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満月のハナシ  作者: Ni:
白い月 さまよえる白亜の都市

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88/110

灰は灰に、塵は塵に(1)

 パーティを分断してから、どれほどの時間が経過したのだろうか。

 暗闇の中で何日も探索を行っていたカーリャ達一行は、時間の感覚を失ってしまい正確な日付がわからなくなっていた。

 単純に寝て起きた回数だけで判断するならば、おそらく今日は八日目の朝だ。

 既に昨日の夜の時点で玄武の塔からは脱出をしており、今は都市の中央にある巨大なドームへ向けて移動中である。

 青竜が飛んでいればアニヘイムに呼んでもらって、あれから何日経ったのかを聞けるのだが、その青竜も姿を見せていない。

 今はふたつの塔の起動を見守っているのか、災い(イーヴォル)と交戦でもしているのか……いずれにしろ、合流することが先決だ。


 ドームは水路に囲まれていて、そこから十二本の大通りが放射状に延びている。

 大通りにも水路があるため水の補給には困らないが、保存食の残りが心許無く、あと二日もすれば底を尽きてしまうだろう。

 つまりドームや災い(イーヴォル)の探索も二日が限界ということだ。

 そう考えると、一行の足取りも自然と早まっていった。


 ドームに到着した後は、水路に沿って外周をまわることになる。

 落ち合う場所はドームの東側だ。

 アニヘイムによると、朱雀の塔が起動したのは四日以上前だという。

 きっと三人とも、待ちくたびれていることだろう。

 向こうでは、どんな事が起きたのだろうか。

 こちらよりも大変だったのだろうか。

 自分たちには、説明しなければいけないことが沢山ある。



 玄武の塔が、生体を保管する塔であったこと。

 “戦士”白虎=アニヘイムと同行していること。

 “知恵者”玄武=ベソートが、おそらく災い(イーヴォル)という存在によって殺されていたこと。

 謎めいた黒ずくめの剣士に出会ったこと。

 他にも“守護者”青竜=カイヤナイト、“力の象徴”朱雀=スペッサルティンや、“大賢者”であり管理者でもあるマナ=ウェルが、この都市で大きな役割を担っていること。

 何よりもルナールが、管理を代行するラダーという存在であったこと。

 そして“役割を果たす”ために現れたザナ。



 この時の一行は、とにかく早く伝えたいという気持ちでいっぱいだった。

 これらはすべて、自分たちの探索の成果だ。

 きっとリアやレシーリアなら、これからどうすべきか最適の答えを導いてくれるだろう。

 そして、無事に役目を果たせた自分たちを労ってくれるはずだ。

 一行はそんな淡い期待を胸に、リアが待つ約束の場所へと到着した。

 柔らかい弧を描く水路の縁に、片腕の剣士が膝を立てて座っていた。

 不思議なことに、リアの姿しか見当たらない。

 足元にはリュックや小さな革袋が、幾つも置かれていた。

 どう見ても一人分の荷物ではない。

 おそらく、レシーリアとユーンの分なのだろう。

 二人は別の場所にでもいるのだろうか。

 リアがこちらの様子に気づくと、僅かに笑みを浮かべてくれた。

「リアさん!」

 たまらずカーリャが手を上げて、笑顔を返す。

 帰ってきたよ、こっちは無事だよ、とすぐに伝わったようだ。

 リアは優しく頷いて応えていた。

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