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第十九話:回帰

この話は頭が悪すぎるので読み飛ばして問題ありません。

 ネリーを懲らしめ終わったある日、シーナは暗い表情で俺に話しかけて来た。


「シユタ様……少し、お時間よろしいでしょうか」

「ん?どうしたシーナ、元気ないじゃないか」

「はい、それが……私の体のことで少しご相談が」


 体のこと? うーん、なんだろうか。先日シーナが受けた刺し傷は、転移を経由してすっかり綺麗に治っているはず。他にも何か不都合があれば、そのついでにさっぱりと治療とされてい るはずだ。


 シーナが辛そうにしている理由が分からない。


「体のことか。どれ、話してみなさい。何か問題があるのか?」

「はい、私はシユタ様から毎晩のように愛して頂いております。それが一週間も続いたのにシユタ様の御子を授かった感覚がありません……」

「そりゃあ、一週間じゃなかなかそうはならないだろう。こういうので焦りは禁物だ。その早さで愛情を増やしたり減らしたりしないから、安心してじっくり作ればいいんだよ」


 俺はごく一般的な常識をシーナに諭す。だが、シーナにはその不調の原因に何か確信があるようだ。


「それが、どうにもお腹のこのあたりがヒリヒリと痛むのです……その、生理もなんだか調子が悪くて……」

「なんだと?! ……確かにこのあたりに妙な魔力が残留しているな。ごく微小な」

「あ、あの、流石に少し恥ずかしいのですが……」

「何を言っている! これは完全に医療的な行為だ。静かにしなさい」


 グイグイっと広げて確認する。


 なんだか自分でも滅茶苦茶なことを言っているが、もうとにかく医療的に大変なので仕方がない。緊急オペが必要だ。


 俺はシーナを横にさせて、力を抜かせる。そして治療が必要と思われる所を優しく両手で包み込み、転移先としてイメージを確立する。


「いいかシーナ。そのままゆったりと楽な体勢を保つんだぞ。全て俺に任せておけ」

「はい、シユタ様になら何をされても決して嫌ではありません。どうか私に栄誉のチャンスをお与えください」

「大丈夫、万事うまくいくさ」


 以前ダンジョンで巻き上げた<縮みの腕輪>を発動して、俺は自分の体を一気に百分の一にまで縮める。続けて<転移珠>を発動、シーナの症状を直接この手で治すため、実に健全で医療的 で崇高な旅を開始した。


――


 転移先は真っ暗だった。


 魔力の塊を宙に浮かべて光源を確保しなければ、右も左も分からなくなるところだ。なんとか明かりを照らすと、この世で最も美しいピンク色の壁が俺を包んでいる。温かい、湿度は高いがとても居心地がいい場所だ。何よりも香りが最高に良い。


「えーっと……ここの皺は触り覚えがあるぞ。うん、何回も味わっているから間違いない。ってことは、この向きが入り口で奥はあっちか」


 そうやって一瞬で俺は入口と奥の方向を判別する。まるで何度も通いなれた道であるかのように。そうやってざくざくと壁をかき分け奥に進んでいると、天から声が聞こえて来た。


『シ、シユタ様……? そこにいらっしゃるのですか?』

「お、シーナの声だ。すげえよく聞こえる。おーい! シーナー!」

『あっ……んっ……やっぱりシユタ様、でしたか』

「今からお前の病巣を、俺がガツッと取り除いてくるからなー! ちょっと時間がかかるけど、ゆっくり待ってろー!」

『お”っ……うう、はい、お願いします。あの、恥ずかしいので出来るだけ早くお願いしますね』


 うーん、考えとくね。ちょっと環境が良すぎてすっかり居座ってしまうかもしれないが、それは止む負えないよね。


 そう自分勝手に考え、返答を保留ながら奥に進むと、ようやく目指していた門に到達した。これまた実に美しい色づきをしている。さわさわと撫で、ぎゅっと包容し、おまけに何度も何度も口づけすると、びくんと通路全体が揺れ動いた。


