少年(6)
ブラン卿の屋敷でフューイから話を聞くのは、カーリャとハーミアの二人だ。
カーリャは、パーティのリーダーとして選ばれた。
もちろんコミュニケーション能力の高さも、考慮してのことだろう。
ハーミアについては、これからブラン卿の屋敷で匿うことになるのだから、この場にいるのは当然だ。
盗賊ギルドと月魔術師ギルドには、ルーとレシーリアの二人が向かうことになっている。
調べる内容は主に、ランク4の魔法のグレートソード『彷魔が刻に光を照らす剣』についてだ。
冒険者ギルドにはサイが一人で向かい、いくつかの情報を調べに行く。
こうして一行はリアとユーンが居なくなってから、初めてパーティとしての活動を再開したのである。
「まずは、自己紹介から始めよー!」
カーリャが笑顔のまま、パンッと手を叩く。
「私はカーリャ、剣士ね。あなたの依頼を受け持つパーティのリーダーだよ」
「リーダー……あの、ハーフエルフの女の人じゃないのですか?」
「あぁ〜レシーリアは、そういうの嫌がるからさ。私がやることになってるの」
「そうなんですか」
視線を落とす少年。
落胆……というよりも、警戒だろうか。
この少年からは色々と聞き出さなければならないのだが、自分なんかに話してくれるのだろうか。
こういった情報の聞き出しは、レシーリアとかサイの方が得意だと思うのにと、カーリャが指先で頬を掻く。
「私は神官のハーミアです。ブラン卿のもとで、お世話になっています」
「この屋敷の……ですか?」
「そうです。ですが、護衛としての能力は低いです。先ほど申し上げました通り、ただの神官ですから。ですが、カーリャはとても強いので安心してください。なにせ『一角馬』の冒険者ですから」
「えぇっ?」
少年が少し驚いて、カーリャの方へ顔を向けた。
ハーミアがその様子を見て、この少年が冒険者の等級について知識があることを読み取る。
レシーリアからは、この少年がギャザリンの村から来たと聞いていた。
しかし普通の村には、冒険者ギルドなんてものはない。
であるなば、この少年自体が冒険者に興味があるのか、もしくは近しい人に冒険者がいるのかだ。
少年の黒髪は艶があり、綺麗に整えられている。
身なりも悪くなく、貧しさを感じさせない。
村長の子か、または家族の中に名をあげた冒険者がいるのか。
今も大事そうに抱えている魔法の大剣……やはりこれも、そのことに関係しているのだろう。
この人間の……まだ十二歳の男の子に、どのような重荷が背負わされているのか、ハーミアにはまだ、そこまでの想像はできなかった。
「フューイ、だったよね。とりあえず今から私が、つきっきりで護衛をすることになるんだけど、いいかな?」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「でね。フューイ君には私たちのことを、少しでも知ってもらった方がいいのかな、と思うんだけど」
「はい」
「じゃあ、私たちの……そうだね、最初の冒険から話してもいい?」
「はい!」
明らかに興味を示すヒューイを見て、やはり冒険者に興味があるんだとハーミアが頷く。
一方のカーリャは、そこまで読み取れていないようだ。
それでも無意識のうちに、少年の興味を惹きつけてしまうのだから、さすがだと感心してしまう。
きっとレシーリアは、そこまで考えていたのだろう。
だとすれば、私の役割は何だと自問する。
今の私にできそうなことは、少年の感情を見逃さず情報を拾うことだけだ。
それをレシーリアへ伝えることが、きっと私の役目なのだとハーミアは自分に言い聞かせた。




