俺はもう、二十七歳くらいで死ぬ運命に囚われたままだ……。
こちとら、全国の現役DKの命運が懸かっとるんじゃい。
夫婦を、超えていくしかねえだろ。
芥○先生を結婚させるのは、俺の役目だ。
「頼むよ後輩……。俺のバトン、受け取ってくれ」
死にたくないだろ?
可愛い嫁さん、欲しいだろ?
頼むよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
ぴんぽーん。(呼び鈴)
おっと、誰かきたようだ。
「私、こういうものです」
スーツの男は、丁重に名刺を差し出してきた。
「え……。なんですか」
「角川です」
「角川さん!?」
か、
か、
か、
か、
か、
角川さん!?
「角川さん!?」
「角川です」
「どうして、ここに」
「先生の作品を、書籍化したいんです」
な、
なんだって〜!?
どこかの国の大統領が言っていた。
「担当編集とは、自分で作品を生み出す能のない、糞雑魚ナメクジです」
と。
「つまりあんたも、糞雑魚ナメクジ!?」
「その通り。ゆえに、ここで先生に死なれては困ります」
「マジか」
おい。
書籍化は目指さないと、俺は言ったな?
あれは、本当だ。
だが、
書籍化をしないとは、言ってない。
「【戯言】!!」
俺はずっと、憧れていたんだ。
顎で世界を動かせる、そんな覇王に。
他のみんな、
ごめん。
俺、雑魚い出版社には、興味ねえんだ。
最大手にしか、興味ねえんだ。
だって、
そうじゃないと、ナイフを持った元カノまで、俺の言葉が届かねえからよ。
そうじゃないと、沖縄で海に潜ってる親友まで、俺の心が届かねえからよ。
でも、
「角川さん。また、日を空けてからきてくれないか」
「なぜ」
「書籍化の話には乗ってもいいが、一つだけ、俺には絶対に外せない条件がある」
「それは、一体」
「決まってんだろ」
意外と簡単な、心の法律。
世界は、恩返しだけでできている。
俺が、【異世界夭逝】を書籍化させる、
唯一にして、その絶対的な条件。
それは、
「俺をここまでの怪物に育てあげた、兄貴が結婚することだ」