『んひっ……! ああ、う、シユタ様、御堪忍下さい……』

「悪い悪い、ちょっとやり過ぎた。でもシーナ、これじゃあ固すぎて中に入れないよ! もうちょっと力抜いてくれー!」

『ふぅ……ふぅ……うっ……ふ……どうでしょうか……?』

「あーいい感じ! うし、じゃあ入るぞー!」


 通路に比べてひと際絞られている入口をなんとか潜り抜ける。


 潜り抜けたいんだけど、狭くて一息でうまく入れないかもー、ごめんシーナ。ちょっとこれ脚から入った方が入りやすいかな。肩がちょっと引っかかるから。とかやっている間も、嬌声に似たうめき声が天から聞こえてくる。あー脚からもいけるかもしれないけれど、やっぱり十回ほど思い直して頭から行こう。おっ、いけそういけそういけそう……。


 ぬぷんと俺は門を潜り抜ける。


「よーし、入ったー! うおあ、なんだこの居心地。この桃色景色……あっ、そっかあここが桃源郷かあ」

『あああっ! ううう……き、気持ちが良すぎて……私……』

「おっ、早速病巣発見!」

『ほ、本当ですか!? シユタ様!』

「おう、やっぱり剣の破片が悪さしていたらしいな。周りが炎症を起こしている。物凄く細かいけれど、こうまで小さくなったから良く見える。うん、癒着してしまったから、<転移珠> でも上手く振り分けられなかったのかもしれない。こりゃ似た症状の対策を今後考えないといかんな。転移時の所持品を厳密に指定すれば可能なはずだ」


 そう分析している間にもテキパキと俺は剣の破片を慎重に引き抜き、そして炎症が起こしている部分に<不老不死のポーション>を混ぜ合わせた軟膏を塗る。よし、これで回復力が一気に高まって完治するだろう。


「おっけー! これでバッチリだよシーナ!」

『お救い頂き誠にありがとうございます。……と、ところでシユタ様、そろそろお出になられてはどうでしょうか……?』

「いやだ!!」 ドンッ

『ええっ……!?』


 断固立ち退き拒否。当然だろ。ここを俺のキャンプ地とする。幾ら金を積まれても出ていく気はないね。政府の強制立ち退きなんて聞く耳持たない。俺の生活が第一だ。


「シーナ、もしかしたら他にも細かな破片あると大変だからさ、取りあえず一周して詳しく詳しく調べてみるよ(建前)。多分一日じゃ無理だ。最長だと……一年かかるかもしれん…… こいつぁ盛り上がってきたな……」

『シユタ様! そんな、困ります。私にも普段の生活があるのですよ?』

「じゃあこのまま生活すればいいじゃん。そうすればお互いWin-Winじゃん」

『あうううう……』


 はたしてシーナがどこでWinなのかはよく分からんが、とにかく俺が現在もの凄く勝利していることは確かだ。世界で一番勝っている。


 取りあえず本当に破片が無いか、俺は今までの戦でも例がないほどに素早く動き、二秒で確認を完了する。よし、オールオッケー、オールグリーン、オールピンクだ。


『あ"っあ"っあ"っあ"ああ……そんなに速く動かないでください!』

「悪い悪い、ちょっと事情があって。でも大丈夫! あとは俺大の字で横になるだけだから!」

『ええと、隈なく調査頂けるお話はどうなったのでしょう……?』


 シーナが至極真っ当なツッコミをしてくるが、聞こえなかったことにしよう。シーナとの距離はゼロどころかマイナスだが、たまたま反響とかなんやかんやで聞こえませんでした。以上 。その話は終わり。


「じゃあシーナ、飯と風呂とトイレ以外は俺暫くここで暮らすから。よろしくな」

『あう、絶対揺るがないと思っていたシユタ様への忠誠心が、なんか変な方向に軋んでいます……もしかしてシユタ様は酷く取り返しのつかない変態さんなのでは……』

「愛しているぞシーナ!」

『な、ならいいですけど……その、シユタ様。”新入居者”が来たら、どいてくださいね。それまでは居られて結構ですので……』

「おう、了解!」


 こうしてシーナとの共生生活は始まった。


――


 ぐぐっと自分の体が持ち上がる感覚で俺は目を覚ました。


 シーナと全く同じタイミングでの起床である。


「おはようシーナ」

『おはようございますシユタ様、お加減はいかがですか?』

「最高! 極上! シーナは?」

『んー……私も良い目覚めです』


 ぐーっとシーナが伸びをしているのが伝わってくる。壁が俺を締め付け、温かい感覚につい幸せな二度寝してしまいそう。さすさすとシーナがさすっている感覚が伝わってくる。


 それにしても良い目覚めだ。シーナのフェロモンの原液が直接鼻孔に染み込んでくるような凄まじい寝心地で、俺はここ数日極めて高い睡眠効果を得られていた。ここに居る限りはどん な不眠症でも一発で解決できそうだ。


