第二話 マイル冒険者になれない?
受付嬢の声がギルド内に響き渡る。
「お、おい。今あいつ青って……」
「俺教会から出てきた所みたぜ」
「それじゃまだ知らないのか?かわいそうに……」
周りがヒソヒソと何か言ってる。
「えっと〜青だと何か問題でも?」
「すいません!少し席を外します!少々お待ちを!」
受付嬢はそう言うとカードを一枚手に、凄い勢いで裏へとかけて行った。
あれ?もう登録はしたんだから、今更冒険者にはなれませんとかはないよね?
待つ事、数分。受付嬢が戻ってきた。その横には受付嬢より小柄な老婆がいる。
「あんたがマイルだね?ちょいと場所を変えようか」
老婆が先頭で受付嬢、俺の順番でカウンターの奥へと向かった。
「お入り」
老婆に促され入った部屋はどうやら応接室のような場所のようで周りには高級そうな調度品がある。中央には少し大きなローテーブルがあり俺は老婆と向かい合う形でソファーに座った。
「ミリィ、お茶を用意しな」
「は、はい!」
受付嬢はミリィと言うらしい。慌てて部屋の外に出て行った。今この部屋には俺と老婆の二人だけだ。
「さて、自己紹介がまだだったね。あたしはこのギルドのギルド長を勤めてるジルってもんだ。あの子が戻って来る前に少し確認しておきたい事がある」
この老婆がギルド長か。そんな人からの呼び出しに緊張してしまう。
「なに、とって食おうっわけじゃないんだ、緊張しなさんな。それでどこまで説明受けたんだい?」
とりあえず説明してもらったことを伝えた。
「全くあの子は!全然順番が違うじゃないか!申し訳ないね。言い訳になるが、まだ受付嬢になってから日が経ってなくてね」
ミリィさんはつい先日研修を終えて受付嬢になったとの事。俺とは同い年の様だ。
「て言うと、カードの色が青になってすぐにあたしを呼びに来たってことだね。何かあったらすぐ呼びなとは言ったが困った子だよ。それじゃあんたはこの青カードの意味がわかっていないね?」
「はい、すぐ席を立たれたので」
「そうかい。単刀直入に言うよ。残念だけどあんたに冒険者は難しい」
「えっ?」
「他人からジョブを聞くのは御法度だけどね、カードの色でどの系統かだいたい分かるのさ。うちのギルドで登録出来るのはね、ほとんど赤か緑だけなんだよ」
「でも成人前の子達でも冒険者になれるって……」
「仮だよ仮。自分で依頼は選べない。報酬も低く一律、それにその子達だってジョブが合わなきゃ諦めてもらってるさ。第一冒険者ってのはね危険が付き物の商売だよ。まだちゃんといってなかったが青カードってのはね、商人系のジョブが多いのさ。この系統のジョブはね、とにかく攻撃スキルを覚えないんだよ」
「攻撃……スキル?」
「行商人の防衛手段はなんだい?冒険者を雇うだろ?決して商人を雇ったりはしない。だから商人系のジョブ持ちのあんたは護衛の依頼は出来ない。討伐系も駄目。攻撃手段のないあんたは森に入れない。採取系もせいぜい森の外側に生えてるくたびれた薬草だけだろう。それでも危険は零じゃない。そんなんじゃ日銭すら稼げないよ。まだ人生これからだ。カードの登録自体は何処のギルドでも一緒だ。それもって商人ギルドへ行って来な。商人ギルドなら問題ないだろうさ」
俺は俯き膝の上で両方の拳を握りしめた。
商人になる為に今まで頑張ってきたんじゃない。冒険者になる為に頑張ってきたんだ!
それに爺ちゃんも別れ際に言ってくれた。
ーーーお前はなんにでもなれる!ーーー
「お願いします!スキルだけが攻撃手段じゃないはずです!俺は冒険者になりたいんです!冒険者になる為に訓練もしてきました!冒険者になるのが夢だったんです!」
「聞き分けの悪い子だね。……と言ってもあたしはあんたに夢を諦めろって言ってんだからしょうがないかね。それじゃ一つ試験をしようか。そこで見極めてあげるよ。それで駄目なら潔く諦めな」
そこでミリィさんが戻ってきた。
「ミリィ、ちょうど良かった。今試験官で誰が空いているんだい?」
「試験官ですか?バルガスさんと……ルーイさんです」
「ルーイかい。丁度良かった。今からこの子の試験を行う。訓練場の人払いとルーイに訓練場まで来る様に言っておいてくれ」
「ルーイさんですか!!」
「いいから早く行きな!」
「はっ、はい!」
ミリィさんはまた部屋から出て行った。それを見送った後ギルド長は立ち上がり、
「これからうちの職員と、ちと戦ってもらうよ。あんたが言った冒険者になる為の訓練って奴の成果を見せてみな」
「はい!わかりました!」
部屋を出るギルド長に続き部屋を後にした。