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第29話 優しくない真実

「……二人とも、みんなに優しいんだね──みんなに優しいってさ。言葉だけ追えば美しいけど、結構しんどいと思うのは、私だけかな?」


 ついこの間、絵見に言われた言葉は、学祭二日前になった今日もこびりついたまま頭に残っている。


 しんどくて結構。……そうでないと、俺がこういう性格やっている意味がない。


 俺が、楽してのうのうと生きることは、許されないのだから。




 茜に陽平の件をなんとかすると約束してから、俺は毎日のように放課後図書館に通いつめ、色々なものを調べ漁った。


 女性恐怖症に関する本や、逆に異性にもてるための自己啓発本、果ては心理学の小難しい論文にまで手を広げた。


 けれど、どれもピンとくるようなことは載っていなく、そんな日々を過ごしてはや一週間が経過していた。


 約束の日まで、あと三日。俺は例のごとく委員会が終わるとすぐに学校の近くにある市民図書館に向かい、閲覧席をひとつ確保する。


 もう本とかは粗方調べ尽くした感があるし、仮にあったとしてそもそもただの高校生が理解できる内容なのかっていう疑問もある。


 ……そう言えば、陽平の母親って、確か交通事故で亡くなったって言っていたな……。それがあったのが三年前の春。ちょうど、俺と出会う直前。


 ……もしかしたら、と思い俺は図書館のパソコンで地元の新聞のデータベースを開き、三年前の三月から四月の記事を探し始めた。


 目的の記事は、案外あっさりと見つかった。




「四葉区またひき逃げ」




 ……また? またってことはその直前にも同じような交通事故があったってことか。まあそれはさて置き。確かに……そう言うと語弊があるけど、陽平の母親、高崎瑞樹さんは四月五日の夕方に、四葉区の総合病院の側にある交差点で車に轢かれて亡くなっている。さらにどうでもいいけど、運転手はその後きっちり逮捕されている。


 これが原因、ってことはあり得るとは思うんだよな……。


 母親という、大切な家族、もとい女性を失っている。単純な話だけど、それが原因で今の状態になっていると言われればまあわかる。


 しかし、母親を失ったことが果たして恋ができなくなる、ってことに繋がるのか……?


 若干の違和を覚えつつ、俺はさらに記事をさかのぼる。一応、近辺の記事に何かまた有益な情報があるかもしれない。


 四月一日、三月三十一日……あった。




「札幌市四葉区 小学生二人ひき逃げ」




 え……?


 俺は、その記事に書いてある名前を見て、思考が停止した。




「三月三十日午後五時過ぎ、札幌市四葉区で小学六年生の高崎陽平さん(12)と及川遥香さん(12)が車に撥ねられる事故が発生した。及川さんはすぐに病院に搬送されたが、搬送先の病院で間もなく死亡が確認された。高崎さんも頭を強く打つ大けがを負った。警察は同日午後七時に車を運転していた五十嵐雅文(39・無職)容疑者を──」




 ……は? え……?


 そこまで読んで、俺は一度目をこすった。何かの見間違いかもしれないと思って。しかし、何度見ても、示されている事実は変わらない。


「嘘……だろ?」


 物音がほとんど立たない静寂な図書館に、俺の息を呑む音が響く。


 頭をハンマーかなんかでいきなり殴られたような衝撃が俺に走った。そりゃそうだ。こんな記事見つけて落ち着いてなんかいられない。しばらくの間俗に言うピヨリ状態みたいに視界がチカチカと殴られた後遺症が残り、ようやくまともに画面と再び向かい合えたのは五分くらい経った後だ。


 震える手で、キーボードを叩く。別の地元紙の記事も確認するため。もしかしたら、があるかもしれないとどこかで思いつつ。


 しかし、そんなことはあるはずもなく。


 三月三十日に、高崎陽平と及川遥香が交通事故に遭い、そして、及川遥香はその事故で亡くなっていることが、わかった。


 じゃあ……あの及川は……一体何者なんだ……。


 更に。


「い、五十嵐……雅文……?」


 ……もしかして、陽平の「症状」って……俺が、引き金を引いたってことなのか……?


 そうなのか……? 五十嵐……五十嵐、卓也。


 かつてのクラスメイトの名前を、俺は呼び掛ける。


 そいつは、俺の今の性格を形作る、発端になった人物だ。



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