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満月のハナシ  作者: Ni:
白い月 さまよえる白亜の都市

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塔の役割(4)

 塔の探索は難航していた。

 ただ階段を登るだけなら、どれほどこの塔が高くとも半日で最上階に到達できるだろう。

 しかしアニヘイムには、各階層で確認しなければならない項目がいくつもある。

 本来アニヘイムに付き合う義理はないのだが、この塔の異常を確認し解決しないことには都市が起動せず、結果的に一行も脱出できない。

 そんな理由もあり、一行はアニヘイムと共に一層ずつ見て回ることになってしまっていた。


 螺旋階段からは、各階層ごとに外側へ向けて通路が伸びている。

 通路の先には鉄に似た材質の扉があり、アニヘイムにしか開けることが出来ない不思議な魔法が施されていた。


 一層目から三層目までは、価値があるのかどうか判別できないような道具が保管されている倉庫だ。

 そこでは、あるべき道具が損失していないかを調べて回った。

 アニヘイムには欲しい物があれば持ち帰っていいと言われていたが、あまりに数が多すぎるため、その全てをルーの鑑別眼に頼るわけにもいかず、今は無視しようとカーリャが判断をした。


 四層目からは、塔の外周をぐるりとまわるドーナツ状の構造となっていた。

 部屋をわける壁もなく、まるで弧を描く広い通路のようだ。

 窓でもつけてくれれば気も晴れるのに……とカーリャが愚痴をこぼすと、アニヘイムが少し困ったような表情を浮かべて笑った。

「ここは住むためじゃなくて、保管を目的とした塔だから。物によっては、光が当たると劣化するのよね〜。もう少し上に行けば“面白いモノ”が見れるわよ〜」

「面白いモノ?」

 カーリャが首をかしげる。

「十層目までは記録の書庫だから、つまらないのよね」

 たしかに彼女の言う通り、壁一面に備え付けられた本棚には隙間なく書物が並んでいる。


「ここから十層目まで……?」

 この全てが何かを記録した物ならば、この塔の上では途方もない研究がされているはずだと、ルーは言葉を失ってしまった。

 月魔術学院の塔でも、記録の書物だけでこれほど棚は埋まらないだろう。

 探究心の高いルーは、できれば何冊か目を通したいところだったが、今はその時間もない。

「キュゥ」

 ルーの首元に巻き付いていたルナールが、小さく鳴き声をあげる。

 見れば、何かを感じ取ったのか、キョロキョロと頭を動かしている。

「大丈夫、何もいないよ」

 ルーはそう呼びかけると、ルナールの喉を優しく撫でてあげた。

 長く暗闇の中にいるせいで、狼に襲われた夜のことでも思い出したのだろう。

「記録の書庫は、荒らされた跡がなければ大丈夫だから。どんどん上に行きましょ〜」

 アニヘイムが、元気に右手を振り上げる。

 彼女は常に明るく、おおらかだ。

 一行は暗闇の中での陰鬱な探索も、アニヘイムの笑顔に救われる思いがしていた。

 少なくとも彼女はこの都市の関係者であり、今は一行の味方である。

 それだけでも、前向きに歩を進められるというものだった。




 十層目に到達したのは、おそらく昼を過ぎた頃だった。

 ここまでは、異変らしい異変が何もない。

 順調に十層目まで到達したこともあり、アニヘイムから休憩を提案される。

「何かあるとしたら、この先だから〜」

 笑顔でありながらも、その目が少しだけ鋭い光を放つ。

 何か……とは、何らかの危険を含んでいるのだろう。

「サイが言ってた、アンデッドとかがいるのかな?」

 カーリャの問いに、アニヘイムがうーんと唸る。

「ソレが見えたってことは、ソレはいるんだろうし……きっと、ソレだけじゃないと思うの。実際この先は、何が出てきてもおかしくないのよね〜」

「何が出てきてもって……どういう意味だ。俺には、闇の精霊しか見えないぞ?」

「それはきっと、闇が濃すぎて飲まれているだけよ。ここには、全てがあるもの」

 意味深な答えに、サイが眉をひそめる。

「そう、全て。だからこの先確認することは、何が足りないか、が中心になるの」

 しかしアニヘイムは、それ以上詳しく説明をしなかった。

 見たほうが早い、としか答えないのだ。


「ねぇねぇ、おねぇさん。さっきからルナールが、上の方を気にしてるんだけど。おねぇさんが言ってることと、関係あるのかな?」

 ルーが首に巻き付いたルナールの長い胴を、ポンポンと叩く。

 ルナールは狐のように尖った耳をツンと立てて、せわしなく頭を動かしていた。

 確かに上の階を気にしているようにも見える。

「この子、綺麗な金色の毛をしているのね。見たことない子だわ。何かを感じ取ってるのかもしれないけど〜それが野生の勘だとしたら、それは私にもあるから〜もしかしたら、私とは違う感覚があるのかもね〜」

 アニヘイムが顔を近づけて、じっと見つめる。

 ルナールも、目をそらさずに視線を返す。

 しばらくの間、二人はまるで会話でもしているかのように無言で見つめ合っていた。

 やがてアニヘイムの方から顔を遠のけ、僅かに首を傾げる。

「不思議な子ね〜」

「おねぇさん。ルナールのこと、何か理解るの?」

「残念だけど、私はそんなに博識じゃないの。ごめんなさいね。でも最上階にいる翁に聞けば、何か理解るんじゃないかしら」

 そっかと、ルーが残念そうに頷く。


 ルナールが狼に襲われていたということ。

 現れたタイミング。

 そして都市への転移。


 ルーは、それらが見えない糸で繋がっているように感じていた。

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