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窓の外に広がる、青い空。今すぐ、外に走り出したい。
「一六一四年.大坂冬の陣が勃発した。
これは、年老いた徳川家康が早く天下統一を実現したかったために、方広寺鐘銘事件を口実として、大阪城を攻めたことによって始まった。だが、豊臣秀吉自慢の大阪城は中々落すことができない。その時、家康は思い出したんだ。天下一の大阪城といえども、堀を埋めてしまえばただの裸城だって秀吉がいっていたことをね」
だが、今は授業中。どんなに願っても、この蒸し暑い教室からも、このたいつくな授業からも逃げ出すことは叶わなかった。その上、授業を行う教師の声は、単調で、子守歌のようだ。いくつもの頭が下がっている。
「早く戦を終わらせるために、家康がとった行動は、天守の砲撃。天守には、秀頼や淀君がいたからね。
その結果、脅えた淀君は大坂方に不利な和睦を受け入れてしまったんだ。
和平の条侏は、本丸を残して二の丸、三の丸を破壊すること。外堀を埋めること。織田有楽斎を始めとする数名のものの処罰だな。だが、徳川方が内堀も埋めてしまったために、夏の陣が勃発した。
今日はここまで。次回は、夏の陣から始める」
「起立、礼」
「ありがとうございました」
授業終了のチャイムが鳴り、翔太郎と恭平は窓際の席へ向かう。陸の席だ。真っ白いノートに顔を埋め、気持ちよさげに眠っている。
「陸、陸」
翔太郎が陸の体を揺するが、熟睡しているのかピクリとも動かない。そんな陸を見て、恭平の目がキラリと光った。
「きょっ、恭平!」
翔太郎が慌てて声を上げたのは、恭平が陸の顔を手前に向け、その鼻を摘んだからだ。
「大丈夫だって。苦しくなったら、目が覚めるだろ」
それは、新しい玩具を見つけた子どものようだった。