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第5話
後輩達が立ち去って残されたのは俺とうつむいた小柄な眼鏡の少女だけだ。
この少女も俺のことを知っているのだろう、先程の台詞を聞いて真っ青な顔でうつむいて震えている。
だからなるべく優しい声で話しかけてやる。
「大丈夫か?いじめられてるんじゃないかって声を掛けたんだが……余計なことをしたか?」
その声を聞いて少女はこちらに顔を向けた、それでもまだ緊張して声は出せないのか顔をぶるぶる横に振った。
「そうか、余計なことじゃなかったなら良かった。なぁいつもこんな事があるのか?」
少女は泣きそうになりながら軽く頷く。
「そうか……友達とか……誰か助けてくれる人もいないのか?」
少女は口を尖らしてまた軽く頷いた。今は少し涙が流れていた。
そう……だから以前もこんな話を持ちかけたんだ。
「じゃ、俺とつるんでることにしな、そうすればああいう奴等は手出ししなくなるから」
そう言ったら少女は驚いた顔をして少し考えて
「……………………はい」
と小さな声で返事をしたのだった。これが以前の記憶では可哀想な短い人生を送った鳴海蛍との出会いの場面だった。