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十九××年
バシャバシャと水を掻き分け、少年たちはいかだを押していく。トム・ソーヤのように、いつかこのいかだに乗って大海原に漕ぎ出してみたい。それが、若い証拠のような夢だった。
「そろそろ、いいんじゃねぇ?」
「じゃあ、俺一番!」
「あっ、陸!ずるいぞ!」
陸と呼ばれた少年が、ひょいと軽い動作で、いかだに飛び乗る。
「おー。いい感じ。翔太郎と恭平も来いよ」
「だってさ。翔太郎、先行くな」
「ちょっと、恭平!僕も」
恭平と呼ばれた少年に続き、翔太郎と呼ばれた少年もいかだに上がる。三人乗ったいかだは、あまり広いとは言えなかったが、それでも、各々が座るゆとりはあった。少年たちを乗せたいかだは、町の川をゆっくり下っていく。
「やっぱ、マストは欲しいよな」
「うんうん。後は、オール。棹でもいいや」
「じゃ、そういうことで、第一回試運転は終了。帰るぞ」
「おうっ!」
少年たちは、次々川に飛び込んだ。それから、川原と反対側に並び、そろっていかだを押す。
それから、一時間後。汗だくになった少年たちが、川原にいた。翔太郎がいかだを引き、陸と恭平が押している。
「……なぁ、二人とも…。陸でも、大丈夫なよう……車輪もつけような」
誰も、異論を唱えなかった。