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プロローグ

挿絵(By みてみん)


彩雲姫命あやもひめのみこと

挿絵(By みてみん)



七星姫命ななせひめのみこと

挿絵(By みてみん)


 ――こんなはずではなかった。


 人ならば誰しもそう考えたことが一度くらいはあるだろう。

 そう、貴方と同じ「人」であればの話だ。

 だが眼下で生じている悲劇を目の当たりにしているのは紛れもなく神であった。

 それも有象無象の神ではない。

 この宇宙が誕生して最初に現れた造化(ぞうか)の神、八百万ともいわれる神々において最高神とも讃えられる天之(アメノ)御中主神(ミナカヌシノカミ)だった。


 だが、ミナカヌシはその後の神話に語られることはなかった。

 なぜなら、ミナカヌシは宇宙に留まり気の遠くなるような時間を掛けて世の行く末を静観していなければならなかったからだ。


 この世界を開いた神々の歴史については古事記に詳しく書かれているが、少し説明をしておこう。

 ミナカヌシたちは強大な力を持っていたが、その後に現れたイザナギ、イザナミに国造りを任せた。

 国造りとは、後の日本となる国土を創造する神々たちの御業だ。

 夫婦となったイザナギ、イザナミの尽力により次々と陸地が誕生していった。


 国土が出来上がると、世界を治める者たちが現れた。

 その結果、世界は天、地、そして死の三つの領域に別れていった。

 あるいは、意図的に分断されたと表現したほうが正しいかもしれない。


 天には宇宙からやってきた神々が住む地がある。これを高天原(たかまがはら)という。

 一方、地上では人が暮らすようになる以前には、地の神々が生まれ住んでいた。

 まだ神々が住んでいた時代の日本は葦原中津国(あしはらなかつくに)と呼ばれていた。

 そして死後の世界、死と穢れの象徴である黄泉国(よみのくに)が誕生した。


 天と地に住まう神々は人と同じように子を産み、育てるが人よりも何千倍も長い寿命を持っている。

 そして神々の多くは神力(しんりき)という特殊な力を持ち、行使することで人間では到底成し得ない奇跡を起こすことができる。

 神は身体がとても丈夫で通常は怪我などしないのだが、神力を伴った攻撃を受けると傷つくことがある。ひどいときには、死んでしまうこともあるのだ。


 神々の時代、世界の成り行きに話を戻そう。

 イザナギ、イザナミの夫婦神は多くの神を生んだが、あるとき火の神カグヅチを生んだ際にひどい火傷を負ったせいでイザナミが死んでしまい、怒り狂ったイザナギは自らの手によって生まれたばかりのカグヅチを斬り殺してしまった。

 そこから神の悲劇は始まった。

 死んでしまったイザナミは黄泉国に囚われてしまい、そこで食べ物を口にしてしまったせいで醜い姿へと変貌してしまった。イザナミを愛おしく思うあまり、黄泉国まで迎えに来たイザナギに醜い姿を見られたことが引き金になって、イザナギは多くの人間に死をもたらす恐怖の存在となってしまった。

 その後も諍いは絶えず、時には神が神を殺し、黄泉の国はあふれる死者でいつも一杯だった。

 このことは古事記にも収めてあるので、後世の人々の知るところとなるだろう。


 人が羨むような奇跡の力を持っていた神でさえ、万事思い通りにできるわけではない。

 神の末裔(まつえい)――子どもたちが嘆き悲しむ様子は、ミナカヌシにおいても予想外であり、心を痛めるばかりだった。

 そしてミナカヌシは地上で今まさに悲劇に相見えようとしている一柱の女神に目を向けた。

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