 また一つ”””高み”””に登ってしまったか……。


 目覚めで少し喉が渇いているが、この桃源郷ならば水分に全く不足しない。壁をすすると頭がぐらぐらするくらいうまい水が飲めるし、ちょっと足りなければ門の外にある通路でツンツンこしこしとしていればあっと言う間に泉が噴き出てくる。

 シーナよ、俺が外に出た後もこれで君の弱点は丸裸だ。そのクールな表情をじっくりと崩してやれるからな。


 そんな企みをしていると天から声が降ってきた。


『シユタ様、その……ちょっと起き抜けのランニングをします』

「おや、またか? 最近のシーナは走ってばっかりだなあ」

『そ、そんなことはありません。ちょっとしたダイエットですから。とにかく、しっかりとしがみついていて下さい』

「はい、了解」


 シーナは最近隙あらば走っている。ダイエットと言っているがこの子の健康に締まったスタイルは良く知っている。本当の目的がダイエットか怪しいものだ。


 シーナが走ると彼女の体が 揺れ、俺も大きく揺さぶられる。しがみついているものの、ずるずると滑ったり、壁にぽよんと当たったり、何とかよじ登ったりして体勢がどんどん変わる。その度に天から『あっ…… あっ……んっ……ふっ、ふっ……ふーっ、ふーっ……あっ!』とうめき声が響いてくる。結局俺よりシーナの方が楽しんでるじゃん。


――


 そんなある日、シーナが”そろそろ”の筈だと申告してきたので、俺は別の通路の出口で待ち構えていた。縮みをさらにかけて、大体一万分の一くらいだ。ここまで小さいなら目視できる。しばらくの間、シーナの数えきれない魅力を想い無聊を慰めていると、


 ふよふよと可愛らしい小さなボールが、俺の目の前を漂っている。


 可愛い……。とても可愛い。本当に可愛い。絶対にモノにしてやる。


「おっ、来たぞ! シーナ!」

『まぁ……! ぜひ、優しく迎えてあげてください。お願いします、お願いします、お願いします。どうかお恵みを……私、もう待ちわびるのは我慢できません……』

「任せておけ。こうまで近づけば絶対に外さん。命中率百パーセントだ」

『……ところでシユタ様が小さいままだと弊害とかは無いのでしょうか?』

「大丈夫大丈夫、俺から出たら元の大きさに戻るように設定してあるから」


 そんなご都合主義に万歳しつつ、ボールに近づく。


 なんと神秘的な姿だろうか。これが、シーナの……。シーナの可愛らしい笑顔が俺の脳裏に浮かぶ。


 俺は素早く、かつ慎重に近づき、 早速手でしはじめる。こっちの世界で妻を貰ってから手でしたことなんて一度もない。一人でのやり方をすっかり忘れているという、贅沢な悩みに直面する。だが、状況が状況なので興奮材料には事欠かなかった。ぶっちゃけ一分もかからない早打ちっぷりだった。


「よし、距離一ミリ未満だ……逃げ場なしだぞ……お、らっ……!」


 この二週間、溜めに溜め込んだものを一気に開放する。


『あっ……この感覚……!』

「シーナ、間違いなく命中だ――ってうぉあ!?」

『シユタ様!?』

「おぼっ、溺れる! そうか、出した後に元の大きさに戻るなら……」


 一気にその量は万倍。倍率にすれば百リットル以上の液体が、俺にもがっつりぶっかけられた。自分のを自分で被るって、ちょっと特殊過ぎて世界がヤバイ。


 後日談だが、シーナが実に嬉しそうな笑顔で報告して来たので良しとしよう。めでたしめでたし。

この掌にあるものが――"心"か……。


次回最終回です。

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