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【】う め し そ【】

『王都 大空警察署』


「集めた情報を整理するぞ」


「まず、おか斗が罹患しているとされる難病、BANオーラ欠乏症」


「そして」


「その治療法を模索し続けているのが、ギャングタウンに本社を置く、セヤロガイ製薬」


「CMなんかでも、度々耳にする名前ですね」


「第一の被験者になる覚悟がない人間には、その薬を飲む資格がない」


「というのが、セヤロガイ製薬のモットーだ」


「過激だなぁ……」


「治験、新薬開発」


「人一人が消えるには、もってこいな条件が揃ってる」


「それから、ぺこらんど共和国を含めた東南アジアの経済連携協定、USEYAN」


「アジア圏となれば、エリア15も関わってきます」


「そうだな」


「兎化アンプルの原料となる黄金のニンジンの栽培には、このUSEYANも絡んでいると見られている」


「でも、黄金シリーズはホロアース内の激レアアイテムですよ?」


「しかも、世界樹でしか育たない筈じゃ」


「世界樹に詳しい人間なら、心当たりがあるだろう」


「まさか」


「議会も、黄金のニンジンの密輸に関与していると……!?」


「ファウラ議員は、言ってしまえば世界樹そのもの」


「黄金シリーズの栽培方法を知っていても、おかしくはない」


「全人類兎化計画は、人類の未来を切り拓く為のウルトラC」


「それを達成した暁には、途轍もない愉悦が待っているでしょうね」


「BANオーラ欠乏症」


「難病の治療薬開発なんてのも、愉悦の対象そのものなんだ」


「当然、患者本人には不謹慎な話だがな」


「救われたいから、救いたい……」


「子供たちの健全な発育と、大人たちの健康寿命に欠かせないもの」


「それが、愉悦」


「世界に難病患者が一人でもいる限り、セヤロガイ製薬が止まることはない」


「それ自体は、素晴らしいことに思いますが」


「善いとか悪いとか、個人の感想はどうだっていいんだ」


「肝心なのは、それがルールを護って行われているか否か」


「しかし、それにはとても大きな課題があります」


「そうなんだよ……」


「人類の兎化を取り締まる法律なんて、どこにも存在しないからな」


「そもそも、BANオーラ欠乏症とは」


「生命維持に必要なBANオーラを、自力で捻出できない先天的な病のことだ」


「じゃあ、どうやっておか斗は生き永らえているんです?」


「それなんだが……」


「おか斗のステラ細胞は、極めて苛酷なBANオーラの欠乏に晒されることで突然変異し、特殊な性質を得た」


「周囲のBANオーラを際限なく吸収し続ける、謂わばブラックホール」


「カーミラのメン限秘技で×××ラインに達することはないとはいえ、おか斗は己に集まるBANオーラを操ることができない」


「そもそも、自分のBANオーラじゃないからな」


「それじゃあ、まともに日常生活が送れませんよ」


「ところがどすこい」


「覇権カプと呼ばれる二人には、量子もつれに似た現象が発生するんだ」


「それによって、おか斗に集中する凄まじいBANオーラの塊が、今度はもんざえもんの元に供給される」


「つ、つまり」


「もんざえもんの圧倒的なまでの戦闘力は、おか斗の特異体質ありきなんだよ」


「これこそが所謂、友情パゥワー」


「友情、パゥワー……!?」


「時として友情パゥワーは、時空の歪みすら超越するアレを生み出すとされている」


「で、だ」


「俺たちが訪問した直後、健屋氏が謎の失踪を遂げた」


「どうでしょうさんも、ですよ」


「熊形県、しけむら」


「平成の大合併でも、神椿市には吸収されなかった」


「戦後の高度経済成長期に、不知火建設が建てた、サイコダム」


「限界集落と化したしけむらが未だに村の単位を保っていられるのは、ひとえにサイコダムのお陰だろう」


「当然、俺たちは健屋氏の自宅、ひいてはしけむらから追い出されたワケだが」


「僕の大学時代からの友人が、鑑識にいましてね」


「これが、健屋氏の居間で撮影された写真です」


「お前、無茶するなぁ……」


「って、なんだこれは」


「畳の裏に、赤いクレヨンで謎の文章が書かれていたようです」


「まるで、神様が左手で書いたみたいな……」


「鑑識の人間は、誰も判読できませんでした」


「さくらかぜに、おどるそら」


「え?」


「警部、この文字が読めるんですか」


「これは、シャチ族が仲間内だけに伝わるように使う、特殊な筆跡だよ」


「以前、霊感商法に纏わるトラブルを担当した時、シャチ族の男に協力して貰ったことがあってな」


「確かに、目を凝らせば日本語っぽく見えるような……」


「不知火建設最強伝説って、知ってるか」


「なんですか、急に」


「それって、何度もドラマ化されてる、ノンフィクション小説の大人気シリーズですよね?」


「あれが放送されてた頃、お前はまだ子供だったろ」


「何回も再放送されてるじゃないですか……。それに、母親が大ファンなんです」


「その、不知火建設最強伝説の作者、ユウシアさんがこれから署に来る」


「そうなんですか!?」


「ユウシアさんは、不知火建設専属の筆頭切り抜き師でもあるからな」


「虎畑ロペスを巡る不審な動きを知らせたら、喜んで力を貸すと言ってくれたよ」


「すごいですね……」


「どうでしょうさんが姿を消したことは、ユウシアさんも知っているだろうに」


「ここで我々が萎縮してしまっては、ぺこらんど共和国のジャーナリズムは死んだも同然」


「彼は、毅然とした口振りでそう言い切った」


「あの、警部」


「どうして、僕たちは無事なんでしょう」


「泳がされてるんだよ」


「なにを、どこまで知っているのか、連中はそれを見定めたいらしい」


「原因不明の奇病、サクラカゼ」


「昭和中期」


「しけむらで発生した、童歌になぞらえた連続少女失踪事件……」


「しけむらの自治組織、星詠み」


「AHOの依代を、如何にして安定供給しているのか」


「2023年、卯年」


「何故、このタイミングなのか」


「あと少し」


「あと少しで、全てが繋がりそうなんだ」


「あと、ほんの小さなヒントがあれば……」


「警部ッ」


「ん?」


『キキィィィィィィィィィィィィィィ!!』


『ドンッッ!!(迫真の衝突音)』


























































「ユウシアさんは、足の骨を折る重傷……。命に別状はないそうだが、いまは誰とも会いたくないらしい」

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