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第五話:ボスドロップ獲得

まじめにゲーム攻略をするぞー

 『デュラハン』撃破の戦利品を山分けしよう。


 ポロポロと大量にドロップしたのでリョウケンが浮かれている。いうほど役に立っていないけれど、前線を維持したのはリョウケンの功績だ。優遇してあげるのが筋だろう。……データで良ければね。


 実を言うとゲームマスター権限でアイテム複製も思うがままだけれど、それを解禁してしまったら面白くない。あくまでチートは最低限に、できるだけルールに則ってゲームを進めよう。その方がやりがいもある。


 さて、リョウケンが獲得したのは『デュラハン』の鎧と槍だ。大振りな二つの装備はリョウケンの主人公補正ステータスを大いに底上げするだろう。俺が魔法の勉強をするには優秀なタンク役が必須だし、これからも彼には頑張ってもらうか。


 そんなリョウケンが警戒心丸出しで戦利品山分けを仕切る。まるで死肉横取りを警戒するハイエナだ。


「おう、シュウタ。鎧と槍には触るなよ。俺が頂くからな」

「ああ、俺には使いこなせないし……うーん、何を貰おうかなあ。お、結構魔法のカードもたくさん落ちたね。リョウケンも何枚か持っておけば?」

「俺はいらねー。どうせ使えねえし。全部アイコに渡していいだろ。へへ、一点物の鎧と槍か……しかも元手は殆なし。これは大儲けだな」

「……こ、これは……!」


 確かにリョウケンが浮かれている、が、一番浮かれているのはアイコだ。


 『デュラハン』がアホみたいに落とした魔法カードを一心不乱にかき集めている。この子も好きだなあ。


 特にアイコのお気に召したのは一枚の特製カード。他のカードは無機質で半透明な青色、赤色などなどをしているのだが、このカードだけは禍々しい不透明な黒。ただよってくる気配が尋常ではない。


「アイコさん、俺こっちの『検討』を何枚か貰うよ。アイコさんはそれがいいの? なんか凄いオーラ? 的なの放っているけれど」

「……え、ええ、これにしておく。これが良い」

「ふーん、アイコがそんなに喜ぶくらいだからすげー魔法なのか? どれ、なんて書いてあるんだよ……諜報?」

「『諜報魔法』、か」


 どこかで聞いたことがある魔法だ。


 この『デュラハン』というボスの設計を担当したのが誰かも推して知るべし。強力で高速移動可能な近接能力に、魔法封じを組み合わせるとは相変わらずユキも性格が悪い。


 これ、一人でクリアするにはかなりの熟練が必要だろう。手持ちの火力魔法を直前まで本気で唱えつつ、『検討』で魔法封じを回避、間髪入れずにもう一度『大火球』、みたいなコンビネーションが必須だ。ちょっと見習い魔法使いにはレベルが高い。当のユキなら軽々やってのけるんだろうけどな。


「よくわからないが凄そうだ」

「なになに? どんな魔法か教えてくれよ」


 俺の肩をグイッと押しのけてリョウケンがアイコの手元に顔を寄せる。熱心な自己アピールもあいにく、アイコは俺の方にカードの説明をしてくれた。


 先程の魔術戦の手練具合を評価したらしい。あんまり恨めしそうに見るなよ、リョウケン。お前もちょっとくらい魔法勉強したらどうだ。


「これ、多分ボスを討ったからだと思うけれど特別製みたい」

「何が特別なの?」

「弾数に制限がない。それなりに間を置いたりしないといけないけれど、これ一枚で何回でも『諜報魔法』を扱える。ただし相応に魔力消費や詠唱の手間はかかる」

「おお……」

「今みたいな戦闘には一回しか使えないかな……でも、補充を気にしなくて良いのはありがたい。しかも、効果が凄まじい」


 そりゃあ便利だ。アイコの手元の説明を読むと、


『諜報魔法:相手の手持ちをすべて確認し、一つ破壊する』


 つっよ。あー、ハンデス系ね。


 もう隠していてもしょうがないけれど……要はこのゲーム『ウッドベル』は、トレーディングカードゲームみたいなものらしい。


 手持ちとかプールとか、微妙に誤魔化しているけれどつまりは手札と山札だ。この『諜報魔法』は相手の手札を確認して好きなものを破壊する。めちゃめちゃ強いカードってわけだ。連発は出来ないようだが、これ一枚で相手の切り札を潰せると考えると破格の性能だ。


 ハンデスに対抗するには、壊される前に使うか、壊すよりも多く手札を持つか。だったっけ。女神ダリアナ様が教えてくれた。基本的に対応手段が少ないからハンデスは強い。


 初のボスで手に入れられたのは上々だ。その辺の知識をうまく使えば、このゲームの攻略もスムーズに行くだろう。後なに教えてもらったかなあ……。最近結構ダリアナと遊んだので、カードゲームの基礎もだいぶ分かっている。


 そうだ、もう一つ強いカード操作があったなぁ。


――


 雲の上にふわふわと横になり、片肘をついてダリアナが勝ち誇る。


 たっぷりある手札を扇のように煽り、ついでに対戦相手の俺も煽る。くっそ、これどうやってブロックしても生き残れねえな。


「Give up yet?」

「投~了~!」

「Good game!」

「また負け……なんでダリアナはいいカードばっかり引いてくるんだ? なにかズルしているだろう?」

「へっへっへ、分かってないなあシユタは」

「なんだよ。だいぶ俺もうまくなっただろう。デッキだってかなりバランス良いはずだ」

「だろうね。そのデッキに致命的な欠陥は無い。何で負けたと思う?」

「運だよ運。事前準備も実際の戦闘も人智は互角だった。山札からランダムに持ってくる以上、運で負けたんだろ」

「惜しい。引いたカードはあたしの方が良かったけれど、それは運じゃない。引いた枚数がずっと多いだろ~」


 ……? 枚数?


