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第七話 指導員

「ルーイ!」


 ギルド長と共に、振り向いた先に現れたのは真剣な表情のルーイさんだった。目に見える傷はすっかり治った様でぼろぼろだった服も着替えていた。ルーイさんは開口一番、


「ばーさん、そいつは合格だ!それと、俺をこいつの指導員に付けてくれ!」


 ギルド長を見ると目をひん剥いてルーイさんを見ている。物凄く不気味だ……

 そんな様子を見ながら俺は立ち上がり、


「ルーイさん、先程は怪我をさせてしまい、すいませんでした」


「おう、気にすんな!冒険者に怪我は付き物だからな」


 入ってきた時の真剣な表情とは打って変わって、歯を見せ笑い、そう言ってくれた。


「それと、ありがとうございました。ギルド長から合格をいただきました」


「ばーさんがか?……まーいいや。それはそうとお前、最後の何だあれ!?魔法といい最後のあれといいめちゃくちゃな奴だな!お前本当に青カードか?」


 ばしばし肩を叩き笑いながら言ってきた。試験中も色々教えてくれたし結構気の良い人みたいだ。


「おっと自己紹介がまだだったな。俺はルーイ ジョグ。このギルドの職員だ。昇級試験官もやっている」


「マイル グロウリーです。よろしくお願いします」


「おう、よろしくな!よしっ!早速行くか!」


 ルーイさんは俺の肩に手を回し部屋から出ようとする。すると、


「ルーイ!!待ちな!まだ話の途中だよ!」


 ルーイさんは、


「お前どこまで話を聞いた?」


 俺はテーブルを指差し説明しようとするとルーイさんはテーブルまで近づき、


「これは、ベン、カミル、ジャミ、ルックのか?……ってお前!!これっ!上書きかっ!ハッハッハッハッ、やっぱりお前すげーな!尚更気に入った!」


 ルーイさんはそう言った後、俺のカードを投げてよこし、


「ばーさん、こういう奴は実地で覚えさせた方が早い。おいっマイル!適当に依頼受けていくぞ!」


「ル、ルーイさん!ちょっと待って下さい!」


 プルプルと震えているギルド長へ向かい鞄から手紙と箱を出し、手渡した。


「ギルド長、これからよろしくお願いします。こちらつまらないものですか、どうぞお納めください。それとこれは祖父からの手紙です。お世話になるギルドの上の方へとの事でした」


 ギルド長はそれらを受け取り、そのまま箱をミリィさんへと渡した後、すぐに手紙を開けて読んだ。


「あんた、おじーさんの名前は?」


「ゲイルです。ゲイル グロウリー」


 爺ちゃんの名前を言った瞬間、ギルド長の背後に鬼人族の顔が見えた様な気がする。スキルか?


「はぁ……やっぱりかい。あのじじいは元気かい?」


「えっ?あっ、はい。調子が悪い所を見た事がありません」


 爺ちゃんとギルド長は知り合いなのか?


「おいマイル!いくぞ!」


「はい!それでは失礼します」


 結局二人の関係を聞く事無く部屋を後にした。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 部屋を出た後ルーイさんと二人、真っ直ぐ受付へとやって来た。


「シャンティ、常設依頼でシャフス湖辺りのやつあるか?」


「はいはーい、って、ルーイ!あんたなにやってんのよ!今日警備の日でしょ!!」


 シャンティと呼ばれたこの女性はとても美人さんだ。ルーイさん程ではないが細く、緩く波打つ金色の髪と少しつり目の青い瞳が特徴的な、とても魅力的なお姉さんだ。


「ばーさんに呼ばれてたんだよ。んで、今日からこいつの指導員になった」


 ーーーバサバサバサッーーー


 シャンティさんは手に持っていた大量の紙を落とした。


「へ、変ね。ルーイが指導員に?……バルガスさーん!あたし状態異常にかかってるみたいなので解呪お願いしまーす!」


「あいよー」


 カウンターの奥から返事と共に緑色の光が飛んできた。


「ふぅ、これでよしっ!ルーイ。もう一度お願い出来るかしら?」


「これでよしっ!じゃねーよ!俺はこいつの指導員になった!初めて依頼受けるから一通り教えんだよ!んで、シャフス湖辺りの常設依頼はねーのか?」


 するとシャンティさんは椅子を高々と持ち上げルーイさんへと目掛けて……振り下ろす!?



 ーーーイイィーーーンーーー



「こっ、このスキル!?あなた本当にルーイなの?」


「お前、何だと思ったんだ?」


「幻か幻聴の類かと。ルーイが指導員なんて……はっ!……もしかして新人の冒険者を騙す新手の詐欺……」


 今のやり取りで周りの受付嬢や冒険者達がざわつき始めた。


「ルーイさんが指導員……」

「おいおい、嘘だろ?」

「誰か、他の奴らに知らせて来い!!」


 ほとんどの人が信じられない様な反応をしている。

 当の本人はと言うと、


「イタタタタタタタタタタタ!イタイ!」


 無言でシャンティさんの顔を掴み持ち上げている。細いのに凄い力だ。そしてシャンティさんは残念な美人さんの様だ。


 ようやく解放されたシャンティさんは泣きながら落とした紙の束を漁りそこから一枚の紙を出してきた。ルーイさんはそれを確認し、


「丁度いいじゃねぇか。ついでに受注も教えておきたい。そっち方面の依頼、適当に見繕ってくれ」


 コクコク頷きながらシャンティさんは更に二枚紙を出してきた。これが依頼書の様だ。

 ルーイさんはそれらを確認せずに、


「マイル、どちらか一枚自分で選べ」


 俺は差し出された紙を見た。


















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