滋賀県出身者がポテトチップスふなずし味を実食してみた
皆さん、今年ももうすぐで終わりですね。
年末年始といえば食べ物も独特です。
年越しそば食べながら紅白歌合戦を見て、初詣の神社で甘酒飲んで、家に帰ればおせちにお雑煮。どれもこれも美味しそうですね。
……。
…………。
喝だ!(張本さん風に)
そんなジョーシキにとらわれてどうする!
年末年始だからー、イベントだからー、じゃねえよ。世は21世紀、社会的束縛から解き放たれ個人の自由が尊重される時代ですぜ!
自分の食うモノくらい、自由に選ばせろってんだ!
そんな何色にも染まらず、俺は俺色で突き進むぜ、てやんでいべらぼうめ!
……とまあ、仕事の関係で年末年始も平常運転な作者の恨み節は置いといて。
私の故郷の滋賀県は知名度は低いながらも、数多くの名物料理があります。
近江牛や湖魚の佃煮はもちろん、湖北地方の鯖そうめん、近江八幡のでっち羊羹や赤こんにゃくなど。特にたねやとクラブハリエは全国的にも有名ですね。
しかしインパクトでこれに勝るものはありません。
そう、鮒ずしです。
鮒ずしと聞いて、握り寿司の具にフナの身を載せたものを想像したあなた。そんな生易しいものではありません。
鮒ずしは鮮魚の身を使うのではなく、捕まえた魚を樽の中で何ヶ月も発酵させた、いわゆる『なれずし』なのです。
具体的には何ヶ月も塩漬けにしたフナの身に、今度はご飯を詰め込んでもう一度漬け込んでさらに数ヶ月、長ければ3年も漬け込んで乳酸発酵を進めることで完成します。
その味は言うならばチーズ。それもかなりクセの強いやつ。においも強烈で、人によっては目にした途端部屋を飛び出てしまうほどです。
しかし蓼食う虫も好き好き……いや、需要と供給が世は実にうまくできているもので、酒のアテやお茶漬けの具に、実にぴったりなのです。食通からは滋賀県の珍味として有名ですね。
ですが近年はそんな鮒ずしも滅多に食べられなくなっています。かつてはそれぞれの家庭で作られていましたが、材料となる琵琶湖固有種のニゴロブナの漁獲高の激減などを受け、流通量は限られています。地元スーパーでも一匹3000円くらいと、高値でしか売られていません。
そんな近江のソウルフードを途絶えさせてはならない。滋賀県は思い立ち、そして行動しました。
若者にも伝統の味を、手軽な方法で、親しみを持てるようこちらから寄り添って。
滋賀県にしてはなかなか考えたものです。交付金使ってムダにでかい風力発電施設(一基だけ、最初回すのに電力が必要)を建造した時とは違い、期待が持てます。
その結果……
こんな代物作りやがりました!
昔からどうしてこうも元のコンセプトと結果がずれていくのか。近江商人の『売り手良し、買い手良し、世間良し』の三方良しの精神はどうした!(わからない人は拙作『俺が歩いたら草も生えない!? 近江商人は天下を取る』を読んでください)
……いやいや、でももしかしたらこれ、美味いかもしれませんよ。
何せ商品開発は天下のカルビーです。今年はジャガイモ不足とか報道されてた中で開発した新商品、よほどの自信作なのでしょう。
一見すればジンギスカンキャラメルにも匹敵するミスマッチ感ですが、そこをあえて冒険した滋賀県。そんな滋賀県の漢気に、今は大阪南部在住とはいえ滋賀出身者である私が応えないわけにはいかないでしょう。
ええ、食ってやりますとも!
というわけで近所のイトー〇ーカドーで、他のポテチが軒並み100円オーバーの中、88円という低価格で大量に売られていたのを購入してきました。
……既に嫌な予感しかしません。
そんなこんなで帰宅、いよいよ実食です。
なんだか絞首台に上る死刑囚のような気分ですが、もう後には引けません。私だって男です、覚悟を決めます。
ですが明日も仕事です。鮒ずしポテチ食ったんで休みます、はあまりにも情けない。
なのでもしもの時のために。
胃薬も準備OK! これで安心です。
え、もし不味かったらどうするって?
大丈夫、こちらにも秘策があります。
ポテチといえど鮒ずし、酒と一緒ならちったあ美味く感じるハズ!
もし不味くても酔って味が分からなくなれば残さず食べきれますしね。
では、いざ尋常に……。
OPEN!
見た目は普通ですが……。
うお!? いきなり鼻を突くツーンとした匂いが漂います。酸味の強いチーズのような、あの感覚です。
人を選ぶにおいですが、まあこれは予想の範疇。
さて、では。
いただきまーす!
パリ、パリ……
あれ?
パリ、パリ、ごくん。
これって。
パリ、パリ、ごくん。
普通にいけんじゃね!?
酸味はやや強いものの嫌らしいほどではなく、スナック菓子として十分許容範囲です。ポテトのうま味とチーズにも似た酸っぱさがほどよくミックスされ、いい感じに仕上がっています。なんとなくですが、ハッピーターンのあの粉を彷彿させる風味です。
私は漬物やキムチなどすっぱい食べ物が苦手なのですが、その私でもバリバリ食べられるほどクセは抑えられています。
しかしなんということでしょう、予想が大いに外れてしまいました。
私は腹下してあわよくば翌日の仕事お休みをいただこうかとも画策していたのに、これでは企画として一番つまらなくなってしまったではありませんか!
どうしましょう。不味くて当然と思って挑んだので、もし美味かったら、の場合のネタがありません。
しかもこれ
酒にめっちゃ合います!
さすがは和製チーズこと鮒ずし、クラッカーに載せたブルーチーズの感覚でぐいぐいいけます。
酸味と酒の苦みを交互に楽しめるので、手が止まりません。火照った喉にパリパリのポテチが響いて、次へ次へと酒を飲ませてくれます。
赤ワインとも合うのではないでしょうか?
いやぁー、酒とポテチで見る『ブレンド・S』は最高ですな!
麻冬さんの可愛さもいつもより5割増しに感じます。
そして……
完食!
ふう、深夜12時過ぎにこんな物食べてはメタボリックシンドロームまっしぐらなんですが、職場の健康診断で「もっと体重増やせ」と言わてるのでまあ大丈夫でしょう。不安なのは翌日仕事なのに酒飲んでることです。
ただし、やはり薄まっているとはいえクセの強い鮒ずし。60グラム分をひとりで食べるのは飽きてきます。
友達同士で酒盛りする時、普通のポテチに飽きてきたとき、是非お求めください。想像以上の食べやすさに、驚かれることでしょう。
結論:滋賀県にしてはなかなかに良い感じでした。あと、麻冬さんかわいい。
ふっふっふ……。
誰がこれで終わりと言った!
2袋目も買ってるもんねー!
なお、この商品11月から発売されており売り切れ次第販売終了の限定販売だそうです。じゃあ、スーパーで見たあの大量の袋は……あっ(察し)
2018年1月21日、続編『滋賀県出身者が今度はポテトチップスでふなずしを食べてみた』を投稿しました。
是非エッセイ集からそちらもお読みください。