「毎ターン一人一枚だろ」

「違うって。それはシユタだけ。あたしは一枚引いて一枚捨てたり、三枚引いて二枚戻したり、戻した後シャッフルしてまた同じく三枚引いて二枚戻したり……アクセスしているデッキの枚数が違うじゃん」

「あー……ドロー系か」

「そーいうこと」

「なるほどな……」

「なあなあ、もう一戦やろーぜー」

「良いけどダリーちゃん今日の業務は?」

「進捗ダメでーす!」

「まだ午前中だろう……」

「あっれ? そろそろ寝ようかと思っていたのに」


 生活リズム崩れすぎだろ……夜型が進んで朝型になっている。せっかく美人なのだから肌は大切にしろよ。


――


 思い出した。ドロー系だ。


 手札をバチバチ操作するのがカードゲームにて最強。究極の真理だ。だから、この『検討』は決してクズカードじゃない。三枚引いて二枚戻すとか、手札の質を高められるし数が減っていない。強い。


 賢いアイコがなぜあっさりとこれらの魔法を譲ったかというと、おそらく本人の資質に沿わなかったから。アイコは『大火球』やその他強化系の魔法に優れる。逆にこっちの手札操作系はあんまり得意ではないのだ。


 そんなアイコが実に嬉しそうに『諜報魔法』を仕舞ったのを見るに、この系統も相性は良かったのだろう。顔には出さない女だが、ウキウキ加減がかつて無いほどだというのはお見通しだ。現実世界の方で。


『こんな貴重な魔法をあっさり譲るなんて、この二人は本当に馬鹿』


『ちょっと褒めれば鼻の下を伸ばすし扱いやすくて助かる』


『シュウタの手持ち操作は結構役に立つから、適当に惚れさせて使い魔みたいにしよう。そうすれば最適な魔法を毎回撃てるから、他の大型魔物も楽勝――』


 ……言いたい放題である。正確には思いたい放題。


 アイコさんって結構毒あるなあ。そういう女の方が気分良くゲーム攻略できるし良いけれどね。プライド高い女って最高。


 ただ、ちょっと舐められすぎるのは癪なので軽くお仕置きしておこう。いつもみたいにアイコがこちらに軽く微笑んで、腹黒い思いを完全に隠したまま話しかけてくる。のを狙い撃つ。


「今回はありがとう、シュウタくん。シュウタくんのおかげでなんとか勝てたね」

「どういたしまして。大したことはしていないよ」

「謙遜しないで。本当にすごかっ――っ♥♥!?♥」

『スイッチオン、ぽちっとな』


 にこり、と計算され尽くした微笑みが完成する直前、現実から電子世界への触覚などなどをフルオープンにする。


 すると元々現実世界ではたっぷりと駆け巡っていた諸々の快楽が神経伝達オン。脳内に色々楽しい分泌物が駆け巡る。ゲーム世界の方のアイコにも快感が押し寄せた。怪しまれないように一瞬だけ。その一瞬でもアイコの微笑みを崩すには十分だった。


「あ”っ……お”♥」

「アイコさん、大丈夫?!」

「っ?! ……?!」


 せっかくの白く美しく整った顔なのに、白目を向いて鼻穴が大きく開いて豚みたいになっている。鼻からも口からも水を垂れ流しているのが面白い。無様すぎて笑いを堪えるので精一杯だ。ちゃんと心配そうな顔を出来ているだろうか。


「ふーっ……! ふーっ……! ふーっ……! くっひ、ふーっ……!♥」


 おー、耐えてる耐えてる。流石プライドが高い女だけあって、下賤な男どもに弱みを見せるのは許容し難いのだろう。


 俺を向いたお顔の方は手遅れだけれど、下半身の方は異変を俺たちに悟られないように必死に堪えている。内股中腰になって子鹿みたいにぷるぷる震えているのが可愛い。


 武士の情けだ。強制チートでアイコの股の開栓をするのは五秒で勘弁してやろう。ぷしっ、ぷしっと水漏れしているのも気が付かないふりをしてやる。


 VRMMOって面白いなあ。現実の方でアイコの素晴らしい肉体を抑えている以上、現実に勝るお楽しみは無いと思っていたがそれは勘違いだった。現実では出来ないこともたくさん楽しめる。


「ふー……だ、大丈夫、ちょっと目眩がしただけ」

「そっか、歩けそう? 何か歩行を補助する魔法があったかな……」

「大丈夫! 本当に大丈夫だから!」


 支えを申し出ると必死の形相で拒絶された。腰回りのローブがじっとり湿っているけれど大丈夫なら大丈夫ですね。


「? どうしたんだお前ら?」

「べ、別に、ちょっと新しい魔法のことで色々考えていたの」


 おや、さっきは目眩がしたと言っていたのに言い訳が変わっていますね。これ面白いな、機会があったらもっとやろう。


 ローブの湿り気をどうにか誤魔化すアイコを心配するふりして、俺はエレナの街への帰路についた。


 ……ところで、ほんの一瞬だけフィードバックをオンにしたらこうなっちゃうのか……。アイコ本体の方が現実世界で目覚めたら、ちょっと大変なことになってしまうかもしれないな、と他人事のように俺は考えていた。

君の脳内物質をどばどば流す系RPG

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