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それから、一分と経たないうちに、恭平の目論見通りに、陸は目を覚ました。ゼイゼイと肩で息を切らしながら、赤い顔で恭平を睨みつける。それと比べ、恭平は爽やかだ。
「やぁ、目が覚めたかい?」
と、嫌みなくらい上機嫌に微笑んでいる。翔太郎は、二人の間でオロオロしていた。
「いっつも、いっつも、もうちょっと優しく起こしてくれよ」
腰をかけている椅子を引かれたこともあった。反対に、机を動かされたことも。机の上に何も乗ってないからといって、水をかけられたこともあった。
「寝ている方が悪い」
そう言われてしまえば、そうなのだが。
「納得できねぇ」
王子様ならぬ、御姫様のキスとまでは言わないが、もう少し優しく起こしてもらいたいものだ。
「そこの馬鹿三人組。柚木先生が呼んでいたよ。何、悪さしたの?」
「んなことねぇよ。ちっ、たいぎいなぁ」
恭平に言葉で勝つことはできない。声をかけたクラスメートに、八つ当たりする。
「一つ言っておくけど、馬鹿は陸だけだから」
「一緒にされたくはないね」
呆れ気味の恭平に続き、翔太郎も苦笑混じりに言う。陸はますますふて腐れてしまった。