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満月のハナシ  作者: Ni:
青い月 憂いの魔術師

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共命鳥(1)

ぐみょうちょう……と読みます。

気になる方は、調べてみてください。

 一人ひとりに配られたパズルは、少しずつだがその全容を見せ始めていた。

 同じパズルが配られていても、冒険者達はそれぞれ違った完成図を頭に描いていた。


 ──そもそも、この事件は誰が仕組み、誰が得するというのか。


 今、この場にいるのは六人の冒険者とルイという曲芸師、それからカーズという月魔法使いだ。

 薄暗いテントの中、各々はパズルの完成図を思い浮かべていた。

 それは時間にして、ほんの数分のことだった。




 私は立ち止まるわけにはいかない。

 今はただ強くなって、そしてあの人に近づかなければならない。せめてあの人の背中くらいは守れるようになるんだ。

 だから、誰にも負けられない。

 だから、私はルイという男も倒した。

 だから、私はもっと強くならなくてはならない。

 だから……

 カーリャは空の檻が並ぶテントの中で、ルイの顔をぼんやりと見ていた。


《カーリャの場合》


 サーカス団の団長グラウディオスは、女の人に会いにレーナまで来たという。

「間違いないんでしょうね」

「……この期に及んで嘘は言わねぇさ。団長は何処の誰かは知らねぇが、若い女に会いに来たのさ」

 いったいどうしてなんだろう。

 みんなの話を聞いたところ、それはどうやらリファニーに間違いなさそうだった。

「……ルー、この魔法陣で間違いなさそうなの?」

 まだあどけなさが残る彼は、かわいらしく肩をすくめて、わからないよとアピールする。

「……遺失魔法だもん。詳細まではわからないよ~。その魔法の存在しか記されてなかったからね」

「……そう。とにかく団長に会って、リファニーのことを聞き出して、そんでサークさんを元に戻してもらいましょう」

「サークは大丈夫だよ~。次の満月になれば術は解けるし、それが嫌なら解除魔法でとけるしね。問題は団長の方かな。……いや、リファニー導師が何を考えてるのかかな……」

 そう、問題はリファニーだ。

 彼女がサークに想いを伝えられれば、事は丸く収まるのではないのだろうか。

 どうしてこんなにも、ややこしいことになってしまったのだろう。

 もしかしたら団長のグラウディオスが、ちょっとしたことからリファニーの恋心を知って、助けてあげようと思ったのかもしれない。

 どちらにしても、グラウディオスを連れてくるしかないようだった。

「……わたし、グラウディオスを連れてくるね」

「そうだな、その方が早い」

 考えにふけっていたサイが目を閉じたまま同意する。ルーも黙って頷いていた。

「……一人じゃ危険です……」

 心配そうなハーミアに、大丈夫と笑顔を返す。

 しかし彼女は、さらに首を横に振った。

「カーリャ……先ほど私が言った事を忘れたのですか?」

 あっ……と、少し前の出来事を思い出す。それはユーンと二人で潜入してしまった事に対し、めずらしくハーミアが怒りそして涙混じりの声で心配を告げたのだ。

 あの冷静なハーミアが、仲間のことで取り乱したのはとても嬉しいことだけど、もうさせてはいけないことでもあった。

「……そう……だったね。うん、わかった。じゃあ一緒に行こ!」

 その言葉には、ハーミアも嬉しそうに頷いた。




 カーリャが何度かルイの攻撃に押されるごとに、ユーンは知らず知らずの内にロイの短剣を握りしめていた。

 彼女なら……カーリャなら、ロイの行動を理解できるのかもしれない。

 ……ロイ、彼女を守って……

 なぜロイが自分を残して戦場に赴いたのかはわからないし、父がどうしてあんなことを言ってきたのかわからない……けど……大変だけど、冒険者になったことを後悔はしていなかった。

