灰は灰に、塵は塵に(1)
パーティを分断してから、どれほどの時間が経過したのだろうか。
暗闇の中で何日も探索を行っていたカーリャ達一行は、時間の感覚を失ってしまい正確な日付がわからなくなっていた。
単純に寝て起きた回数だけで判断するならば、おそらく今日は八日目の朝だ。
既に昨日の夜の時点で玄武の塔からは脱出をしており、今は都市の中央にある巨大なドームへ向けて移動中である。
青竜が飛んでいればアニヘイムに呼んでもらって、あれから何日経ったのかを聞けるのだが、その青竜も姿を見せていない。
今はふたつの塔の起動を見守っているのか、災いと交戦でもしているのか……いずれにしろ、合流することが先決だ。
ドームは水路に囲まれていて、そこから十二本の大通りが放射状に延びている。
大通りにも水路があるため水の補給には困らないが、保存食の残りが心許無く、あと二日もすれば底を尽きてしまうだろう。
つまりドームや災いの探索も二日が限界ということだ。
そう考えると、一行の足取りも自然と早まっていった。
ドームに到着した後は、水路に沿って外周をまわることになる。
落ち合う場所はドームの東側だ。
アニヘイムによると、朱雀の塔が起動したのは四日以上前だという。
きっと三人とも、待ちくたびれていることだろう。
向こうでは、どんな事が起きたのだろうか。
こちらよりも大変だったのだろうか。
自分たちには、説明しなければいけないことが沢山ある。
玄武の塔が、生体を保管する塔であったこと。
“戦士”白虎=アニヘイムと同行していること。
“知恵者”玄武=ベソートが、おそらく災いという存在によって殺されていたこと。
謎めいた黒ずくめの剣士に出会ったこと。
他にも“守護者”青竜=カイヤナイト、“力の象徴”朱雀=スペッサルティンや、“大賢者”であり管理者でもあるマナ=ウェルが、この都市で大きな役割を担っていること。
何よりもルナールが、管理を代行するラダーという存在であったこと。
そして“役割を果たす”ために現れたザナ。
この時の一行は、とにかく早く伝えたいという気持ちでいっぱいだった。
これらはすべて、自分たちの探索の成果だ。
きっとリアやレシーリアなら、これからどうすべきか最適の答えを導いてくれるだろう。
そして、無事に役目を果たせた自分たちを労ってくれるはずだ。
一行はそんな淡い期待を胸に、リアが待つ約束の場所へと到着した。
柔らかい弧を描く水路の縁に、片腕の剣士が膝を立てて座っていた。
不思議なことに、リアの姿しか見当たらない。
足元にはリュックや小さな革袋が、幾つも置かれていた。
どう見ても一人分の荷物ではない。
おそらく、レシーリアとユーンの分なのだろう。
二人は別の場所にでもいるのだろうか。
リアがこちらの様子に気づくと、僅かに笑みを浮かべてくれた。
「リアさん!」
たまらずカーリャが手を上げて、笑顔を返す。
帰ってきたよ、こっちは無事だよ、とすぐに伝わったようだ。
リアは優しく頷いて応えていた。




