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第五話 試験終了

 ルーイさんが咄嗟に体の前で両腕を十字に構えた。


 そこにスキルを乗せた拳を打つ。



「うおぉぉぉぉーーーーーー!!」



 赤い光に包まれた俺の拳と【光鱗】がぶつかった。



 【光鱗】(スキル)【瞬千突】(スキル)が反発し合うように、黄色と赤の光が乱れ狂う。



 ーーーヴィイィイィーーーンーーー



 甲高く澄んだ音では無い。訓練場全体に歪な音が響き渡る。




 俺は確かな手応えをこの手に直接感じた。




 ーーーいける!!!ーーー




 直後、【光鱗】が一瞬さらに激しく輝き、砕ける様に散った。



 そして、ルーイさんの体に拳が届くと思われたまさにその時、





「そこまで!」





 その声と共に突如俺の体は宙を舞う。いや、違う。何かに上斜め後方へと引っ張られた?拳を突き出した格好のまま、駆け出す前の位置へと戻された。



 ルーイさんは腕を十字に構えたまま動かない。それどころか腕を中心に全身ぼろぼろだ。


「ミリィ!」


「はっ、はい!」


 ギルド長に呼ばれたミリィさんがルーイさんへと掛け寄った。


 俺は構えを解き呆然とその様子を見ていると、ギルド長が近づいて来るのが見えた。近くへ来るなりギルド長は壁に目をやった。つられる様にその視線の先にあるものを見る。砂時計だ。丁度最後の砂が落ちる所だった。


「……合格だよ」


「へ?」


 そう言ってギルドへと続く出入り口へと歩いて行った。そして一度立ち止まり、


「説明の続きをする。ルーイの治療が終わったら、少し休んでからでいい。ミリィと一緒にさっきの部屋に来な」


 そう言い残し、ギルドへと消えた。


 視線をミリィさんとルーイさんへと移す。

 ルーイさんは横に寝かされておりミリィさんが両手をかざしていた。ルーイさんは気を失っている様だ。ミリィさんの体は薄い緑色に輝き、その光が両手からルーイさんに降り注いでいる。


 俺は二人に近づいた。


 ぼろぼろだったルーイさんの傷が少しずつ治っている。これもスキルの力なのだろう。ルーイさんを挟んでミリィさんの向かいの少し離れた場所に立つが、こちらに気付く様子はない。俺は暫くその光景を眺めていた。


「ふぅっ。もう大丈夫ね」


「ミリィさん」


「ふぇっ?ふぁっっ!?」


「あっ、驚かしたみたいですみません」


「いっ、いえっ!突然名前を呼ばれたものですから……って私!自己紹介していませんでしたよねっ!申し遅れましたが私、冒険者ギルド、グレーベル支部受付嬢の、ミリィ マイルスと申します。以後よろしくお願いします」


「ご存知だと思いますが、マイル グロウリーです。先程ギルド長から合格をいただきました。こちらこそ、これからもよろしくお願いします」


「ふふっ、マイルさん。正真正銘、正面突破の大合格ですね!おめでとうございます!」


 彼女は満面の笑みでそう言いながら俺の足元を指差した。試験前、ルーイさんが描いた円の中に俺はいた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ギルドの奥には職員用の宿舎がある。そこにあるルーイさんの部屋へとなんとか運び込む事ができたが頭二つ分も大きいだけあって移動する際、足を引きずる形になってしまった。ミリィさんも一緒だったけど誰かに見られたら間違いなく変な目で見られただろう。誰にも会わなくて良かった……




 そして俺は今、最初に通された部屋の扉の前にいる。この部屋はやはり応接室の様で重要度の高い依頼を受ける際に使用するらしい。ここまで来る道中にミリィさんから聞いた話だ。


 ミリィさんが扉をノックする。


「ミリィです。マイルさんも御一緒です」


 扉の奥から声がする。


「入りな」


「失礼します」


 部屋の中にはギルド長が椅子に座ってこちらを見ている。目で促されて向かいに座った。

 ミリィさんは一礼して出て行った。



 ギルド長は黙ったままだ。この沈黙が辛い。



 暫くしてミリィさんがお茶を持ってきた。ミリィさんが天使に見えた。


「ミリィ、ここに来て座りな」


 ミリィさんがギルド長の横に座った。


「この子のカードをお出し」


 ミリィさんがポーチの中からカードを二枚出しギルド長に渡す。ギルド長がそれを俺が見やすい位置にテーブルに置くと、


「これはあんたのカードだ」


 カードを見ると二枚とも「マイル グロウリー」と書いてある。さっきはじっくりと見ていなかったから気付かなかった。でも多分俺のカードだ。綺麗な青色をしている。俺がうなずくと、


「一枚持ってみな」


 言われるがまま手にすると、一瞬で()()()()へ。


 訳が分からず二人を見ると、ミリィさんは目を見開き手を口に当てて絶句し、ギルド長は表情こそ変えないものの一度小さくうなずいた。そして、


「マイル。これがどういう事か分かるかい?」


 俺は分からず首を横に振った。








































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