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戦闘

 ついに、怪人たちはクローチマンを痛め付けるのに飽いたのだろう。


「シブトイごきぶりメ、死ネ!」

 ムカデの怪人が頭のてっぺんについたハサミのようなものを振りかざす。


 絶体絶命のピンチを迎えているクローチマンだったけれど、なぜかにやりと笑った。


 その瞬間、私の放った上段蹴りがヒットし、ムカデ男は飛ばされ派手な音をたてながら滑り台へとぶつかる。

 滑り台は半壊しているが、ムカデ男は痛みを堪える様子を見せながらゆっくりと起き上がった。


 なるほど、人じゃ怪人と戦うのは無理だと大樹が言っていたのはそういうわけか。

 普通コンクリート製の滑り台が破壊されるほどの力で攻撃されたら、動けないだろう。



「殺されかけたのに、何笑ってんの、気持ち悪い。アンタ、マゾだったっけ?」

 クローチマンの隣に立って問いかける。

 するとコイツは、地面に座ったまま口から垂れている体液をぬぐってまた笑った。


「お前、未央だろ? そんなカッコイイスーツとか、ずりぃわ。だけど、笑いたくもなるさ。死なない未来が、俺には見えたんだから」


 “未来がわかった”という、胡散臭い言葉に眉を寄せると、クローチマンはまた口を開く。


「ピンチが来るとIQが三百にまで跳ね上がる。あの噂もあながち間違いじゃなさそうだ」

 立ちあがって、へへへと笑う。

 顔はまさしくGなのに、どこか大樹らしさを感じさせてくるのが、なんとも複雑な気分になる。



「あっそ。じゃあ、その天才っぷりで、あの三体をどうにかしてよ」


「オーケイ。ガ男は毒性がある、ハエ男は空中戦に強い、ムカデ男はバランス型。この中で一番厄介なのはハエ男。だけど、陸上のスピードだけなら、俺らのほうが格段に上。二人いれば勝てないことは絶対にない。まずは……」


 ごにょごにょと大樹は作戦を告げてくる。

 これが本当にあのアホな大樹かと疑ってしまう。

 Gがピンチに陥った時に出す力は、人智を超えている。

 さすが不快だけど、チートな生物だ……


 って、感心している場合じゃない。

 私は私の仕事をこなすだけ。

 幸い、ハエもムカデもガも……大好物だから。



 自分でも気付かぬうちに本能がちらりと顔を覗かせてくるけれど、それを抑えて壁を走る。

 側にいたムカデ男が私の襲撃を警戒する仕草を見せてくるが、それには目もくれずに走り続けた。


 大樹が四つん這いになって走っているのが見える。

 アイツが狙っているのはハエ男だ。


「甘イナ!」

 だが、ハエ男はそれを見透かしていたようで、攻撃を受ける直前に羽を動かし飛び立ち、別の地点に着地する。


「甘いのはそっちだ、ばーか!」

 大樹と声がシンクロする。

 私は壁からジャンプをし、ハエ男目がけておもちゃのような見た目の剣を突き付けた。


「何デ……?」

 ハエ男は消え入りそうな声で尋ねてくるが、私はにやりと笑った。


「アンタが飛ぶのを見越してアイツが着地点を割り出したんだ。って、聞こえてないかな?」

 事切れたハエ男は、キラキラとした光になって泡のように消えていく。

 害虫なのに、消える時はやけに綺麗だった。

 


――・――・――・――・――・――・――


「さぁ、次はお前だ!」

 大樹はガ男に向かって指を突き付ける。

 ガ男は、仲間がやられたことに苛立っているようだ。

 地団太を踏み、顔には青筋が立っているように見える。


「ソレナラ、コレハドウダ?」

 ガ男は飛び上がり、りんぷんをまき散らし始めた。


「まずい、毒だ!」

 大樹と私はスーパー銭湯の中に逃げ込み、空を飛ぶ怪人ガ男を睨みつける。

 幸いなことにみんな避難しているのか、人の気配は一切ない。


 そうこうしているうちに、ムカデ男が追って来た。


「悪い、未央。ムカデ男はお前にまかせていいか? 俺にスーパー銭湯はキツイ」


「そっか石鹸多いからね。呼吸できなくなるんだっけ?」


 苦々しい顔で大樹は頷きながら、ムカデ男退治の策を一つ授けてくれて、上に向かうエレベーターへと乗り込んでいったのだった。


 


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