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満月のハナシ  作者: Ni:
青い月 集結

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48/110

集結(1)

 青い月の周期も終わりに差し掛かろうとする頃、港町レーナには、ようやくもどったレシーリアとカーリャの姿があった。

 二人は結果的に結婚を阻止できたため、アイナから馬を二頭と幾らかの路銀を頂戴していた。

 そのおかげで、予定より早く帰ってこれたのだ。

 依頼としては失敗に終わったが結果としては上々だと、レシーリアも(すこぶ)る上機嫌だった。


 三か月半ぶりの帰還は感慨深いものだった。

 カーリャの目からは、街の風景が違って見えるほどだ。

 もちろん、町並みが変わったわけではない。

 剣士として得難い経験をしたことが、彼女の心も成長させたのだろう。

 二人は町の入り口近くにある貸厩舎に馬を預け、『碧の月亭』に向かうことにする。

「みんな元気かな。ユーン達は大丈夫だったかな」

 自然と足早になっているカーリャに、レシーリアも歩幅を合わせる。

 久しぶりの仲間たちとの再会に、高揚しているのだろう。

「あんた、そればっかりよ」

 感情を隠すことなく笑顔をこぼす、愛らしいリーダー様に苦笑する。

「リアさんも、いるのかな」

 あぁ……と、レシーリアは何となくハーミアの顔を思い浮かべた。


 あの二人は、何か訳ありな関係のようだった。

 船上で、リアは明らかにハーミアを意識していた。

 ザナと対面した後のハーミアもまた、リアを意識していた。

 そして何より、二人は同じシェイプチェンジャーだ。きっと何か、つながりがあるのだろう。

 この愛らしいリーダー様は、師と仰ぐリアに対して『憧れ以上』の感情を持ってそうだが……まぁ、これはほっておこう。

 自分は色恋沙汰に首を突っ込むほど、野暮ではない。

 それよりも、このパーティにリアが加われば、いよいよ本格的に遺跡の探索もできるだろう。

 本格的な冒険が、ようやく始まるのだ。


「こういう時に、サークがいれば楽よねぇ。リファニーを介せば、簡単に情報のやり取りができるし」

 う〜んと考えるような素振りをして、カーリャがつぶやく。

「レシーリア、それってかなり凄いこと?」

「凄いことよ。だから誰にも言っちゃダメよ?」

 情報のやり取り自体は高価な古代文明の魔道具でもできるし、何なら転移の月魔法を使えばいいのだが、会話の必要もなく、意識の中だけで情報の伝達ができるサークたちは異質な存在だ。

 そもそも常に五感を共有できるサークたちの方が、より明確で正確な情報を伝えられる。

 何より魔力を一切消費しないのだから、月魔法の理から外れた力と言えよう。

 このことを公にしてはいけないと直感したレシーリアは、すぐにリファニーのもとへ訪ねた。

 そして、こう告げたのだ。

 王都の月魔術師ギルドに行くのはよせ、と。

 二人の状況を相談するのは、相当信頼のおける人物にするべきだ。

 この二人の力は、大きな戦争で勝敗が覆るほどの影響力がある。

 そうなると、王国からも目をつけられることになるだろう。下手をすれば機密事項として、永久に幽閉されることも考えられる。

 いずれにしても、今後まともな人生がおくれないのは明白だ。

 二人には、そんな人生は送ってほしくなかった。袖すり合うも他生の縁というやつだ。

 関わってしまった以上、二人には不幸になってほしくないと考えるのは自然なことだった。


「サイ!」

 カーリャの声に、考えに耽っていたレシーリアが我に返って頭を上げる。

 視線の先には『碧の月亭』から、ちょうど出てきたサイの姿があった。

 いつの間にか、ついてしまったらしい。

「よう、帰ってきたのか」

「や、チェリー、元気にしてた?」

「一言目がそれかよ……」

 相変わらずのレシーリアに、げんなりした顔を見せる。

「なに、チェリーって?」

 顔を赤くするサイに対し、悪意のない一撃がとどめを刺す。

 さすがは、我らが天然ボケのリーダー様だ。

「あんたは知らないでいいの。で、みんなはいるのかしら?」

 不満げに口を尖らせるカーリャを無視し、サイに状況も説明を求める。

「あぁ。昼間はユーンがオヤジさんの手伝いでここにいるが、他はいないな。何なら、夕方集まるように声かけてくるが?」

「助かるわ。で……リアもいるのよね?」

 サイが、あからさまに眉を寄せる。

「何で知ってるんだ? 相変わらずの情報網だな。あいつは今ブラン卿邸にもどっているから、ハーミアも一緒に声をかけてこよう。二人は夕方まで休んでてくれ」

 朴念仁のくせに、なかなかどうして気の利いたことを言う。

 ここは、サイの厚意に甘えるべきだろう。

 レシーリアは素直に感謝の言葉を述べると、カーリャを連れて『碧の月亭』に入っていった。

 オヤジに依頼の結果報告を手早く済ませ、そのまま二階の部屋を借りる。

 長旅の疲れもあったのだろう。

 部屋に入ってから眠りにつくまでは、あっという間だった。

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