表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
満月のハナシ  作者: Ni:
白い月 さまよえる白亜の都市

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/110

災いの痕跡(4)

「生き物の気配がないな……それから汚れも。外の建物と同じで、やっぱり作られたばかりのように見える」

「このまま何も無いなんて嫌よ、あたしは」

 レシーリアが、塔に向かっている時から思っていたことを、遂に口に出して言ってしまう。

これなら定番の古代遺跡『レジアン』にでも行ったほうが良かったのではと、否定的な考えが脳裏によぎる。


「今は脱出方法を探すことが先決だが……なにか、戦利品はほしいよな。ユーンは金になる物がいいんだよな?」

「はい。たくさん欲しいです」

 思わずリアが吹き出す。

 レシーリアが言えば俗物臭がプンプンするのだが、ユーンが言ってもそうは感じないのだから面白いものだ。

 使い先が、孤児院の建設だと知っていることも大きいだろう。


「レシーリアは?」

「そりゃあ……売ったら金になる物か、冒険で役立つマジックアイテムに決まってんじゃない。まぁ〜あたしの場合は、ユーンみたいな目標とかないからね~」

「わ、わたしも最近やっと目標ができたばかりですから……」

 手をパタパタと振るユーンに、レシーリアが肩をすくめて笑う。


「ん~それでも立派よ。ただ楽しく生きるだけのあたしなんて、ねぇ」

「冒険者なんてそんなもんだろ。富や名声、武者修行、奇跡の探究……そういった目標を持つ者もいれば、ただなんとなくやってる奴もいるしな」

「でも、あんたは金にも困ってないでしょ? なんか欲しい物でもあんの?」

 うーんと天井を見上げるようにし、やがて何かを思いついたように、あぁ…と答えた。

「なんか、特別な感じの指輪がほしいな。だめなら、ネックレスでもいいけど……他はいらないから、皆にまわすよ」


 “指輪”という言葉に、ユーンがピーンっと察する。

 そして、本当にわかりやすい人なんだなぁ……と思わず顔がほころんでしまう。


「そうですか、やっと覚悟を決めたんですね」

「なにが……?……あっ……あぁ〜、そういうこと。あんたら、やっと進展すんのね」

「……えぇっと、お二方……俺は何も言ってないはずなんだが?」

「絶望的に鈍感ね、あんた。んなもん、理解るに決まってんでしょうが」

「そうですよ。ハーミアが、あんなにもわかりやすくサインを出しくれてるのに、リアさんは鈍感すぎです。気づいていないのはリアさんだけで……あっ……カーリャもだけど……」

「……あの……お二方……なんで、そんなこと理解るんだ?」

 全く理解できないでいるリアに、レシーリアが大きなため息を返す。

 これほど凄腕の冒険者でも、人の気持ちには疎いものなのだろうか。

 いや……カーリャの鈍さも考えると、剣士にはそういった類の人種が多いのかもしれない。


「あたしとしては、もう少し楽しんでいたかったんだけどね〜。で、結婚するの?」

 脳裏に、前のパーティで解散した時の出来事がよぎる。

 またしても仲間の結婚引退により、解散の危機になるのでは……と。


「いや、まだそこまで……と言うか、そもそも俺がまだ、はっきりと気持ちを示していないし」

「……マジで呆れたわ、あんた」

 ユーンも、うんうんと大きく頷いて同意する。


「うるさいな……こういうの苦手なんだよ」

「それにしたって、ハーミアがあんなに頑張ってるんですから、リアさんはもう少ししっかりしなくちゃ駄目です。早めに返事をするべきです」

 ユーンがすまし顔で指を立ててクルクルと回す。

 その仕草があまりに可愛らしく、レシーリアがたまらず吹き出した。


「あはは、恋路に関してはユーンのほうが先輩ね。んで……もし結婚したらどうするつもり?」

「あ……あぁ、引退かどうかってことだよな。少なくともハーミアは、宿願を達成するまでは冒険をするらしい。俺も今のところは、引退は考えてないかな」

「そう。それを聞いて安心したわ……って……あれ?」

 突然レシーリアが、眉をひそめて足を止める。

「どうしたんですか?」

 ユーンの声にも無言で返し、周りの気配を探る。

「リア……」

 片腕の剣士も異変に気付いている様子だった。

「……あぁ……血の臭いだな」

 青い竜以外に生き物の気配すらない都市で、いきなり血の臭いかよ……と、突然の不穏な空気に警戒心が否が応でも高まっていく。

「この先だな……」

 自然とリアが前に出る。

 姿勢を落とし薄暗い廊下をゆっくりと進む。

 血の臭いのもとは、すぐに姿を現した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