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異世界に家ごと転生した話  作者: なずく
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突然の襲来

ディーネ王国からフラウ王国への帰り道、事件は起こった。圭人はクラロワと二人で馬車の中楽しく断章していた。シュペッツレの店で会った神秘的な女性のことが忘れられなく、そのこともクラロワに話したら、私も会ってみたいわ、と言っていた。


がたがたと揺れる馬車の中、窓の外にはひたすら森と街道が続く。生い茂る緑は目に鮮やかで、新鮮な森の空気を吸いたい気分だった。しかし、街道が整備されてはいるものの、森の中には自然生物が住んでいるらしく、危険だと教わった。何事も野生は怖いというわけだ。そんな中がたりとひと際大きく馬車が揺れて、進みが止まった。なにかあったのだろうか、と外に出た圭人たちに事件は起こった。


夕方になり少し赤く染まった空は薄暗い。森に左右を囲まれた道で、見渡すかぎり他の馬車はいない。そして目の前に立っていたのは十数人の人。馬車を取り囲むように立つ人々は皆、鋭い眼光でニヤニヤと笑っていた。明らかに不信な人物だ。


「なんだお前ら!」


ドラゴンを傍目で見たが、薬で眠らされているようだった。脇に立つ男が注射針を抜いているのが見える。圭人の精一杯の威勢にもこたえず、十数人はじりじりとこちらに詰め寄ってくる。


「見てわかんないかー?盗賊だよ盗賊」

「いい車持ってるじゃねぇか、きっとほかにもいいもん持ってんだろ?」


男が腰から取り出したのは闇にぎらつく刃物。その切っ先がゆらゆらと圭人に向けられた。怖い。こんなこと初めての経験の圭人は、周囲の圧迫感と刃物に冷や汗を流していた。心臓がドクンと跳ね上がる。圭人はとっさに馬車の中に残るクラロワのことを考え、入口を庇うようにして盗賊たちと対峙した。周囲を見渡すも、助けてくれる人はだれもいない。


「どうしたのケイ?」

「クララ!来るな!」


圭人の静止に、だが遅くクラロワが馬車から顔を出すと、盗賊達は一層笑みを深めていやらしい目つきでクラロワを見回した。


「おっ、いい女発見~」


近づいてきた盗賊にあっさり馬車から引きずり降ろされてしまうクラロワ。周囲を見て一瞬で察したのか、表情の固まった彼女に舌なめずりするように盗賊が顔を近づける。

「クララに近づくな!」


「おっと、落ち着いてもらわないと困るよ」


首の前に刃物が出される。ぎらりとしたそのきらめきに圭人はごくりと息を飲んだ。状況は最悪だ。周囲を囲む盗賊達は皆刃物をちらつかせている。こちらは圭人とクラロワの二人きり、武器もない。数でも圧倒的に不利で、この状況を打開できるような強さは圭人には持ち合わせていない。元の世界でも喧嘩なんてしたことがない圭人にとっては、目に見える暴力を前になす術がない。


「お金なら持ってないわ。だから放してくれる?」


クラロワは張り詰めた声で問う。がははという笑い声が返され、盗賊の中の長のような男が近づいて笑った。

「金がなくても体があるだろ。連れてけ」


その盗賊の一声で圭人とクラロワは両腕を周囲にいた盗賊達に掴まれた。刃物で脅され身動きができなくされる。


「おい!どこに連れてくつもりだ!」


圭人が吼える。しかし盗賊達は下品な笑い声をあげるだけで答えはしない。無理やり歩かされて、森の中を進んでいく。なんども抵抗を試みたが日ごろ引きこもっていた圭人に盗賊を振り払うだけの筋力はなかった。


その小屋は森をずっと抜けた先にあった。木々に隠れるようにして建つ小屋は沢山の武器が立てかけられ物騒な雰囲気を醸し出している。荒々しく開けられた扉に、押し込むようにいれられた圭人とクラロワは、どさりと床に投げ出された。


「俺たちをどうするつもりだ」


さっきからクラロワは一言も発していない。押さえつけられていて顔がよく見えないが、きっと怯えているのだろう。無理もない、女の子が、こんな盗賊にさらわれるなんて怖くてたまらないだろう。クラロワのことが心配だが、まずはこの状況を打開しないといけない。敵は十数人もいる。隙をつく、というのはなかなか難しいものがある。考えろ、考えるんだ俺。



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