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並んで川沿いの道を歩く。いかだを止めている辺りに、数人の大人の姿があった。何度も試行錯誤を繰り返したいかだは、中学生の子どもが作ったと思えないほどだ。いかだを囲み、何か話していた大人たちの間から、つなぎ姿の二人が進み出る。そして、いかだを川へ押し出した。
「何してんだよ!」
鞄をその場に放り投げ、子どもたちは走り出す。いかだはゆっくり流れに乗った。
「放せ!俺たちのいかだがっ!」
そのまま川へ飛び込もうとした陸を、大人が捕まえる。翔太郎も恭平も、大人の力で押さえつけられていた。
「放せよ!何で、こんなことをするんだ!」
「教育委員会が決めたことだ。子どもは子どもらしく、危険のない遊びをしなさい」
悔しい。悔しい。悔しい。何が一番悔しいかというと、理不尽な理屈に対抗する力を持たないことだった。
「俺たちは真剣だ。遊びなんて、軽い気持ちじゃない」
流れる涙を拭うこともままならぬまま、声の限り叫ぶ。遠く離れていくいかだが、涙で滲んで見えない。
「あきらめなさい」
その言葉が、呪詛のように、子どもたちの胸に突き刺さった。いかだは、子どもたちを乗せず、単身遠い海原を目指す。