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異世界に家ごと転生した話  作者: なずく
12/22

交わした視線

「ロシェってその訛り、どこ出身なんだ?」

「北の方アルネ。ディーネ王国との境目の地域アル」

「へぇ、フラウ王国でも地域によっては訛りとかあるんだなぁって感慨深いな」

「ケイトはどこ出身アルか?」


圭人は予期していなかった質問に詰まる。買い物の帰り道、圭人とロシェはゆっくりとお城への道を辿っていた。のどかな日常、プライスレスだ。

「ええっと、東京?」

「トーキョ?聞いたことない名前ネ。どの辺ある?」

「えっと、東の方?」

「海の方アルか?てっきりシモワ辺域かと思ったアル」

「みんなそれ言うんだけど、なんでシモワ辺域なんだ?俺そんなくたびれて見える?」


圭人の問いかけに、ふーんと考え込んでしまうロシェは金色の髪を撫でつけながら口を開いた。桜色の唇が愛らしい。


「やっぱり髪の色アルネ。黒色なんて見たことないアル。だからシモワ辺域とかの辺境で生まれた混血なのかと思ったアル」

「混血?」

「種族の混血ネ。ヒューマンとティアマンの混血とかそういうの。そういう混血は突然変異みたいな見た目になること多いネ」

「混血って珍しいのか?」

「異種族で結婚すること、まず無いネ。国で暮らす分にはあまり異種族と関わらないネ。異種族が共存してるのシモワ辺域くらいネ」

「だから皆俺のことをシモワ辺域出身だと思うのか」


うーんと圭人は考え込んだ。もとの世界ではハーフは目立つが珍しいものではなかった。ここの世界ではなかなか珍しいものらしいがそれは異種族があまりにも見た目に差異があるからなのかもしれない。それにしてもスラムのような場所出身に思われるって結構不利益なレッテルじゃないか?これからの生活大丈夫だろうか。


「私はケイトの髪の毛いいと思うけどネ」


ロシェがふわりと笑う。口調に反してその表情はぶっきらぼうではなかった。大きな緑の瞳が圭人を捉える。翡翠色の水晶のようなそれは美しく澄んでいて、圭人の心に真っすぐ差し込んでくるようだった。

「あ、ありがとう」

女の子にこんなに真っすぐに褒められたことはないのでどうにも照れてしまう。今まで引きこもり気味の生活をしていた圭人にとって、こんな風に誰かと関わることはとても新鮮だった。異世界でも圭人に優しく関わってくれる人がいる。それのなんて幸運なことだろう。クラロワも、ロシェも誠実に圭人と向き合ってくれる。

「今の、秘密ネ」

そう言ってウインクしたロシェは、城に着いたと同時に倉庫へと去っていった。なんだそれ、なんだそれ。圭人は思わずドキドキした胸を押さえる。こんなの反則だろ!




圭人は一日の仕事を終え家に帰っていた。一日働いた後の自宅は天国のように快適だった。暑ければいつでも涼しい風を送れるクーラー、寂しい空間を埋めてくれるテレビ、労働して疲労の溜まった体を包み込んでくれるソファー。どれもこの世界にはない最高の代物だ。ソファーはあるかもしれないけど、使用人の圭人はまだお目にかかっていない。

「はぁー一日労働したあとのコーラは最高だぜ!」


喉が渇いたらキンキンに冷えたコーラを飲むのが定番だろう。ソファーに沈み、片手でテレビをつけながらコーラをぐっと飲み込む。冷蔵庫にたくさんストックしておくタイプの引きこもりで良かったとつくづく思う。いくら家電が使い放題とはいえ、物資は減っていく。家にある食料ももう半分は使ってしまっていた。これから生きていくには、街にでて現地の食料を買って食べるしかない。見たところ、初めて見るような食べ物がいくつも見受けられたが、きっとなんとかなるだろう。圭人の家事スキルは並以上だ。

「あ、ティッシュ切れた」

備蓄備蓄、と押入れへと足を伸ばしたその時、カタンと音がした。

音の方向に圭人は顔を向ける。なんだ今の音。

それは玄関のほうからだった。そして聞きなれた音だった。

圭人は思わず玄関へ行き、そして確認する。


「あった」


圭人はしゃがみ込んで驚いていた。目の前の、郵便受けに。

手紙が入っていた。中身はなんてことない、ただのDMだ。そんなことよりもだ。


なぜ手紙が届いている?


もしかして、と玄関の鍵を回してみたが、予想通りには行かず鍵は開かないままだった。

しかし郵便受けには手紙が届いている。もといた世界の、手紙だ。日付をみても、異世界に旅立った日の後の日付になっている。どういうことだ、と圭人は頭をひねった。


家ごと異世界に転生した。それは真実だ。そしてなぜか電気が通っていて家電が使える。それも真実だ。そして現実世界の手紙がオンタイムで届いた。それも真実だ。ということは。


「もしかして、玄関の外は元の世界のままなのか?」


そう考えると説明がつく。開かない玄関の理由も。玄関が現実世界と異世界をつなぐ境目になっていて、玄関の向こうは現実世界。家の中から外は異世界。それも家の中から見た時の視点でだ。難しくややこしいが、異世界にある家を異世界の、外から見た時、つまり街から帰ってくるときに見る圭人の家は異世界にあり、玄関もまた異世界についている。しかしその玄関は開かず、窓からしか出入りできない。

家の玄関は異世界と現実世界の境目になっていて、現実世界で圭人の家が存在するとしたら?

届けられた郵便物は郵便受に入れられ、異世界にある圭人の家に届く。


しかし、テレビのニュースで見た限り圭人の家は跡形もなく消えたはずだ。どういうわけだろう。わからない。

圭人は頭を抱えて、そして考えるのをやめた。電気が通っているのを深く考えなかったのと同じように現実だけ受け入れればいい。理由なんてわからなくても、真実は存在しているのだから。だから。


「これから毎日Amaz〇nしよ」



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