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第31話 偽りがきっかけの、

「五十嵐雅文容疑者は、仕事を失ったのと、家族のこととでやけになって車を運転していた。気が付いたら二人を轢いていたが、怖くなり逃げてしまった。と供述している」


 その後も、なんとか俺は記事を読み進めた。


 家族のこと、とはもちろん卓也のことだろう。


 ……何も、知らなかった……。卓也の父親、あの後こんなことになっていたなんて……。


 俺は、一体何人の人生を狂わせた? 五十嵐卓也、五十嵐雅文、高崎陽平、及川遥香……俺は、四人の人生を、壊した、のか……?


 次第に、視線の先に映るパソコンの文字が滲んできた。頬に、一筋の雫が流れる。


 俺はいても立ってもいられなくなり、自分の荷物をひったくって図書館を飛び出した。あてもなく走り続ける。どこに向かうというわけでもない。視線の端に映る車の数は減ったり増えたり。


 なあ、卓也、これは、俺に対する恨みなのか? 陽平がここまで苦しんでいるのは。俺だけでいいよ。俺に向けろよ。陽平は……無関係だろ……。


 俺が……全部、悪いんだから。


 気が付けば陽が沈んでいて、そして俺は豊平川の堤防に座り込んでいた。


 生温い風が俺の体に当たっていき、草木が揺れる音は妙に鬱陶しい。


「……もう、無理か……」


 不意に口をついた言葉は、諦めのものだった。もう、陽平のことを解決するような状態じゃない。


 結局、俺は茜との約束も守れないのか。


「……無理、だよ……」


 ポキリ、と何かが折れる音が聞こえた。しかし、俺の周りにそんな音を立てるものは存在しない。


 ああ。そっか。


 ……俺が、折れた音、か……。




 翌日、学祭前日。短縮授業で、三時間目からは学祭の準備に充てられている。


 クラス委員としての伝えるべきことは伝えていき、頃合いになったら、ちょっと抜け出そう。委員の集まりは、六時間目の時間までないし。


 教室での設営の仕方を色々注意し、そろそろいっかなと思い俺はそっと教室を出る。


 昨日からずっと、頭のなかは事故のことでいっぱいだ。そのことを、及川に話そうかどうか、悩んでいる。


 君は、一体何者なんだと。


 ガヤガヤとざわめく廊下を抜けて、俺はこの間絵見と話した図書室前に向かった。


 一人に、なって考えたかった。


 壁にコツンと背中を預け、引きずるように座り込む。


 俺は陽平と違ってそんなに本は読まない。ゲームとかそっちの方が好きだったりする。しかし、全く読まないわけでもないから、この事実にひとつの感想を抱くとしたら。


「……なんだよ、幽霊物かよ……そんなの聞いてねえよ……」


 しかも、彼女が死んだのは俺のせいと来たよ。これ、何の漫画ですか?


「なんて、言えるわけねえだろ……」


 そんなふうに茶化せるはず、ないって……。


 もう、どんな顔して陽平と及川に会えばいいか、わからない。わからないんだよ……。


 中途半端な優しさは人を傷つけることはもう学んだ。でも、さ。まさか。高校の友達にまでそれが影響するなんて思わないだろ……。


 でも、実際そうなってしまっている。あのとき俺が卓也に見せた中途半端な優しさが、卓也のみでなく、卓也の父親、陽平、及川にまで災いをもたらした。


 この十字架を背負って生きて、そろそろ四年。未だ誰にも話したことのない、俺の贖罪が始まって、そろそろ四年。茜や絵見は同じ小学校ではあったけど、六年生のときは違うクラスだったから、自殺があったってことは知っていても「俺が深く関わっている」ということは知らない。というか、同じクラスだった人でも、それは知らない人が多いだろうから。


 中一の春、一か月遅れて学校にやってきた陽平にあのとき声を掛けなければ、俺はこの事実を知らずに済んだのだろうか。


 自らの贖罪のために、陽平と仲良くなろうとした俺に対する天罰なのだろうか。


 どっちでもいい、なんでもいい。


「もう……時間は巻き戻らないんだからさ……」



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