 それにイセリアの笑顔を見たときに感じたあの気持ちは、これまでの苦労を幸せな気持ちに転換させてくれた。


《ユーンの場合》


「えっ……と……」

 氾濫する情報を落ち着かせるように、一つひとつの情報を積み上げていく。

 私には事件の真相なんてわからないけど、でもなにかヒントくらいは思いつくかもしれない。

 まず、リファニーさんと団長が知り合いなのは間違いないようだ。

「あの……ルイさん……。あなた方は人間を動物に変える常習犯なんですか?」

「お、おいおい、人聞きの悪いこと言うなよ。部外者を動物になんか変えないさ、そりゃあ犯罪じゃねぇか」

「……本当なんですか?」

 ハーミアの言葉にルイがにやつく。

「おお、こっちもべっぴんさんだな。もっと優しくしてくれれば色々教えてやるぜ?」

「……ずいぶん元気ね。治療薬の代わりに痺れ薬でも盛りましょうか?」

 たぶん、半分は本気なんだろう。

 ルイの笑顔がひきつっていた。

「他の団員は次の満月まで自由行動なのかしら?」

「あ、いや、まぁ、そんなところだ」

 レシーリアの問いにルイが動揺する。どうしてレシーリアが、次の満月までと言い当てられたのかはわからないけど、レシーリアはいつも自分たちよりも先を見据えている。

 どこかにくめないルイを見ながら、いくつかの仮定をしてみる。有力な仮定も生まれるのだが、どうにもそれはリファニーさんに申し訳ない予想になってしまう。

 リファニーさんは、サークさんに好意をよせるあまりに、団長を探し出して猫にしてもらうよう頼んだ。

 でもなぜ自分でやらなかったのだろうか。

 もしかしたら遺失魔法だから、リファニーさんはその魔法を使えなかったのかもしれない。

 でも、それが真実とも限らない。

「……あの……ルー。私なりに考えてみたんだけど……」

 私は『参考になるかどうか、わからないけど』と付け加え、同じように考え込んでいたルーに話しかけた。




 僕は世間知らずで、魔術師としても未熟だ。

 前にシラセ=ヨグと対峙した時も、ハーミアを助けられたとは言いづらいものだった。

 チェンジリングであることを打ち明けてくれたレシーリアも、いつその迫害の矛先が向けられるかわからない。

 今の僕にできることは限られていて、問題はその限られた力を、いかにうまく使い切るかだと思う。


《ルーの場合》


 この事件の真相は、今の僕には予想しがたい。

 だからまず、事実を積み上げてみよう。

 月魔法の研究は、わかりきった事を一つひとつ積み重ねることが大事で、その途方もない作業の先に唯一無二の答えがあるのだ。

 事実の一つとして、遺失魔法『月華』。

 この魔法は、満月の夜に儀式を行うことによって成功し、次の満月の夜になると効果をなくす。

 これは、サークが満月から満月の間、人間でなければいいということなのだろうか。

 たとえばサークの命が狙われていて、それを回避するために猫に変えた……とか?

 リファニー導師だけがそのことを知っていて、動物にするように依頼した……うん、無くはない。

 でも、誰が魔法をかけたのだろう。もしかして、この月魔術師カーズが使ったのかな。

 しかし、この疑問はすぐに解消された。

「……月華? あれは団長の専売特許だ。カーズじゃかけられねぇよ」

 となると、やはりリファニー導師がグラウディオスに依頼をしたということになるのかな。

「……ふう……」

 ハーミアがため息を一つする。

 多くの疑問に悩まされているようだった。

「……? 何か思い浮かんだ~?」

「ん? ううん、わからないことだらけで……」

 でもきっと利口な彼女は、なにかしら考えをまとめているんだろうなぁと、その横顔をぼんやりと見つめる。

 やがて考えがまとまったのか、ハーミアの方から話しかけてきた。

「……ねぇ、ルー……ザナと面会は……できないのかしら?」

「……ザナと? 難しいかも~。あっちが承諾してくれれば、すぐにでも会えるかもしれないけど……この件に関係あるの?」

「わからないわ。でも…もしかしたら……」

 突然の申し出に、思わず答えを返すタイミングを遅らせてしまう。

「……考えすぎだよ~。前回の件でザナのことが頭に焼き付いているだけじゃないかな。……それとも、あの、エヴェラードって人に会いたいの?」

「…………それもある……けど……」

「……あの人……多分……助けられないよ?」

 それっきり押し黙るハーミアを見つめ、余計なことを言ってしまったかなぁと後悔する。

 しかしできることなら、ザナと関わるのは避けたかった。

 ハーミアの気持ちもわかるけど……でも、それは危険な行為に違いないからだ。

「……ルー、この魔法陣で間違いなさそうなの?」

 カーリャが魔法陣を興味深そうに眺めながら、確認を求めてくる。

「……遺失魔法だもん。詳細まではわからないよ~。その魔法の存在しか記されてなかったからね」

「……そう。とにかく団長に会って、リファニーのことを聞き出して、そんでサークさんを元に戻してもらいましょう」

「サークは大丈夫だよ~。次の満月になれば術は解けるし、それが嫌なら解除魔法でとけるしね。問題は団長の方かな。……いや、リファニー導師が何を考えてるのかかな……」

 そう、リファニー導師が関係しているのは間違いない。しかし依頼主を疑うことは、あまり気分のいいものじゃないなぁ。

「……わたし、グラウディオスを連れてくるね」

「そうだな、その方が早い」

 二人の言葉に対して頷く。

 カーリャの言う通り団長を呼ばないことには、机上の空論止まりで、どんな推理も事実にはつながらない。

「……一人じゃ危険です……」

 心配そうに、しかしハーミアのその表情はすこし怒っているようにも見えた。

 今の事件に比べれば、ハーミアが抱えている問題は大きくて辛いものだろう。

 それでもハーミアは献身的に、リファニー導師や仲間達のことを思っていた。

「……あの……ルー。私なりに考えてみたんだけど……」

 控えめな言い方でユーンが声をかけてくる。

 僕は頷きながら、しかしそんなに頼られても期待に添えるかどうかと考えながら、ユーンの推理に耳を傾けた。

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