地下室は、密室で多目的室で…♡部活は、放課後レッスン♡♪
「ありのままの気持ちで…歌えたなら…」
学校の地下にある多目的室は、コーラス部の練習場だ。
今日は、欠席者が、多くて先生もいない。
「ねぇ? 私らだけだけど? 帰る?」
「いや。気になるパートあるし俺、練習してくわ」
「ふ~ん。じゃあ、私も残ろっかな?」
ここは、いわゆる密室で。
茜が、いると気まずい…。
「じゃあ、音合わせしよっか? 私、鍵盤弾くから」
茜は、転校生で美人で。
やたら、俺に馴れ馴れしく話しかける。
「じゃあ…行くよ! さんハイ! ド~は、ドーナツのド~…♪」
「レ~は、レモンの…って? か、課題曲やらないの?」
「アハ! 良いじゃん! たまには、こういうのも! 誰もいないんだし。楽しくやろ!」
「え~とぉ…。文化祭も近いし課題曲やりたい…かな?」
俺は、真面目にやりたい。
けど、茜が、目の前で歌い辛い。
しかも、二人きり…。
恥ずいよ…。
「なんだ…。さっき言ってたじゃん?
『ありのままの気持ちで歌えたなら』ってさぁ? 」
「き、聴いてたの…!?」
とにかく、俺は、ガチガチだ…。
ドキドキして…。
いつもは、ガランとした多目的室も茜と二人だけの『密室』に感じる。
「お、俺…。帰るよ…」
「ふ~ん? 逃げるの?」
「え…?」
茜の挑発的な態度は、いつにも増してカチンと来た…。
「逃げないよ」
「へぇ~。男らしいとこあるじゃん? ちょっとだけ…」
「な…!?」
茜は、いつも一言多い。
俺の気にしてる事をズケズケ言う…。
「じゃあさ? 裸になって歌ってみてよ? ありのままの気持ち。私に見せて?」
「はぁ!? 裸になんてなれないだろっ!? バカじゃねぇのっ!?」
「アハ! 誰も『脱げ』って言ってないよ~? あぁ~可笑しい…」
「は…?」
意味が、分からない。
苦手だ。
茜とは、接し辛い。
「じゃあさ? 私が、脱いだげよっか? ありのままの君の気持ち。見せてよ…」
「は…!? じょ、冗談だろ!? なんで、茜は、そうやって…」
「本気…。って言ったら…?」
「え…?」
どうして良いか、分からない。
地下室の照明だけが、明るく。
何時なのかも分からない。
換気扇の音だけが、静かに響く。
「脱が…せてよ…」
茜の声が、小さく震える。
いつもの茜じゃないみたいだ…。
俺は、何をしているんだろう…。
指先が、震える…。
「ありのままの君の気持ち…。聴かせて…」
動けなかった…。
渇いた口唇と喉元の言葉を探す…。
「お、俺は……」
「冗談…。さ、帰ろっか?」
ふっと、立ち上がった茜の長い髪の毛が、揺れる。
「もう…歌えるよね…?」




