傍にいたい
「スマホ?」
「そう、スマホ。遠くにいる人と意思疎通をはかったり、写真を撮ったり、音楽を鳴らしたり、いろいろできる機械なんだ」
「そんな素敵な機械があるのね!一体どこで手に入れたの?ディーネ王国のガレ場かしら?」
「ガレ場?」
「あれ、知らない?ディーネ王国の西にある採掘場のこと。遺跡とかがあってそこからガラクタが採掘できるからガレ場っていうの。今使われてる機械のほとんどはガレ場からでてきたものよ」
「あ、ああ、そうそう、そこだよ」
圭人はとりあえず話を合わせることにした。どこで手に入れたと聞かれれば、それは近くの家電量販店で、と答えるのが正解だったが、まさか真実を言うわけにもいくまい。異世界から来たことはなんとなく避けたほうがいい話題に思えた。そもそも信じてもらえると思っていない。
「そんなすごい機械を見つけるなんてケイってとっても運がいいのね!」
「いやぁ、それほどでもないよ」
頬を上気させて楽しそうに話すクラロワにさきほどまでの固さはない。盗賊と対峙していた時、クラロワは明らかにいつもとは違っていた。途中まで黙っておとなしくしていたのは盗賊達の本質を見定めるためだと言っていたが、彼女の見定めた結果の対応は厳しいものだった。はっきりとした拒絶、悪を悪として排除せんとした確固たる姿勢はいつもの柔らかなクラロワとは違う。彼女の正義感は本物だった。一国の王女としての資質か、毅然として振る舞うクラロワをとても美しく感じた。
クララはすごい。あんな盗賊達を目の前にして、刃物を向けられて俺だって怖くて震えていたのに、クララは盗賊達が本当に悪かどうかを冷静に見極めて判断していた。その上で、悪と分かった盗賊達を自らの手で粛清するだけの力も持っていた。俺と変わらない年にして、随分と出来た人間である。人を見抜き、そして裁く。彼女はそれが出来る人間なのだ。
藤色の髪からのぞくクラロワの横顔にはまだあどけなさすら感じられ、その美少女が人の上に立つ力を持つ人物とは見えない。しかし彼女の碧の瞳にははっきりと、澄んだ意志を感じられた。これが王女という立場の人間なのか。圭人は驚きと尊敬をクラロワに覚える。そしてまた、その姿を自分が間近で見られることに嬉しさを感じるのだった。
「クララ」
「なに?ケイ」
「クララってすげーよ。俺尊敬する」
「なぁに急に。恥ずかしいじゃない」
圭人は決心する。彼女のそばでずっと世界を見ていきたいと。彼女の目線で見る世界の美しさを知りたいと。
「俺、ずっとクララのそばにいていいかな」
「魔法師なんだもの、そばにいてくれないと困るわ」
圭人の告白はクラロワによって確かに聞き届けられたのだった。ずっと、の意味がどこまでを意味するかもわからずに。




